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2020年8月 2日 (日)

老人は加工食品をアレンジしよう

 テレビによく出演しているリュウジさんというかたは,今までにないタイプの料理研究家だ.
「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」を始めとするテレビ各局の料理番組に登場する料理家,料理研究家,料理人,あるいはそういう範疇に入らない怪人平野レミとか,こういう人々は,食品会社の製品をメインに使った料理は作らない.調味料は基礎調味料 (塩,醤油,砂糖,酢など) を組み合わせて使うのが原則だ.「ミツカンのカンタン酢がおいしいので,今日はこれを使った料理を作ってみましょう」とは絶対に言わない (ただしミツカンの提供する番組は除く).
 またカレーは,即席カレールーにおいしいものが沢山あるのに,わざわざ「カレー粉」を使う.「昔風の家庭のカレーを作ってみましょう」と言うなら,ハウスのバーモントカレーを使うのが家庭内料理人にとっては「鉄板」だが,彼らプロは決してそう言わない.加工食品を用いるのは料理研究家の沽券に関わるとでも思っているのだろうか.あるいは番組スポンサーの意向とか,NHKの番組放送ルールで商品名は放送しないということも考えられが.
 このような彼らプロ料理家の流儀は,実際にその料理を作ろうとする一般人にとってデメリットとなる.
 少し考えてみればわかることだが,メーカーによる差がほとんどない調味料は砂糖と酢とサラダ油くらいのものだ.醤油はメーカー差が歴然とある.あるいは伝統的な容器に充填された醤油と,最近流行の「風味保存性のよい容器」に入っている醤油でも風味が違う.しかしテレビの料理番組に出てくる先生は,そんなことはお構いなしに「醤油大さじ二杯を」で済ませてしまう.だから関東の視聴者と関西の視聴者では,同じレシピで作っても味の違う料理ができてしまうのだ.
 また基礎調味料ではないが「めんつゆ」は,どんな料理音痴でも,メーカーが異なると味が違うということを知っている.各メーカーは,味の違いが消費者にわかるように商品設計しているから当然だ.
 私は食品会社に定年まで勤めていた人間なので言うのだが,料理家は「自分がよいと思って使っている調味料や食材は○○の△△です」と明らかにすべきだ.料理を作るに際して肝心なところを,視聴者あるいは消費者に丸投げしてはいけない.きちんと仕事をして欲しい.
 
 しかしともかくリュウジさんは,そういう「食品メーカーとの癒着を疑われてはいけない」というシガラミとは無縁だ.発想が自由である.「どこにうちにもあるカップスープを使って……」などと言いながら,テレビ画面にははっきりとクノールの製品が映し出される.たぶんリュウジさんは,アレンジするのに最適な,つまり結果的に一番おいしかった製品を放送で紹介しているだろう.従って視聴者は,リュウジさんのレシピ通り (材料のメーカーを含めて) に作れば,おいしいアイデア料理を作れるのである.レシピ通りに作ったものがおいしければ,レシピを作った人とメーカーの癒着がどうのなんて,消費者は問題にしないに違いない.
 こういう傾向は次第に料理好きの若い人たちのあいだに広まっているようだ.
 テレビ朝日の《家事ヤロウ》は最近の人気テレビ番組で,当初は深夜枠の放送だったが,いまやゴールデン帯に三時間スペシャルが放送されるまでになった.
 この番組はタイトルには「家事」とあるが,ほとんど料理のアイデア特集とでもいった内容になっている.番組コンセプトは「料理に全くの初心者でも作れる料理」ということだが,初心者ではない私でも楽しめる楽しい内容である.そしてリュウジさんはこれに不定期出演している.
 この「初心者でも作れる料理」は,野菜の切り方とか,鶏モモ肉の下処理の仕方とかの技術的なことは全く無関係で,ただもう「○と○を組み合わせたらおいしかった」というものだ.従ってその「○」と「○」に何を使うかが重要になる.先日の放送では,そうめんを使ったアイデア料理を紹介していたが,出演者のバカリズムもカズレーザーも口を揃えて「そうめんは揖保乃糸ですよねー」と言った.私はそれでいいと思う.もちろん,我が家は三代前からそうめんは三輪に決めている,という人はそうしてほしい.
「家事ヤロウ」のように,出来合いの常温保存の加工食品やレトルト食品,冷凍食品,調理済みチルド食品などをアレンジして,自分がおいしいと思うものを作る,というのはよいことだ.料理本を読みながら一から手作りの料理を拵えてまずかったりすると精神的ダメージが大きいが,出来合いのもののアレンジは簡単だから気楽だ.それて失敗だったら二度と作らなきゃいいだけのことである.
 そういう流れの話で,一つ紹介したいものがある.レトルトカレーでハウス食品の「プロクオリティ ビーフカレー 辛口」だ.これはCМ動画を時々テレビで流しているが,「具が入っていない」のが「プロクオリテイ」だというのである.
 確かに,一袋五百円前後のレトルトカレー (そういうのがあるのよね) でも,入っている具は一センチ角の謎肉みたいなかけらで,実にチープである.こんな具だったら入ってなくてもいいやと普通の人は思うのではないか.
 だから私は遠藤憲一シェフの「プロはソースで勝負!」を支持する.そこでAmazonのユーザー評価を読んでみよう.
 
プロクオリティとか言っているが、全然美味しくなかった。宣伝で美味しそうに食べてるが全部嘘だ。普通のレトルトカレーの方が美味しい。何かウスターソースか中濃ソースを混ぜたようなマズさ。もう二度と買わないと思う。
 
と☆一つにしてディスっている人もいるが,
 
不味いカレーではないが、5分の2ぐらいはソースというかデミグラスソースの味だ。カレー本来の味はあまりしない。色も黄色ではない。あまりウコンを使っていないのでカレー感がしない。むしろハヤシライス風の味だ。ガーリックはきいている。
 
と,☆四つにしたうえで《カレー感がしない》と書いている人もいる.まあ,そうだろうと私も思う.
 しかし,このレトルトカレーはとにかく価格が安い (一袋が百円以下で売られている) ので,具をたっぷり入れてさらに「カレー感」を強化すれば,ワンランク上の価格帯の商品 (これもカレー屋のメニューに比べるとかなりチープだ) よりもおいしくできるのではないかと私は思った.それに,即席カレールーで一人前のカレーを作るのは難しいが,レトルトカレーをベースに利用すれば少量のカレーを作ることができるメリットがある.独居あるいは夫婦二人の高齢者は,作る料理の量を減らすことが必須だ.
 というわけでその一例だ.
 スーパー等で「カレー用」とラベルに書いてある安い牛肉を二百グラムくらい買ってくる.
 小さめの鍋に肉を入れ,ヒタヒタの水を加えて火を着ける.
 すると味を損ねるアク (血液成分等の不溶性タンパク質) が浮くので,これを掬い捨てる.煮る前に,肉に付着しているドリップをよく洗うとアクが少なくなることは,諸兄既に御案内の通り.
 次に「プロクオリティ ビーフカレー 辛口」一袋を鍋に投入する.当然だが,シャブシャブに薄くなる.
 ここにインデアン食品のカレー粉と,GABANのガラムマサラ,各大さじ二杯を加える.インデアン食品のカレー粉は評判がいいが,通販で買ったりすると高くつくので,デパ地下とか,近くに成城石井とかがなければ,スーパーにあるS&Bの赤い缶でよい.GABANのガラムマサラは実店舗で入手しやすい.特段にいくつものスパイスを用意しなくとも,カレー料理にはガラムマサラがあれば充分だと思う.
 以上を,カレーソースが元のレトルトカレーの量になるまで煮詰める.味見すると,はじめは「とがった」スパイシーな味だったものが,煮詰めていくと「プロクオリティ ビーフカレー」とは別物のようになる.そして出来上がりは,米の飯にカレーソースをぶっかけて食べるいつものお手軽カレーではなく「御飯と肉のおかず」という雰囲気が漂ってくる.(下の写真)
 下の料理例は牛肉だが,大きく切った鶏腿でも「ちゃんとした料理」のように見える.爺さんがレトルトカレーを温めてチャチャッと昼飯を済ませてしまう粗食感はないと思う.要は,カレーソースの量に対して具をたくさんにすることだ.
  
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 ところで,上の写真の飯は着色しているのがわかるだろう.これは,米二合に対して粉末か顆粒のコンソメスープの素を八グラムくらい入れて炊いたもの.コンソメスープはメーカー間の違いが大きいので,食塩相当量四グラムを目安にするとよい.飯にうっすらと味をつけておくと,カレーソースは少なめで具が多くても,おいしい.ちなみに上の写真では,飯の量は茶碗に軽く一膳である.

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