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2021年1月 6日 (水)

雑煮番組を観ていて気の付いたこと

 毎年の暮れと正月のテレビでは,各地の雑煮を話題に取り上げる番組が多い.
 定番は「東は角餅で醤油仕立て」と「西は丸餅で白味噌仕立て」というもの.
 下の画像はNHK《雑煮ジャーニー!》(1/2) の一場面である.
 
20210106c
 
 右側の《東 しょうゆ味》は東日本で一般的な雑煮で,澄まし汁に焼いた角餅の組み合わせだ.
 それと対置する《西 白みそ味》は西日本の雑煮かと思いきや,なぜか西日本のごく一部である関西の雑煮が対比されている.
 つまりNHKは,四国中国と九州は「西」に入れてくれないのである.
 そもそも通説では,現在の雑煮は,室町時代の武家社会における儀礼料理を庶民も食べるようになり,それが全国に広まったものであるという.従って東北・関東から九州の広い地域で醤油仕立ての澄まし汁が古くからの雑煮であるわけだ.(餅の形はまた別の話で,汁の味付けの地域的異同とは重なっていない)
 ところが関西 (京都,大阪,兵庫,奈良,和歌山) と四国の一部 (徳島と香川) ではいつしか武家風の雑煮が廃れて,白味噌仕立ての汁が本来の雑煮に取って代わった.
 また関西圏とは別に,もう一ヶ所,武家風雑煮が廃れた地方がある.出雲地方である.
 出雲地方といってもこれは広い意味であり,現在の島根と鳥取の沿岸部一帯のことだ.
 この辺りでは,テレビでよく「風変わりな雑煮」として紹介される小豆雑煮が有名だ.下の画像がそれである.(出典:農林水産省公式サイト《うちの郷土料理》から引用)
20210106b
 これについて朝日新聞にも記事が載っていた.
 朝日新聞デジタル《「普通」が人によって違う雑煮 鳥取の甘い味の謎を追う》[掲載日 2021年1月3日 13:00] から一部を引用する.
 
関東出身の記者は鳥取で過ごす初めての冬を迎えた一昨年、知人と正月の話題をしたときに驚いた。雑煮はすまし(しょうゆ)か、みそかと思っていたところが、なんと、鳥取では小豆の雑煮が主流だという。甘党としてはたまらないが、それってぜんざいと一体何が違うの? 鳥取の小豆雑煮をめぐるなぞを追いかけた。
 県中部・倉吉市の白壁土蔵群にある餅料理を楽しめる店に向かった。創業100年を超える老舗の餅屋が、約20年前に開いた「町屋 清水庵(せいすいあん)」。この辺りでは正月にとち餅を使った小豆雑煮を食べる風習があると聞く。
 メニューを開くと「とち餅入りぜんざい」がある。社長の清水将太さん(34)に聞くと、「『ぜんざい』として通年で出しているんです」。
 やはり、「小豆雑煮=ぜんざい」ではないか? ただ味は最高で、いったん箸を付けると、箸はどんどん進み、小豆雑煮の謎もしばし忘れた。
 とち餅はとろっとしていて、甘い小豆汁によく合う。小鉢の塩昆布は、甘みをよく引き立てた。
 
 朝日の記者は,餅料理店「町屋 清水庵」の社長が《『ぜんざい』として通年で出しているんです》と言っているにもかかわらず,勝手にそれを否定して,清水庵の「ぜんざい」は出雲の小豆雑煮であると決めつけてしまったが,これは誤りだ.最初っから自分の考えを押し通す気なら,当事者である清水氏にインタビューなんかするべきでない.失礼にもほどがある.
 実は出雲の小豆雑煮は,朝日の記者が書いているような《甘い小豆汁》ではない.朝日の記者の独断に反して,NHK《雑煮ジャーニー》に登場した島根県日本調理技能士会会長・安田政男氏は次のように語ったのである.
 
《(出雲は) お祝い事に小豆を非常によく使う地域であります.現在では甘い小豆雑煮を食べる家庭も増えましたが,元々は塩味の雑煮でした.味付けは海藻から採った藻塩のみです.昔は砂糖は貴重なものだったから,元々は塩雑煮.
 
 過去のテレビ番組では「出雲の小豆雑煮は甘い」と決めつけていて,農水省のサイトでもそう書かれているのだが,実は藻塩で味付けする塩味の本来の小豆雑煮の作り方が,今も伝えられているというのは,NHK《雑煮ジャーニー》が初めて全国に紹介したのではないか.私も,「甘い小豆雑煮」には疑問を持っていたので,この番組を観てようやく腑に落ちたのである.

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