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2021年1月11日 (月)

芋づる式

『北村薫のうた合わせ百人一首』を読んでいたら,横山未来子の
 
 はつなつの、うすむらさきの逢瀬なり満開までの日を数へをり
 
があり,これに続けて北村は

はつなつ――と聞くと、川上澄生の版画「初夏の風」を思い出す。白緑の風が、婦人の周りを吹いている。画面には、こう彫られている。
  かぜ と なりたや
  はつなつの かぜ と なりたや
  かのひと の まへに はだかり
  かのひとの うしろより ふく
  はつなつの はつなつの
  かぜ と なりたや
 
 お,この詩は読んだことがある.
 そう思ったのだが,版画「初夏の風」がどのようなものだったか思い出せない.
 ただちにウェブを検索すると,栃木県立美術館に収蔵されていた.(栃木県立美術館蔵「初夏の風」)
 こういうことがあると,ほんとにウェブのありがたさがわかる.
 北村薫は,横山未来子の歌集『水をひらく手』において「はつなつの…」の前に,北原白秋の随筆「桐の花とカステラ」を思う歌があると記す.
 もちろん (威張ってどうする --;) 私は『水をひらく手』を知らないし,白秋の「桐の花とカステラ」も知らない.
 そこで,もしかしたらと思って「桐の花とカステラ」を探してみた.
 すると,あるんですなあ,これが.青空文庫に.(青空文庫『桐の花とカステラ』)
 こういう読書をしていると,ほんとに青空文庫のありがたさがわかる.あとはゆっくりと古書の『水をひらく手』を探せばよい.
 ネット以前の世の中であれば,こんな具合にはいかない.「初夏の風」も「桐の花とカステラ」もよくわからぬままに読書中断と相成る.
 そういう点では,私が若かった昔,すらすら読み進めない本の場合は先へ読み進むために,図書館へ行ったり古本屋を漁る必要があったりして,つまり読書は大変な労力を要したのであった.ありがたい世の中になったものである.

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