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2021年2月 7日 (日)

感染対策をやったふり (2)

 下の画像は,昨日のNHK《おはよう日本》で流れた映像を録画し,その再生画面をカメラで撮影したものである.
 プレス興行団体「DRAGONGATE JAPAN」では,行われる試合ごとにレフェリーがリング上に消毒用アルコール (=日本薬局方消毒用エタノール) を散布しているが,その行為をNHKは「消毒を徹底」していると,音声と画像の両方で述べた.
 
20210207b
 
 レフェリーが手に持っているのは消毒剤のスプレー容器である.たぶん圧縮気体の圧力を用いて噴出させるタイプ (これは詰め替えができない) ではなく,レバーを引き絞ることにより空気圧で噴出させる容器である.
 それは良いのだが,問題はリングのマット材質である.プロレスのリングは,板の上にゴムシートを敷き,その上にフェルトシートを置き,その上をキャンバスで覆うのが普通であるという.各団体によりマットに用いるクッション材の仕様は少し異なるらしいが,いずれも表面はキャンバス地が使用されている.樹脂製のシートと異なってキャンバスは破れにくいことから,他の材質に代えがたいのだろう.
 さて食品工場では,製造機械や室内調度類を清潔に維持するために,アルコール系消毒剤を多用する.そのため製造工程に就く作業員はアルコールやその他の消毒剤に関する知識と実際の使い方について詳しく教育される.
 色々ある消毒剤の中で,日本薬局方で規格が定められている消毒用エタノール (エタノールはアルコールの一種) は,使い方が一番簡単で使いやすいものである.
 しかも,芽胞 (Wikipedia【芽胞】) 形成菌を覗くほとんどの細菌に対して有効であり,また一部のウイルスにも有効である.(新型コロナウイルスには有効である)
 しかし欠点がある.スプレーボトルに入れた消毒用エタノールを噴霧する方法では,被消毒物の表面に付着した液滴から速やかにエタノールが揮発してエタノール濃度が低下し (この速度は,液滴の表面積/液滴重量が大であるほど大きい) 消毒力を失う.そのため噴霧法では消毒力に持続性がないことが欠点の一つ.
 また,噴霧法で金属類や合成樹脂を消毒する際はその表面が「濡れる」くらいに使わないと消毒力がほとんど期待できないことである.また噴霧法で布類を消毒するならば,手で触って,消毒用エタノールで布が「湿っているのがわかる」くらい多量に吹き付けないと効力はない.
 つまり,上に示した画像で,レフェリーが消毒用エタノールをスプレーしているが,リング上を歩きながらシュッシュッと軽く噴霧して振り撒いているにすぎず,全く消毒にはならない無意味なことをしているのである.
 件のプロレス団体が,リング上で消毒用エタノールを散布することが無意味であることを承知の上で,それでもなお観客に対する興行上のパフォーマンスとしてやっているのならいいが,もしリング上に消毒用エタノールを噴霧して,それでなにがしかの消毒ができたと思い込んでいるのであれば,このプロレス団体は救いようがない.ちょっと調べれば,消毒の基本は容易にわかることだからである.調べることをしないのは阿呆である.
 そして,その阿呆のやることを「消毒を徹底している」と報じたNHKもまた阿呆である.

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