また逢う日まで
政府広報がテレビ放送している《新型コロナウイルス感染症 感染再拡大防止にご協力ください》という動画がある.
まずこの動画は,室内で若い人たちが飲食と会話を楽しんでいるところから始まる.
一般家屋の室内だから,当然ながらアクリル板のパーティションはない.
普通に考えれば,マスクをしていない状態で食事をする人と,マスクをして会話をする人とは,ソーシャルディスタンスをとる必要があるのだが,そういう感染対策の配慮はしない頭の悪い人たち,という設定なのだろう.
上の画像のキャプションは《飲食は少人数、会話はマスク》だが,飲食と会話が同じテーブルを囲んで行われるのはちょっとまずいだろう.
で,おしゃべりに疲れたのか,換気が必要だと思ったのか,女性の一人が窓のところに行き,ガラス戸を開ける.
窓から外の空気が室内に入ると,彼女の後ろからカレと思しき青年が近寄り,彼女に肩掛けを掛けてあげる.
カレの優しさに,微笑む彼女であった.よかったよかった.
とはならないのである.
自分が不織布マスクをしていても,マスク不着用の人の顔に,こんなに接近してはいけないのだ.
五月の大型連休中に観光地に密集していた若い人にテレビ局がインタビューしたところ,「自分はマスクしてるから感染しない」という誤解が広まっているらしい.小池都知事も,マスクの効果について若い人たちのあいだに,過大な期待をする誤解が生じていると警告していた.
マスク着用の上で,さらに密を避けるという意識が必要だ.そういう意味で政府広報がこんな動画をテレビで放送してはいけないと思う.
そんなことを言ったら,恋人どうしのキスはどうすんだよ,という詰問が 馬鹿者 若者からあるかも知れない.
そう.恋人どうしでもキスは禁止すべきなのである.
欧米であれだけ感染が拡大してのは,キスとハグの習慣が大きな原因であると言われている.誰が言っているかというと,私だが,実際にイタリアでは (私はイタリア語がわからないので,報道と法令の原文を引用することができないのであるが),昨年の感染爆発の際にハグとキスを禁止する法令が施行された.
フランスでも同様の規制が行われたようだ.
彼女の唇にキスできないくらいならコロナになったほうがマシだとお考えの貴兄,自暴自棄になってはいけない.
次善の策があるのだ.
下の画像は,日本映画史上に残る不滅のキスシーンである.
監督は今井正.主演は戦後邦画のトップスターだった岡田英次と久我美子の『また逢う日まで』である.
(パブリック・ドメイン;From Wikimedia Commons; File:Mata au hi made 2.jpg)
この小さな画像ではこの二人が何をしているのかわかりにくいが,岡田英次は雪の降りしきる窓の外にいて,室内の久我美子と窓ガラス越しに接吻をするのだ.これは日本映画史上,最初の接吻シーンである.
窓のガラス越し.これなら感染対策は完全だ.
燃える心があれば冷たいガラスなど,いかほどの障害であろうか.
日本が破局に向かって進んでいく戦争のさなか,このような愛もあったのだと若い人たちに知ってほしいものだ.
とはいうものの,こんなんじゃいやだという向きもあろう.
そういう我儘な貴君には,自治体が指定する薄手半透明ごみ袋を頭からかぶってキスすることをお勧めしたい.かなり変態じみているが,みんなコロナが悪いのである.
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