二人目の坂本龍馬 かなあ…
日刊スポーツ《武田鉄矢「驚愕」金八のウソ指摘した学者との出会い》[掲載日 2021年2月16日 15:31] から一部を下に引用する.
《「3年B組金八先生」で国語教師を演じていた武田は、「漢字の字源やうんちくを通じたシーンがウケたので調子に乗ってしこたま語っておりましたが、ある段階から、私が語った漢字の話はほとんどウソではないかという学者さんと出会いまして、驚愕(きょうがく)したわけです」と白川さんとの出会いを語り、「彼の説に説得力があり、その説にのめり込んでいった。私にとっては、人生で出会った2人目の坂本龍馬」と心酔ぶりを語った。》
テレビ番組で時々漢字の字源について解説している武田鉄矢が,白川静と出会ったのがいつ頃であったか,この記事ではわからない.
ただ,白川との出会いを「驚愕した」と書いてあることからすると,武田鉄矢がその時点では白川静のことをよく知らなかったということはわかる.従って,いわゆる白川静ブームの前のことであろう.
漢字の字源に係る白川静の説が知識層国民の際立った関心を呼び,白川静ブームという現象が発生した.これは1990年代に始まり,白川が亡くなった2006年以降,次第に沈静化してはいる.
白川静の説が前世紀の末に一大ブームを巻き起こしたのは,背景に漢字検定ブームがあった.
昔々,大久保昇という男が日本漢字能力検定協会を設立し,これで日本中に漢字ブーム (清水寺で行われるアホなイベント「今年の漢字」も漢字検定協会のビジネスの一つである) を起こして一儲けを企んだのはいいが,大久保の漢字検定というのは知識学問とは無縁のビジネスであり,そういう人物であるから結局は漢検協会事件を起こし,背任罪で実刑を喰らって収監された不祥事があった.
漢字検定というビジネスは,例に挙げて申し訳ないが野菜ソムリエなんてのと同じレベルのものだ.
こういう漢字ビジネスが盛んになる中で,白川静の説がもてはやされることとなった.
しかし白川静の名は非常に有名であるが,その学問はよく言えば「独創的」であり,貶すとすれば「ただの思い付き」ではある.
そのせいか,Wikipedia【白川静】は,白川の学問的業績について全く紹介していない.ただ著作を羅列しているだけである.
どんなことを主張しているのかを知りたくて一般向けの書籍を読んではみたが,私のような自然科学畑の人間は,呆れて本を放り投げるしかなかった.
碩学高島俊男先生は著書『お言葉ですが…〈別巻3〉漢字検定のアホらしさ』の中で白川説を「いたって程度が低い」と切り捨てていらっしゃる.ま,白川静の説は,そんな程度のものである.白川の没後,いまだにクイズ番組等で白川説が取り上げられることがあり,それはいかがなものか,との印象をぬぐい難い.
武田鉄矢は私と同い年であるが,現在は高齢者となった私と同世代の人々にとっての白川静は,名前だけ知っていればいいような人物である.
その白川の説に武田鉄矢は《のめり込んでいった。私にとっては、人生で出会った2人目の坂本龍馬》だと言う.その入れ込みようは,ちょっと痛々しく気の毒な感じがする.武田は少し冷静に白川説をみてみたらどうかと思う.例えば白川静ブームについての考察では,田畑暁生「白川静ブームとその問題点」を参考にして.
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