« 「経験したことのない暴風雨」が常態化している | トップページ | それが寄付を募る態度か »

2020年9月 7日 (月)

犬の散歩

 民放の情報番組ではそれほどでもなかったが,NHKの台風10号報道に私は好感を持った.いつもは笑顔の女性アナウンサーたちが,真剣な表情で繰り返し「あなたとあなたの大切な人のために,命を守る行動をとってください」と訴えた.
 かなり前には東京に勤務していて今は地方局の幹部社員になったろうと思われる年配の男性アナウンサーたちの顔を久しぶりに見た.
 東京からの放送で,これだけ多くの地方局アナウンサーたちが懐かしい声を聴かせてくれるとは思わなかった.
 
 JR西日本は,通常は福岡県那珂川市の車両基地に停車させている山陽新幹線約30編成の一部を,広島市や岡山市内の車両基地に避難させた.福岡の車両基地が強風の被害を受けた場合に,車両の損傷を防ぐためだという.
 これは昨年の台風19号で千曲川が氾濫した際,長野市の長野新幹線車両センターが浸水被害を受け,北陸新幹線で使用している30編成のうち10編成に被害が発生した事件を教訓に行われたものだろう.
 
 一般市民でも,今まで台風が来ても家屋の養生をしたことのない人々が,窓や玄関に板を打ち付けている映像も報道された.
 昭和三十年代には,庶民の住処は貧しい木造建築だったから,強風の風圧で木枠の窓は簡単に破壊された.その後,アルミサッシの普及により,そんなことはなくなったと思っていたら,現代は路上に置かれているものが,例えば自転車とかが飛んでくる.軽乗用車も連続横転しながら転がって来る.今日のテレビニュースによれば,建物の外壁がはがれて吹き飛ばされた例がいくつも映像で流された.軽量な屋根材が吹き飛んでいく映像は実に恐ろしい.そういう物の衝突直撃に備えて,現代の対台風の家屋養生は行われている.

 私は神奈川県に住んでおり,とりあえず重大被害を被ることはないので,それだけに西日本各地に被害が少ないことを心から祈る.
 だが台風には祈りなんか通じないぞというように,11時のニュースで各地で土砂崩れの報告がなされた.男女合わせて五人の安否が不明など.
 
 その昼前のニュースを見ていて,私は我が目を疑った.今朝撮影された映像のようだが,中肉中背の男性がフード付きレインコートを着用して暴風雨の街なかを歩いている.猛烈な風に体が飛ばされそうなので,よろよろとして歩みは遅い.そして彼の姿が奇異なのは,犬を連れていることだ.短いリードで繋がれた中型犬は,暴風に必死に抗って脚を踏ん張って飼い主の脇を歩く.
 男と犬は,朝の散歩をしているらしい.激しい雨が舗装道路から水煙を上げるほどの勢いで降り,犬の背にも叩きつけるように降る.ずぶ濡れの犬は痛くはないのだろうか.
 確かに,散歩中でないと絶対に排便しない犬がいると聞いたことがある.もちろん飼い主の躾が悪い.
 だがしかし躾の問題は別として,風速四十メートルの風と雨のなかで,その犬が排便したフンはどうなるのであろう.たぶん尻から出るや否や糞速四十メートルで飛んでいくのだ.糞速とはいえ単位は分速ではなく秒速 (メートル/秒) だ.尿なら尿速で霧散するが,尿速の単位は秒速で,語呂がいい.
 それはともかくNHKの合原明子アナウンサーが真剣な面持ちで「命を守る行動をとってください!」と視聴者に訴えているというのに,犬の便は糞速四十メートルで飛んでいき,せっかく厚い板で養生した民家の窓を直撃するのである.真剣な訴えが虚しく響く合原アナがかわいそうである.
 というわけで,犬の散歩は天気の良い日がお勧めです.

|

« 「経験したことのない暴風雨」が常態化している | トップページ | それが寄付を募る態度か »

新・雑事雑感」カテゴリの記事