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2020年7月26日 (日)

反社の存在を認めよという記事

 NEWSポストセブン《コロナで困窮したホストが特殊詐欺に流れて逮捕される背景》[掲載日 2020年7月26日 16:05] によると,少し前の東京では,「夜の街」が新型コロナウイルス感染の元凶と言われていた.今はもうその時期を過ぎて,「夜の街」から市中感染へと拡大を続けているのが現状らしい.
 その「夜の街」では,多くの風俗店が緊急事態下における自粛要請中,休みなく営業を続けておきながら「休業協力金」も手に入れられるよう,表向きは休業しているかのように装っていたという.
 私がテレビの報道を観た限り,彼らはメディアの取材に対して異口同音に「万全の感染防止対策を行っています」と答えていた.しかしそんなのは嘘に決まっている.別稿で述べたが,風俗店だけでなく一般の飲食店等でも,まったくデタラメで効果のない「アルコール消毒」をやっている映像が,繰り返し放送されてきた.あんなやり方で,テーブルやイスを含む店内環境が消毒されるわけがない.新宿等の風俗店でクラスターが発生したのは当然なのである.
 彼らは,感染対策なんぞ見せかけだけやってりゃいいんだと思っているのだろう.取材時には,ホストたちはフェイスシールドをしてみせていたが,シャンパン・コールの時ははずしていると言っていた.正業に就いていない者が本気で社会的責任を果たそうとするわけがないのだ.
 キャバクラにしろホストクラブにしろ,社会的責任ということから最も遠い生業である風俗業界は,反社に近いところにある.
 業を煮やした菅官房長官は「夜の街」へ警察力の導入を示唆した.普段は官房長官と仲が悪いとされる小池都知事がこれに乗った.警視庁が風俗店の取り締まりのついでに,感染防止指導を行うというのだ.愚かというしかない.必要なのは,例えば「アルコール消毒しろ」ではなく「アルコール消毒の正しい方法はこうです」と指導することなのに.
 警察官は,感染対策に関しては一般人と同レベルの知識しか持っていない.彼らが感染でもしたら知事はどう責任を取るつもりなのか.
 いずれにせよ「夜の街」のうちの反社会的部分は,警察官を危機に晒しつつも,いずれ権力の手で追い詰められていくだろう.
 冒頭に挙げた記事は,このような状況下,食い扶持にあぶれたホストたちが,特殊詐欺等の犯罪に手を染めつつあるとレポートしている.
 
「歌舞伎町のホストが、店が潰れて仕事が無くなったことから、特殊詐欺の受け子をして逮捕されました。また、休業要請期間中に店にこっそり客を呼び、100万円以上をぼったくっていたとして、ホストがすでに逮捕されています。元ホストが犯罪で捕まっても、自身がホストであったことを打ち明ける例は当然少ない。直近で特殊詐欺で検挙された人間の中には、元ホストが少なくない数いるのではないかとも言われています」(大手紙警視庁担当記者)
 
 当該記事は,そこまではいい.しかし結びの一文が驚くべきことを言っている.
 
こうして書いてみてはいるが、責められるべきはホストだけ、と個人的には思っていない。筆者は以前、休業要請に応じないパチンコ店などを取材し、彼らが、50万円、100万円の休業協力金をもらうだけではどうしようもない、とういう実態をレポートしたが、ホストクラブに代表される「夜の街」の店々も同様だ。営業してナンボ、モノを売って100円1000円の利益を得るのではなく、数百万円を使って数千万円を得るというビジネスモデルである。
 もちろん、こうした仕組みを理解できない人たちにとっては、彼ら、彼女らの存在そのものまでを否定したくなるだろう。ただ、それを言っちゃ「おしまい」であるし、そうした金の回し方をする人たちが一定数いてこその、日本経済だったという側面も忘れてはいけない。結局その点への救済が不十分だからこそ、職にあぶれたホストが犯罪に走るなど負のスパイラルを呼び込んでいる、その災いが一般市民にも影響を与えている現実を、もっとよく理解しておいたほうがよいだろう。
 
もちろん、こうした仕組みを理解できない人たちにとっては、彼ら、彼女らの存在そのものまでを否定したくなるだろう。ただ、それを言っちゃ「おしまい」であるし、そうした金の回し方をする人たちが一定数いてこその、日本経済だったという側面も忘れてはいけない
 
 このセンテンスは「彼ら、彼女ら」を暴力団に置き換えても論理的に成立する.というより,記事を書いた記者の論理は裏社会のことを示唆している.
 麻薬や覚醒剤による裏社会経済だけでなく企業舎弟も含めれば,暴力団というマーケットの規模はホストクラブの比ではないだろう.彼らは無視できない日本経済の一部である.その上で,上の記事を書いた記者は,「覚醒剤を売ることを生業とする暴力団が一定数いてこその,日本経済だったという側面を忘れてはいけない」と主張しているに等しい.そして暴力団が存在する社会の仕組みを理解できない善良な国民が,暴力団の存在そのものまでも否定するのは《それを言っちゃ「おしまい」》だと言うのが,この記者の理屈だ.この記者は,暴力団の存在を否定するな,肯定しろと暗に言っている.すなわち善良な市民の目からは,この記者は暴力団シンパにしか見えない.
 昔,広域暴力団の組長 (山口組の田岡一雄だったと記憶している) が,暴力団の社会的意義を説いたことがある.構成員や準構成員を世の中に放置していたら,堅気の皆さんが大きな迷惑を蒙る.暴力団 (彼らは自分たちを暴力団とは言わないが) はそれを防ぐ役割を果たしている有意義なものだと言った.暴力団がなければ職にあぶれたヤクザたちが《犯罪に走るなど負のスパイラルを呼び込》こむ.だから私たちは暴力団が存在している《現実を、もっとよく理解しておいたほうがよいだろう》というわけだ.恐るべき反社会的記事である.無署名なのはそれが理由か.


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