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2020年12月27日 (日)

米料理好きには朗報かも

 産経新聞《リゾット、パエリア専用の米を作ったのは有名米どころ》[掲載日 2020年12月26日 14:05] から一部を下に引用する.
 
各都道府県がブランド米販売にしのぎを削るなか、リゾットやパエリアに適した米が新たに開発された。米どころの一つ、福井県の「越(こし)のリゾット」で、歯応えのある食感、アルデンテが特徴。農家や業者にとって扱いやすい粒の形状をしている上、料理人からも「使いやすい」と高評価を受けている。
(中略)
独特の食感が注目される越のリゾットだが、普及面でも強みがある。
 まずは、粒の形や大きさが日本でなじみがある短粒種であること。リゾットで使われる米は従来イタリア原産の品種「カルナローリ」が多い。だが、長さや幅が大きめの長粒種のため、短粒種の一般的な米を扱う生産農家や精米業者にとって、もみすりや精米の機械を長粒種用に調整するなど手間が必要だった。
 
 ネットでリゾットやパエリアのレシピを探すと,日本産品種米 (短粒種のウルチ米) を使ったものがある.
 それでもパエリアは,パエリア鍋かフライパンを使えば何とか本来のパエリアに似たようなもの (炊飯器で作ったものはナンチャッテ・パエリアだ) が作れるが,リゾットはいけない.ナンチャッテ・リゾット以下の,まるっきりのオジヤになってしまう.
 そのため,米料理を好きな人々は,スペイン産のバレンシア米やイタリア産のカルナローリ米を通販で入手して使っている.
 しかし残念なことに,これらの輸入米を通販で購入すると高い.一キロ入りの包装で千五百円から二千円近い価格である.
 
 実は,カルナローリは国産品がある.「たけもと農場」が生産と通信販売をしている「国産カルナローリ(イタリア米) 白米1kg」である.
 私はこの米をAmazonで購入したのだが,届いた商品を見て驚いた.非常に劣悪な品質だったからである.怒り心頭で投稿したレビューの画像を下に掲載する.
20201227a
(テキストは以下の通り)
江分利万作
 クズ米
 2019年11月2日に日本でレビュー済み
 パターン: 白米 1kg
 未開封の状態で目視すると、ほとんどが割れていました。開封して大サジ一杯を取り、ルーペを使って割れていない米粒を選り分けたところ、正常な粒は四割強しかありませんでした。残りは、三分の一以下の大きさに割れた粒が多かった。日本産の品種なら家畜飼料くらいのグレードです。あと、裏面表示に「複数原料米」と書かれていますが、30年産とも表示されていますから、産地か品種が異なる米をブレンドしていることになります。この生産者はカルナローリ米の、複数栽培品種をブレンドしているのでしょうか。また、形は正常でも小粒の米が混じっています。これは未熟米ということでしょうか。それとも日本産米を混入させているのでしょうか。
 
 たけもと農場の米の問題点は,まず第一に割れ米率の異常な高さである.Amazonのレビューに《割れ米については中粒種なら、割れた米=糊化するわけですが、このお米は別に糊化しないので問題ないのだな…とは料理してから感じました。国産のほうが輸入時のポストハーベスト農薬の心配はないわけで、国産であることに充分な価値があります》と書いている人 (匿名投稿者,星4.0,表題「リゾットに最適です」,2020年10月8日) がいるが,「問題ない」わけがない.イタリアからの輸入米は,たけもと農場の商品とさして変わらぬ価格で,はるかに良い品質の米が買えるからである.また,イタリアもスペインも,輸入米から残留農薬 (ポストハーベストを含む) が検出された例は,この二十年来ない.むしろ国産米にはネオニコチノイド系農薬 (拙稿《かわいそうなミツバチ》参照) が検出されることがあり,《国産であることに充分な価値があります》は誤った認識である.
 さらに私はレビューに《裏面表示に「複数原料米」と書かれていますが、30年産とも表示されていますから、産地か品種が異なる米をブレンドしていることになります。この生産者はカルナローリ米の、複数栽培品種をブレンドしているのでしょうか。また、形は正常でも小粒の米が混じっています。これは未熟米ということでしょうか。それとも日本産米を混入させているのでしょうか》と書いたが,これは婉曲な物言いである.あからさまに言えば,この製造販売者は,日本産品種米を混入しておきながら,カルナローリと称していると考えられるのだ.裏面表示には「複数原料米」と書いてあるので,混入は承知の上であり,タチが悪い.
 
 たけもと農場のカルナローリに割れ米が異常に多いということに戻るが,どうすれば半分近くが割れ米になるのか,私は大いに疑問だった.
 それが,産経新聞の記事を読んで,得心が行った.
 産経の記事に《リゾットで使われる米は従来イタリア原産の品種「カルナローリ」が多い。だが、長さや幅が大きめの長粒種のため、短粒種の一般的な米を扱う生産農家や精米業者にとって、もみすりや精米の機械を長粒種用に調整するなど手間が必要だった》と書かれている.
 つまり,たけもと農場では精米機を《長粒種用に調整するなど手間》(ただしカルナローリは長粒種ではなく中粒種で,粒が大きい) を惜しんで,短粒米と同じ条件で精米しているのだろう.たけもと農場は多品種の米を製造販売しているから,精米機の調整なんか歩留まりを落とすし,めんどくさいのだろう.
 たけもと農場製カルナローリの商品説明ページに《たけもと農場が日本で初めて栽培に取り組んだのは2011年です。そこから日々試行錯誤を重ね、今日に至っています》とあるが,九年間も試行錯誤をしてこの有様かと,小一時間ほど膝詰めで説教してみたいと思う.
 
 さて,産経の記事が紹介している福井県の「越のリゾット」だ.
 記事が事実とすれば,たけもと農場のカルナローリよりも大幅に低価格の米になる可能性が高い.短粒種だから料理の外観は異なるだろうけれど,食感はカルナローリに似ているというから,リゾットを高いイタリア産米で作って食べている人には朗報かも知れない.もちろん割れ米ばかりの,たけもと農場製ナンチャッテ・カルナローリを買う意味はなくなる.

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