「衷心」なんぞ読み間違ってもよろしい
この四月からNHK《おはよう日本》で土曜日曜祝日担当のキャスターになった川崎理加アンナウンサーが,今朝の,英国フィリップ殿下逝去のニュース原稿を読むときに「衷心」を「そうしん」と読んでしまった.きっと「喪」と見間違ったに違いない.
川崎アナはあとでお叱りを受けるだろうが,これを機会に覚えればいいのだ.
大体「衷心」なんて言葉は半分死語である.これは心のこもっていない追悼文の常套語であり,「衷心から哀悼の意を表します」なんてことを言うやつは全然哀悼の気なんかないのである.だから,読み方だけ知っていればいい.若い人は,自分は「衷心」という言葉を使わないぞと思って欲しいのである.
つまり,私たちが追悼文を書くことになった場合,如何にして「衷心」を使わずに心からの哀悼を示すことができるか.それが誠意というものなのである.
私の昔の経験だが,私の勤めていた会社が不祥事を起こしたとき,新聞に謝罪広告を出すことになった.
広告宣伝部というのがあって,その部署が謝罪広告文案を作って社長に見せたら,社長が「これでは心から反省しているように読めない」として,文案に「衷心から……」と書き入れた.
普段からこの社長が無教養なのを知っている私たちは困った.今時「衷心から」なんて形式的空疎極まりない定型文言を謝罪広告に書いたら,消費者の怒りを買うぞと思ったのである.
結局,コンプライアンス関係諸部署責任者の中で最年長だった私が,猫の首に鈴をつけることになり,ああだこうだと屁理屈をこねまくり,原稿から「衷心」を消すことができた.
昔のことを思い出した.
有働アナウンサーがデビューしたとき,あまりにも漢字が読めないので,視聴者は唖然としたものだ.
しかしそれから幾星霜,有働さんは女性の放送人を代表する一人となった.
川崎アナも,有働さんを目標にがんばれ.
[註] 外務省報道発表から引用
《エディンバラ公フィリップ殿下薨去に際しての菅総理大臣の弔意書簡
エディンバラ公フィリップ殿下薨去の報に接し、深い悲しみに包まれています。日本国政府及び日本国民を代表し、英国王室、英国政府及び英国民の皆様に対し、衷心より哀悼の意を表します。
殿下におかれては、1975年に女王エリザベス二世陛下と共に国賓として我が国を御訪問されるなど、7回訪日されました。我が国皇室と英国王室の歴史ある関係を更に強固なものとされたのみならず、日英両国民の相互理解促進に多大なる御貢献をされたことに、深甚なる敬意を表します。
エディンバラ公フィリップ殿下の生前の御功績を偲びつつ、謹んで御冥福をお祈り申し上げます。
日本国内閣総理大臣 菅義偉》
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