« その歳で何をたわけたことを | トップページ | 悲しいまでに弱い男 »

2020年9月25日 (金)

ボビーを現行犯逮捕

 朝日新聞DIGITAL《ボビー・オロゴン容疑者を在宅起訴 妻への暴行罪》[掲載日 2020年9月24 13:30] から下に引用する. 
 
自宅で妻の顔を小突いたとして、さいたま地検は24日、タレントのボビー・オロゴン(本名・近田ボビー)容疑者(54)を暴行の罪で在宅起訴したと明らかにした。起訴は23日付。
 起訴状などによると、ボビー容疑者は5月16日、さいたま市内の当時の自宅で妻(47)に「ボコボコにするから」と言ったうえで、左頰を右手の指先で突く暴行を加えたとされる。ボビー容疑者は埼玉県警浦和署に現行犯逮捕された後に釈放され、任意捜査が続いていた。
 
 上の事件は第一報からして妙だった.
 例えば朝日新聞DIGITAL《ボビー・オロゴン容疑者を現行犯逮捕 妻への暴行容疑で》[掲載日 2020年5月16日 17:53] は下のように報じた.
 
妻の顔をたたいたとして、埼玉県警は16日、タレントのボビー・オロゴン(本名・近田(こんだ)ボビー)容疑者(54)を暴行の疑いで現行犯逮捕し、発表した。「殴っていない」と容疑を否認しているという。
 浦和署によると、逮捕容疑は同日午前11時50分ごろ、さいたま市内の自宅で、妻(46)の顔をたたいたというもの。
 
 これだけだと逮捕の様子が不明だが,文春オンライン《ボビー・オロゴン逮捕》暴行は2度目、豪邸にベントレー、闇営業…陽気な外国人“カネと暴力”の素顔》[掲載日 2020年5月19日] から下に一部引用する.

妻の顔を叩くなどしたとして、5月16日に自宅で現行犯逮捕されたタレントのボビー・オロゴン(54)。18日午後10時すぎには釈放され、警察署に集まった報道陣の前に黒いスーツ姿で現れ、頭を下げた後、無言で立ち去った。
「浦和署によると、ボビーの妻から『顔を叩かれた』と110番通報があり、自宅に駆けつけた警察官に逮捕された。現在もボビーは容疑を否認している。警察は今後、任意で捜査を続ける方針です」(現地記者)》(文字色による強調は当ブログの筆者が行った)
 
 ここで現行犯逮捕について確認してみよう.
 アディーレ法律事務所《逮捕とその種類について》から該当する箇所を下に引用する.
 
逮捕手続きには(1)通常逮捕,(2)現行犯逮捕(準現行犯逮捕),(3)緊急逮捕の3種類があります。以下,簡単に3つの逮捕手続を説明します。
 通常逮捕とは,逮捕令状を面前で示し,疑いが掛けられている犯罪と逮捕の理由を告げて犯人を逮捕する手続をいいます。その名の通り原則的な逮捕手続であり,被疑者の人権を保障する観点から,捜査機関ではない裁判所によって逮捕の要否に関するチェックを受け,その結果逮捕の必要があると判断された場合に初めてできる手続となっています。
 現行犯逮捕とは,現に犯罪を行っている犯人や,犯罪を行い終わったばかりの犯人を,逮捕令状なく逮捕する手続をいいます。たとえば,犯人が被害者をナイフで刺すところを目撃した警察官がその犯人を逮捕する場合,犯罪が行われたことが明らかで,犯人も明白であることから,通常逮捕のような裁判所の事前のチェックなしに逮捕することが例外的に認められているのです。また,現行犯とはいえないものの,犯罪を行った後に犯人として追いかけられている者や,血の付いたナイフを殺害現場の近くで持っている者についても,現行犯に準じる者として,逮捕令状がなくても逮捕することができます(準現行犯逮捕)。
(以下略)》(文字色による強調は当ブログの筆者が行った)
 
 以上をまとめると,ボビー・オロゴンの妻 (テレビに出演したこともある日本人である) が埼玉県警浦和署に110番通報し,ボビーの自宅に駆けつけた警察官によって現行犯逮捕された,という事情である.
 この第一報を聞いた私たち一般人は,なんとなく疑問を持ったはずである.
 家庭内暴力で警察官に現行犯逮捕される際に必要な条件とはなにか.
 上の引用した法律事務所の記事文中の解説によれば「現に犯罪が行われているか,犯罪が行われた直後で,犯人が明白であること」である.
 一件一件の新聞記事を例示する労は取らないが,例えば児童虐待が行われている最中にその児童の悲鳴や物音を聞いた隣家の人が警察に通報したが,駆け付けた警察官は中に踏み込まなかった (踏み込めなかった) という例が多い.これは住宅内における現行犯逮捕の難しさを示していないか.
 また息子の家庭内暴力に耐えかねた老親が息子を殺害したというニュースもこれまでに複数あったと記憶している.普段から警察に相談していたにもかかわらず,警察が動いてくれなかったので殺害に及んだのである.これも警察が悪いというのではなく,家庭内暴力の現行犯逮捕の困難さを想像させる.
 
 ボビー・オロゴンの場合はどうか.
 警察に通報したのは,ボビーに暴力をふるわれた妻自身である.すなわち彼女が110番するのをボビーは阻止せず横で見ていたことになるが,いささか不自然ではないか.
 また駆け付けた警察官は,どのようにして「暴力がふるわれた直後」であると判断してボビーを逮捕したのか.令状は必要ないと判断する根拠は何だったのか.
 
 ボビーは格闘家のような体格である (弟は格闘家だ) から,最初の警察発表のように「顔を叩かれた」のであれば顔にその痕が残っていたんだろうなあ,と報道に接した一般人は思っただろう.少なくとも私はそう思った.ただし,事件直後の警察発表ではボビーは「殴っていない」と述べたとされ,「顔を叩いた」のと微妙な食い違いがある.「殴る」と「叩く」の違い.警察発表が一貫していないことに,私はひっかかるものを感じた.
 そして昨日,埼玉地検はボビーを在宅起訴したが,容疑は「妻の左頬を右手の指で突いた」である.「顔を叩いた」とする最初の警察発表と全然違う.これでは,果たして現場に駆け付けた警察官は,暴力が振るわれた直後であると判断できたのか疑問である.
 諸々の報道によれば,ボビー・オロゴンのDVは間違いないことなのであろうが,それと現行犯逮捕が法的に妥当だったかは別である.
 検察の公判維持の続報が期待されるところだ.
 
 それにしても,ボビーは有名人だから特別扱いなのか.ボビーの場合のように,世の中のあちこちで起きている家庭内暴力にその気になれば多少法的に強引でも警察は強く介入できるのではないか.しかし一般人の家庭の場合には,リスクを冒してでもDV被害者を救おうという気はない.私はそう思う.

|

« その歳で何をたわけたことを | トップページ | 悲しいまでに弱い男 »

新・雑事雑感」カテゴリの記事