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2020年11月18日 (水)

かわいそうな動物たち

 NHKのニュースが時々取り上げるが,都市の商業地や住宅街に大型の野生動物が姿を見せることが増えている.これはかなり前からのことで,NHK《クローズアップ現代 アーバン・イノシシ物語 ワシらが都会を目指すワケ》[掲載日 2019年5月8日] も取り上げていた.
 クマとイノシシは捕獲しやすいようだが,ニホンザルは長期にわたって放浪する.
 専門家によると今年は深い奥山のドングリが不作で,クマは食い物を求めて移動するわけだが,昔なら彼らの居住地と人間の住むところのあいだに里山があり,この里山が,野生動物の市街地への移動を妨げていた.
 ところが昨今のように里山が荒廃すると,野生動物はいきなり人間の住む地域に入り込んでしまうことになる.
 そして例えば,それまでは質素なドングリ食を口にしていたクマは,人間が捨てる生ゴミや果樹や畑の作物の悪魔的なおいしさを知ってしまうのである.イノシシも同様だろう.
 ただしこの説明には異論がある.ツキノワグマの生態を研究している研究者や保護団体の観察と実験によると,冬眠に入る前のクマは,リンゴ等の果実には目もくれずにドングリのみを腹いっぱい食うのだそうだ.つまりクマの主食であるドングリは,皮下脂肪を増やして冬眠可能にする御馳走なのだという.果糖よりもデンプンのほうが体脂肪を増やすというのは,わからぬでもない.
 秋にクマが農村のリンゴ農家を襲ってリンゴを食べてしまうのは,クマにとってみれば,冬眠準備どころか飢えのために止むを得ず食っているのかも知れない.
 
 私は,人間が住む街中に迷い込んだクマやイノシシの心中を察すると胸が痛む.彼らは,どうやったら元の住処に戻れるか,わからなくなっているに違いない.人間が深い山の中に迷い込んで帰り道がわからなくなったらパニックに陥るだろう.クマもイノシシもたぶんパニックになっていると思う.
 先日のテレビ番組を観ていたら,そんな状態のイノシシを,防犯カメラが偶然に撮影した映像を流した.
 そのイノシシは異常に攻撃的になっていて,住宅地の道を歩いている背広姿の会社員をみつけると,遠くから突撃して衝突した.
 会社員が転倒すると,イノシシはクルリと向きを変えて,再び会社員氏に突撃をした.猪突猛進という言葉があるが,実際にはイノシシは機敏に方向を変えるようだ.
 映像を観た限りでは,イノシシはもうわけがわからなくなっているように見えた.妙な言い方だが,悲壮感が漂っていた.
 そして間もなくそのイノシシは捕獲され,殺処分された.
 彼にはなんの落ち度もないのである.ただ,野生動物たちと人間の居住地域が緩衝地帯なしに接していることが,彼の不幸を招いたのだった.
 
 環境省は下記の引用のように,自然環境局のサイトで控えめに里山の保全を語っている
 
里地里山とは
 里地里山とは、原生的な自然と都市との中間に位置し、集落とそれを取り巻く二次林、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域です。農林業などに伴うさまざま人間の働きかけを通じて環境が形成・維持されてきました。
 里地里山は、特有の生物の生息・生育環境として、また、食料や木材など自然資源の供給、良好な景観、文化の伝承の観点からも重要な地域です。
里地里山の危機
 しかし、里地里山の多くは人口の減少や高齢化の進行、産業構造の変化により、里山林や野草地などの利用を通じた自然資源の循環が少なくなることで、大きな環境変化を受け、里地里山における生物多様性は、質と量の両面から劣化が懸念されています。
 
 しかし,里山保全の行政当事者である農水省は,全く関心がない.平成26年に《里山の植生管理等による環境保全活動》というウェブページを掲載したが,写真がたった一枚載っているだけで,文章は全く書かれていない.どれだけ無関心か,よくわかる.
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 そして以後,このページは手入れされていないのだ.農水省は,里山をどうするかを国政の課題とは考えていないようで,地方自治体の農林水産部に丸投げしている.
 たぶん市街地にクマやイノシシが迷い込む事態を,農水省は自分には関係ないことだと思っているに違いない.
 環境省は,お題目を唱えてはいるが,国土政策に口を挟む力はないだろう.
 小泉環境相に,市街地の野生動物についての見識を訊ねてみたい気がする.
 
 イノシシの生態について私はよく知らないのだが,環境省の調査によれば,全国のイノシシの個体数は70万~116万頭と推定される.
 人間が農業被害を理由にして,本気でイノシシの駆除を始めたら,一気に絶滅に追い込めそうな数である.
 ツキノワグマは,九州では全滅した.四国でも絶滅寸前だとされる.
 ツキノワグマの個体数は不明だが,これはイノシシよりも圧倒的に少ないと思われ,人間の生活圏に侵入する害獣としてこのまま駆除を続けて行けば,本州でも必ずや絶滅するだろう.
 研究者は,ツキノワグマの生息域周辺にナラ等の広葉樹林を植樹することで,クマと人間の共生が可能だと考えている.このような林業こそ,環境省は農水省に推進を迫るべきではないか.
 省庁間の連携が行政改革だと首相は言うが,担当大臣がハンコのことにしか関心がないのでは,生物多様性もへったくれもないと思う.

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