芋づる式
『北村薫のうた合わせ百人一首』を読んでいたら,横山未来子の
はつなつの、うすむらさきの逢瀬なり満開までの日を数へをり
があり,これに続けて北村は
《はつなつ――と聞くと、川上澄生の版画「初夏の風」を思い出す。白緑の風が、婦人の周りを吹いている。画面には、こう彫られている。
かぜ と なりたや
はつなつの かぜ と なりたや
かのひと の まへに はだかり
かのひとの うしろより ふく
はつなつの はつなつの
かぜ と なりたや》
お,この詩は読んだことがある.
そう思ったのだが,版画「初夏の風」がどのようなものだったか思い出せない.
ただちにウェブを検索すると,栃木県立美術館に収蔵されていた.(栃木県立美術館蔵「初夏の風」)
こういうことがあると,ほんとにウェブのありがたさがわかる.
北村薫は,横山未来子の歌集『水をひらく手』において「はつなつの…」の前に,北原白秋の随筆「桐の花とカステラ」を思う歌があると記す.
もちろん (威張ってどうする --;) 私は『水をひらく手』を知らないし,白秋の「桐の花とカステラ」も知らない.
そこで,もしかしたらと思って「桐の花とカステラ」を探してみた.
すると,あるんですなあ,これが.青空文庫に.(青空文庫『桐の花とカステラ』)
こういう読書をしていると,ほんとに青空文庫のありがたさがわかる.あとはゆっくりと古書の『水をひらく手』を探せばよい.
ネット以前の世の中であれば,こんな具合にはいかない.「初夏の風」も「桐の花とカステラ」もよくわからぬままに読書中断と相成る.
そういう点では,私が若かった昔,すらすら読み進めない本の場合は先へ読み進むために,図書館へ行ったり古本屋を漁る必要があったりして,つまり読書は大変な労力を要したのであった.ありがたい世の中になったものである.
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