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2021年5月17日 (月)

首相の耳はロバの耳

 今朝の九時から,横浜市の七十歳以上の高齢者へのワクチン接種予約が始まる.
 報道によれば,河野大臣は菅首相に「ワクチンの確保はできているから,あとは自治体と自衛隊がちゃんと実行するかどうかにかかっている」と甘言を述べて,自治体と自衛隊にワクチン接種の実行を丸投げした.
 すっかり河野大臣に騙された菅首相は,自信満々に,高齢者のワクチン接種は七月中に完了すると記者会見で言い切った.
 ところが実は,岸信夫防衛大臣はこの河野大臣の丸投げに,無理があると難色を示していたのである.
 しかし岸大臣の見解は,菅首相の聞き入れるところではなかった.
 権力者は,自分の耳に快い話だけを聞くものだからである.
「七月中に高齢者のワクチン接種完了」は,武田良太総務大臣に全く相談がなかった.
 寝耳に水のことに驚いた総務省は,全国の自治体に「七月完了」が可能かどうか問い合わせたところ,否定的な回答ばかりであった.
 そんなことをロバ耳の菅首相が聞き入れるわけはないと承知している武田総務相は,体裁を取り繕うために「七月中に接種完了せよ」と全国自治体に檄を飛ばした.
 七月中に高齢者へのワクチン接種を完了しろと言われても,肝心のワクチンが配られる日時すら河野大臣から連絡がない各自治体首長は「そんなことを言われても,できないものはできません」と反論した.
 すると総務省の官僚は,「ガッツと気迫でがんばれ」と言ったという.(AERAdot. 《「7月末までに高齢者ワクチン接種完了は無理」全国の地方自治体の6割回答 菅首相の指示で混乱》[掲載日 2021年5月3日 7:05])
 我が国の感染症対策は,科学ではなく,ガッツと気迫で行われるのである.
 高齢者のワクチン接種が七月中には終わらないことを報道で知ったロバ耳菅首相は「そんなにかかるのか」と愕然としたという.いまさら遅いわ.(朝日新聞デジタル《「え、そんなに遅れる所あるの!」首相、接種の遅れに》[掲載日 2021年5月13日 18:06] 他)
 
 とにもかくにも,このプラチナ・ワクチンが何回接種分あるのかどうかすら横浜市民は知らされないまま,この朝九時から必死に電話とネット予約サイトに殺到することになる.
 
[追記1,5/17]
 予約開始時間になったので予約受付サイトに入り,受付番号やらアドレスを入力した.するとその返信メールにURLが記載されていて,ここからログインせよという.
 ログインして接種会場を選択し,続いて指示通り接種日時を選択しようと試みたが,カレンダーが無反応だった.「データの取得に失敗しました」とエラーメッセージが出て,そのあとはカレンダーの再読み込みを行ったが,五,六月はもちろん七月中の予約可能日もすべて予約完了済の「×」印がついていた.
 そして「Web予約枠は埋まっています」と予約サイトに表示がされた.もう横浜市には,集団接種に供給される老人優先用のワクチンはないのだ.
 横浜市の公式サイトには,七月十日で高齢者のワクチン予約は終了すると書かれている.
 つまり七月十日までの予約が取れなかった私のような高齢者の横浜市民は,その後の八月とか九月の予約すら取れない (建前として高齢者のワクチン接種は七月中に終わることになっているので,受付システムが閉鎖されてしまうから,それ以後は接種の申し込みすらできない) から,要するにワクチン接種を受けることができないのである.(東京では七月以降でも高齢者は接種ができるらしい.元東京都知事の舛添氏は八月末に予約が取れたと書いている.都民がうらやましい)
 頼みの綱は医療機関での個別接種だが,これをしてくれる医療機関が横浜市は非常に少ない.私の住んでいる区では現時点ではわずか二機関しかなく,しかもその予約枠は埋まっている.
 菅首相が断言した「高齢者は七月末中に接種を完了する」という話の意味は,予約ができた一部の高齢者市民だけはワクチン接種を完了するということなのであった.
 たとえ政府から横浜市に,必要な数のワクチンが八月になってから配布されたとしても,接種受付システムが閉鎖されてしまっているから,高齢市民は接種を受けることができないことになる.八月以降に配布されたワクチンは,若い人たちに接種されるのだ.
 横浜市の医師会関係者は,高齢者に接種できるよう努力すると語っている.「努力」とは,どういう理解をしたらいいのであろう.老人は見捨てられる可能性があるというのか.
 
[追記2,5/18]
 昨日の夕方のテレビ報道番組を観た.東京の大規模接種センターからの中継で,局アナが「ここが接種会場です」などと述べている時に,一人の老人男性が会場のビルに近寄ってきた.
 局アナがマイクを向けると,ワクチンの予約を取りにきたと言う.
 ここで直接の予約は取れないんですよ,と説明すると,老人は「おれはインターネット,持ってないんだよ.だからここに来た」と語った.
 こういう人はかなりいるんじゃないだろうか.
 各地の自治体では,スマホを持っていない高齢者が集団接種の予約手続きをできるように,窓口を作って職員を配置し,援助している.
 しかし政府は,大規模接種センターにおける接種の予約手続きを「自助」に限定し,首相が既に言明した通り「共助・公助はしない」と決めている.
 こうして国は,社会の片隅でつつましく暮らしている老人たちを捨てて行こうとしている.棄民政策という古い言葉を思い出した.
 
[追記3,5/18]
 東京の大規模接種センターの話題でテレビの報道は持ち切りだが,一日に一万人というキャパは,都の人口と対比すると焼け石に水のように見える.

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