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2020年6月15日 (月)

嘘記事

 三年ほど前に小学館のマネー情報誌「マネーポスト」がネットに移行し,現在は大変なページビューを誇っているらしい.(《小学館「マネーポストWEB」、雑誌からウェブに完全移行で月間800万PV突破》) 
 そのマネーポストWEBに《年金生活70代女性の悩み「私も10万円給付金もらっていいの?」》[掲載日 2020年6月13日 16:00] という記事が載っている.長い記事なので抜粋引用する.
 
東京都下に住む74歳女性・Aさんだ。長く専業主婦生活をしており、今は夫婦で年金生活をしている。同年齢の夫は定年後も3年前まで仕事をしており、年間数百万円の収入があったという。
 マイホームのローンも終わっており、住むところには困らない。さらに貯金もある。年金があれば十分に生活できる状況で、夫婦合わせて20万円をもらうことに対しては“罪悪感”があるのだという
 
そんな最中に出てきた定額給付金だ。石橋を叩いて渡るような老後を過ごしてきたAさん夫婦も、最初は「20万円もらえる」と思って喜んだというが、すぐに「私たちは生活に困窮していないし、コロナの影響も受けていないよね」と思い至った。
 Aさん夫婦は「これからも様々な給付金の話が出てくるかもしれないけど、もし私たちが1人あたり10万円を辞退すれば、本当に困っている人に20万円を渡してもらえるのだろうか」と、結論の出ない話し合いを続けているという。》
《とはいっても、昭和20年、終戦の年に生まれたAさん夫婦の感覚からすれば「贅沢をするのは苦しんでいる人に申し訳ない」という思いもあり、申請書は手許に届いたものの、まだ申請するには至っていないようだ。
 かくして「一律10万円給付」は受給対象の人々に様々な逡巡をもたらしている。「もらえるものはもらっておこう」と考えるか、「もらえるけど、辞退すべきではないか」と考えるか、コロナで収入に影響を受けなかった年金生活者ならではの悩みがあるようだ。
 
 まず,ほとんどの自治体の十万円給付金の申請書には,チェック欄「受け取りを辞退する」があって,辞退する気のある人は簡単に辞退できるようになっている.(これはおそらく麻生大臣の意を受けて設けられたチェック欄である)
 そして給付を辞退しても《本当に困っている人に20万円を渡してもらえる 》ことにはならない.単に国庫からその20万円が出ていかないだけである.困っている人に渡す,という政府の初めの方針は,自民党幹事長と公明党の反対で潰れた経緯がある.野党もこれを要求した.この老人夫婦は,ひまなのにテレビニュースを全く見ていないのか.
 つまり,上の記事の夫婦が何を悩んでいるのか,全く不明なのである.
「本当に困っている人に」給付金を配布するという最初の内閣方針が,与党野党の一致で覆った以上,生活に余裕があって給付金を必要としない年金生活者は,困窮している人々へ自分で手配して寄付をせざるを得なくなった.そしてそのような人たちへの窓口として,寄付を望んでいる色々な支援団体は調べればすぐわかる.まさかスマホもPCも持ってないとかいうのじゃあるまいな.
 政府の支援が届かない人々はゴマンといる.そこでどうしたらよいかは,普通の人ならちょっと考えればすぐ思いつく.
 だから,上の記事の夫婦は実在しない.記者が想像で書いたものだ.
 七十も過ぎた老人たちであれば,まずは受け取って,その有効な使途を考えるはずだからである.寄付するもよし,自分で使って「経済を回す」のもよし.
 どうしたらよいか,そんなこともわからぬで逡巡する年寄りがいるとは思えぬ.全くリアリティがない.私自身が七十過ぎの年金生活者だから,そう断定する.
 給付金が,困窮度に無関係に一律十万円給付になってしまったとき,その際に「コロナ禍の影響を受けず,生活に困っていない厚生年金生活者にまで給付するのはおかしい」という議論が内閣周辺であった.確かにその通りなのである.
 だが与野党一致で「本当に困っている人に限定して給付する必要はない」となってしまった(*註) からには,世論は「いったん受け取って,それから寄付するか,使うか決めればよい」とのあたりで落ち着いたはずである.
 小学館だかなんだか知らぬが,《かくして「一律10万円給付」は受給対象の人々に様々な逡巡をもたらしている》などと,すぐばれる安易な嘘記事を書く奴には腹が立つ.
 
(*註)
 給付金が一律定額十万円になってしまったのは,創価学会が強硬に反対したためであると報道された.困っている人たちにばかり給付金が配布されるのは納得できない,自分は別に困っていないがお金は欲しいという創価学会員が多かったためであろう.まことにあさましい.

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