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2020年6月10日 (水)

手指の消毒

 私が食料品の買い物に行く店の一つにダイエー藤沢店がある.このスーパーは二ヶ所の入口/出口ドアの内側に手指消毒剤のディスペンサーが置かれている.衛生面では,藤沢駅周辺のデパ地下よりも配慮が行き届いた良心的な店だ.
 以下はそのディスペンサーの話.
 ディスペンサーには手動と自動の二タイプがある.手動式はボトルの上のポンプヘッドを手で押し下げるとノズルから定量の消毒剤 (消毒用エタノールなど) が噴霧される.自動式は,ノズルの下に掌を差し出すと,それをセンサーが感知して,電池式電動ポンプが定量の消毒剤 (同上) を噴霧する.
 実際の商品をAmazonの商品ページで例を示す.手動式自動式.(この例はすぐにリンク切れする可能性大だが,検索語「ディスペンサー」で探せばヒットする)
 ただし,この例の商品が品質的にまともなものかどうかは知らない.特に自動式は,高価なのにすぐに壊れる粗悪品が多いと聞く.
 また自動式はメンテが必要である.高級なオフィスビルのトイレの壁に,壁に固定して設置するタイプのものを見かけるが,掌を差し出して容器が空になっていて消毒剤が出てこないなんてことがある.
 
 で,この自動式消毒剤のディスペンサーだが,個人の家庭でも商店でも,買わないことを強く勧める.なぜなら,このような製品を作るメーカーは,手指消毒の基本を知らないと思われるからだ.
 それでは手指の消毒はどのように行うのが正しいか.専門家が作成した動画を紹介する.私自身,現役の頃は食品衛生技術のプロだったが,その経験からしてこの動画の消毒方法は正しい.
 
アルコール手指消毒剤による手指消毒
 
 手指の消毒剤には,日本薬局方の消毒用エタノールそのものと,これに増粘剤を添加したジェル製品とがある.
 ジェル製品は粘度が高いため自動式ディスペンサーには使用できない.
 また薬局方消毒用エタノールは,一回の手指消毒に少なくとも3mlを必要とするが,自動式ディスペンサーから噴霧される消毒剤はかなり少量 (たぶん1ml以下) であるため,掌に3mlを採るためには何度もセンサーを感知させねばならない.手指消毒の正しいやり方を知っている使用者には,これがかなりのストレスである.
 実は数日前,冒頭に述べたダイエー藤沢店に設置されていた手指消毒剤のディスペンサーが,それまでの手動式から自動式に交換されてしまった.
 おそらく手動式よりも自動式のほうが消毒剤の消費量が少ないから,コストダウンになると考えたのだろう.
 私が昔,食品企業で食品衛生管理の仕事をしていた時,会社にやってきた自動式ディスペンサーのセールスマンが「自動式はコストダウンになる」と言ったので呆れたことがある.少量しか消毒剤を吐出できないことが自動式ディスペンサーの欠点なのに,それをウリ文句にするとは本末転倒もいいところである.
 役に立たない商品の例を示す.下に掲げる画像は,Amazonに出品されている「FORESEE 自動誘導 アルコール消毒噴霧器 非接触式 ハンドディスペンサー」という商品の説明画像である.
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 間抜けなことに,商品説明に堂々と「アルコール使用量節約」と書いてある.w
 この商品を手指の消毒に使ったのでは,手は消毒できませんと言っているようなものだ.
 この記事の読者各位におかれては,御家庭の玄関の靴箱の上にでも手動式のディスペンサーを置き,外出から帰宅したらすぐ花王の動画に示されている正しいやり方で手指を消毒されたい.自動式ディスペンサーはだめである.
 玄関での手指消毒は,玄関から洗面所までの動線上にあるものを汚染しないように取り合えず行うものである.それから洗面所に行き,石鹸と流水で入念に洗浄することをお勧めする.
 細菌とエンベロープ型ウイルス (コロナウイルス等) は,エタノールと界面活性剤で失活する点で消毒方法が似ていると考えられる.食品工場における細菌汚染の防止に関する経験上からすると,手指のアルコール消毒と石鹸洗浄の併用は大変に有効であると考える.

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