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2021年4月14日 (水)

ダメなコンニャク

 奈良県吉野郡に株式会社オーカワという食品会社がある.奈良県吉野郡にある資本金二千五百万円の会社であるが,日本の食品産業の大部分は中小企業なのであるから,特に小さいという規模でもない.
 先日,ダイエー藤沢店 (藤沢駅北口通り) を買いにでかけたとき,豆腐とか納豆のような大豆製品の隣に,コンニャク関係の商品が置かれていた.その隣が水産練り製品で,さらにその隣に生麺などの棚がある.
 で,大豆製品や練り製品に比べるとコンニャクというジャンルは商品数が少なくて,板コンニャクとしらたき (白滝) がメインだが,その中に申し訳程度の数の「つきこんにゃく」が並べられていた.
 この「つきこんにゃく」は上記の株式会社オーカワの製品だ.
 形状はちょうど,ところてん突きから突き出した心太と同じで,断面は正方形だ.一辺は五ミリくらい.
 これが包装されているビニール袋の表面には,次のように書かれている.

国産 こんにゃく粉100%使用
 便利な長さにカット済み
 簡単・便利
 つきこんにゃく
 
 本来は《国産こんにゃく粉 100%使用》と書くべきだが,《国産 こんにゃく粉100%使用》と書かれている.
 原材料表示には《こんにゃく粉 (国産)、海藻粉/水酸化カルシウム》と書いてあるから,《国産 こんにゃく粉100%使用》は間違いである.
 というツッコミはは少し意地悪かも知れない.食品業界のほとんどは中小企業で「食品の表示」に知識も関心もない会社が大部分だからである.
 それゆえ,そのことはいいとして,私にはこの商品の色が気に入らなかった.コンニャクとしては異様に黒いのである.
 
 買ってきたオーカワ製「つきこんにゃく」を,まず鍋で茹でてみた.これはコンニャク料理の下処理である.
 周知のように,「そのまま使えます」と書いてあるコンニャク類 (板コンニャク,しらたき,結びしらたき等) は,既に製造工程で熱湯処理してあるため,水酸化カルシウムと,その影響で発生するアミン類 (悪臭がするトリメチルアミン) は可及的に除去されている.刺身コンニャクも同様である.(トリメチルアミンの前駆物質は未だ不明である)
 逆に言うと「そのまま使えます」と書かれていないコンニャクは,そのまま料理には使えないのである.
 すなわち,長い時間かけて茹でる (アク抜きといった) か,あるいは酸 (酢やクエン酸など) でアミン臭を除く必要があるのだ.
 ちなみに昔はこれは常識だったが,この常識を知らぬ者がいる.例えば料理を一切したことのない独身男が,突然思い立って肉じゃがを作ろうとして,ジャガイモと肉だけにしておけばいいのに,前処理がされていないしらたきを入れて失敗したりするという.
「失敗」というのは,コンニャク製造時に使用した強いアルカリ性の水酸化カルシウムによって,肉や野菜などの食材が影響を受けて変質することを意味している.
 さてオーカワ製「つきこんにゃく」を茹でて下処理したら,茹で汁は汚い黒っぽい色になった.
 よく知られているように,工業的に製造される黒っぽい色のコンニャクは,ヒジキを粉末にしたもの (海藻粉) で着色してある.
 黒く着色することに何の意味があるのか,こういう無意味な加工はやめたらどうだと私は思うが,コンニャク業界は着色をやめようとしない.
 大昔のコンニャク (江戸時代) は生のコンニャク芋がコンニャクの原料であり,そのためコンニャク芋の皮が混入していたため,できたコンニャクは灰色をしていたのだが,現在のコンニャク製品は生のコンニャク芋ではなく夾雑物を除いたコンニャクの粉を原料にしているので,そのまま素直に作れば白いコンニャクが出来上がるにもかかわらず,多くのコンニャク製造者はわざわざ汚い色を着けているのである.
 一説には,明治時代には生コンニャク芋ではなくコンニャク粉がコンニャクの原料となり,大正時代にはきれいな白い板コンニャクが製造できるようになったのであるが,従来品との色の違いが消費者に不評だったのだそうだ.
 そこでコンニャク業界は,白いコンニャク粉にヒジキの粉末を加える方法を思いついた.
 そして,驚いたことに大正時代のヒジキ入りコンニャクがいまだに作られ続けているのだ.
 株式会社オーカワは,十年一日の如く無意味にコンニャクの着色をし続けているうちに,感覚が麻痺し,どんどん色を黒くしないと気が済まなくなったのではないか.しかしまあ,アク抜きの茹で汁が黒くなるまで海藻粉を入れてどうするんだと思う.明らかに入れすぎだ.オーカワという会社は,消費者が汚い茹で汁を見てどう思うかなんてことは眼中にないのだろう.開発マインドのない困った会社であるが,中小企業の経営者は,冒険をしたくないのだろう.
 
 以上が前フリ.本題は,この「つきこんにゃく」の長さである.
 パッケージには《便利な長さにカット済み》と書かれているが,長さが五ミリとか一センチなどの切れっ端がたくさん入っている.
 ここまで短いと,《便利な長さ》とは言えぬのではあるまいか.
 工場での製造工程がわからぬのであるが,どうしても破片が生じるのであれば,目の粗いストレーナを通すなりして,ゴミみたいな破片は取り除くべきだろう.
 たぶんこれを作っている従業員は,自分が作った製品がどんな低品質のものか目で見たこともないのだろう.
 もし品質に関心がある従業員なら,こんなものを消費者に買わせたら申し訳ないと思うはずである.
 少々怒りつつ,この文を書いた.
 

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