« アル中 /工事中 | トップページ | 幼児の給食に細心の注意を (7/9更新) »

2021年7月 7日 (水)

素麺に似て非なるもの

 まいどなニュース《「そうめんはもう茹でないでください!!」女将の戦後体験から生まれた調理法に「目から鱗です」》[掲載日 2021年7月6日] に,伝統的な素麺の茹で方に異を唱える人が紹介されている.
 下の引用のうち,上の《 》が,その方法,下の《 》が考案者の主張である. 
 
◎鍋で沸騰させたたっぷりのお湯にパラパラッとそうめんを入れて菜箸でほぐし、再沸騰したら蓋をして火を止める。
◎5分後に(10分後でも変わらないのだそう)そうめんをザルにあけ、流水と氷水でしっかりと冷やしながらもみ洗いをして、そうめんのぬめりを取る。
──そうめん動画は200万回以上も再生され大反響ですね。
 再生回数が伸びているのは視聴者の皆さんが「本物」を分かってくれているからだと思います。良いものを良いと思って周りに勧めてくれているからだと。「本物」を理解して視聴されている皆さんがすごいんです。いつもありがとうございます。》(文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 早速試してみた.
 使った素麺は,コンビニでもスーパーでも,どこでも手に入る素麺界のスタンダード「揖保乃糸」である.
 生憎,食材のストッカーに揖保乃糸がないというおかたは,小豆島でも長崎五島でも,各地のうまい素麺でお試しあれ.
 奈良の三輪素麺はお勧めしない.忌避していただきたい.ここの生産者には,五島から仕入れた素麺に「三輪素麺」のラベルを貼って偽装し,五島の製品に利益を上乗せして贈答用高級品として販売してきた黒歴史がある.三輪素麺こそ,日本の食品偽装史における暗黒金字塔だからである.
 
 さて,実食の感想だ.
 考案者は《戦後の苦しい時代を乗り越えてきた私》と仰っておられるので,詐称でなければ戦前のお生まれということになる.
 しかし動画を拝見した限りでは,私 (七十一歳の団塊世代で,物心がついたころには既に日本の経済成長が始まっていた;戦後の苦しい時代を乗り越えてきたのは,私たち団塊世代の親たちであり,そのほとんどは既に世を去った) と同世代の,七十代のように見受けられる.
 とても私よりも一世代以上歳上の,八十代や九十代の女性とは思われぬ若さである.
 そこにまず私は驚いた.そして,彼女がその若さを保っているのには,さぞかし日々の努力を惜しまぬ生き方があるのだろうと感服した.
 で,彼女が戦後の苦しい時代に考案した素麺の「余熱調理法」で作った揖保乃糸はどうなったか.
 この「余熱調理法」は,料理嫌いで頭が悪くてズボラなのに料理の失敗はしたくない性格の悪い皆さんに,ぜひともお勧めしたいと思う.
 なんとか素麺といえばいえるものができることは間違いないからである.
 素麺とうどんの食感の違いなんてどうでもよい,《「本物」を理解して視聴されている皆さん》ではなく,「偽物」で充分だという皆さんは「余熱調理法」で素麺を作っていただきたい.私はいやだが.

|

« アル中 /工事中 | トップページ | 幼児の給食に細心の注意を (7/9更新) »

外食放浪記」カテゴリの記事