山内健司のコメント力
関東ではフジテレビ放送の《池上彰スペシャル【なぜ?コロナ禍で独り勝ち!世界の覇権をめざす中国の野望】》で,番組冒頭で「かまいたち」の山内健司が,コロナ禍の震源地である中国が経済的に一人勝ち状態を現出させていることについて《僕は,江夏さんが自分で満塁にしといて全部抑えたシーンをすごい思い出します》と述べた.
これにヒロミが《いい話だね》と応じ,池上彰も《確かにいい話ですね.思い出しました》と言った.
いわゆる「江夏の21球」のことである.(山際淳司『スローカーブを、もう一球』(角川文庫) 収載の「江夏の21球」;Wikipedia【江夏の21球】)
山内健司は1981年1月17日生まれの四十一歳で,「江夏の21球」は1979年11月4日の日本シリーズ第七戦のことであった.
山内は野球部だったから,当然この伝説的な試合のことは熟知しているに違いないが,生まれる前の話だからリアルタイムでは目撃していない.
ヒロミは1965年2月13日生まれだから,この江夏の投球のことはよく覚えているだろう.
キャスターの池上彰が《思い出しました》と言ったのは単に日本シリーズ第七戦のことだけではなかろう.
NHKには,山際淳司の作品を土台にした傑作スポーツドキュメンタリー番組《江夏の21球》 (1983年1月放送NHKスペシャル) があり,かつて報道部記者だった池上彰は,その放送を昨日のことのように思い出したはずである.
それにしても,山内の《思い出します》がいい.知識としてはあるものの目で見たわけではない「江夏の21球」を《すごい思い出します》と表現したことで,池上の《思い出しました》を引き出したのである.山内のコメント力は,ただのお笑い芸人のそれではないなあ,と思う.
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