« イブにはケーキを | トップページ | 売家と唐様で書く三代目 »

2020年12月25日 (金)

昭和のカレー会食

 スポーツニッポン《大竹まこと ステーキ会食の菅首相チクリ「あの会食に阿佐ヶ谷姉妹の弁当を見せてやりたかった」》[掲載日 2020年12月23日 19:45] から一部引用する.

壇蜜(40)が「ささやかだからホッとするんですよ。ステーキだからダメだったんじゃないですか?麦ご飯と黄色いたくあんだったら、みんな何も言わなかったんじゃないですか?」と、菅義偉首相のステーキ会食の話題を唐突に持ち出した。
 すると大竹は、21日の放送で月曜パートナーの阿佐ヶ谷姉妹が持って来た弁当の具材を紹介。玄米ご飯にゆで卵1個、味付けにのりたまをかける、質素すぎるものだったという。「あの(菅首相の)会食に、おととい阿佐ヶ谷姉妹が持って来た弁当を見せてやりたかったよ」とポツリ。
 
 檀さんの《ステーキだからダメだったんじゃないですか?》はちょっと違うと思う.
 政府が国民に要求していることと,首相のやることが全く異なる (マスク,会食人数 etc.) という,政治家の言行不一致が,国民の反感を買ったのだと思う.一人六万円という会食代に対する反感はその次のことだろう.
 昔から自民党の政治家は料亭での密談が政治手法で,飲食交際費が潤沢ではない野党議員から「料亭政治家」と非難された.
 池上彰によると,今はもう料亭での密談スタイルは廃れて,専らホテルでの会食が舞台となっているそうだが,一日三食を会食するどころか,夜は会食のハシゴをする菅義偉は,会食政治家と呼んでいいかも知れない.
 
 しかし保守党政治家がみんな料亭政治家だったかというと,三木武夫や池田勇人は違ったのではないか.
 特に池田勇人は,今でいうビジネスランチの先駆けで,首相官邸でカレー・ライスを食べながら政財界の要人と会談をしたといわれている.
 私もテレビのニュースで,池田勇人が官邸で会食するシーンを何度か見た記憶がある.ゴルフ場や料亭での密談を嫌った池田が工夫した政治手法だったのだろう.今の菅とは対極にある姿勢だ.
 ところで,池田勇人が食べたカレーだが,凡そどんなレシピだったか,調べてもよくわからない.
 池田の首相在任期間は私が小学校から中学校時代にわたるのだが,当時のテレビニュースや新聞記事の遠い記憶では,池田が好んだのは首相官邸食堂のカレーだったと思う.
 首相官邸の食堂と聞くと社食みたいな印象を受けるが,さにあらず.
 食堂は「大食堂」と「小食堂」の二つ (*註) があり,首相が食事を摂るのは小食堂だという.調理は「総理官邸調理室」が行う.献立は,首相の好みに合わせて,この部署が作成する.池田勇人の場合はお気に入りの特別献立がカレー・ライスだったというわけだが,当時から首相が食べているのは特別なカレーであるとテレビは言っていた.しかしそれにしても,贅を尽くしてもカレーはカレーなので,菅義偉の六万円ステーキ・コースに比較すれば非常に質素な食事だったろう.
 池田勇人は日本史に足跡を刻んだ政治家であったが,菅はすぐに忘れ去られるだろう.国民の血税で豪華な飯を食える今のうちに,せいぜい美食を楽しんでおけばいい.
 
[註] 官邸の食堂は単なるレストランではなく,各国首脳会談や党首会談などが行われる会議施設でもある.

|

« イブにはケーキを | トップページ | 売家と唐様で書く三代目 »

新・雑事雑感」カテゴリの記事