真・鶏釜めし
先日の記事《ミツカン「鶏釜めし」》[掲載日 2020年5月24日] で,ミツカンの「鶏釜めし」を買って作ってみたら,あまりにもチープ感あふれる貧相な商品だったので,これはもう買わないと書いた.
このミツカン「鶏釜めし」の原材料表示は以下の通りである.
* 鶏肉 (国産),しょうゆ (小麦・大豆を含む),砂糖,にんじん,こんにゃく,鶏脂,油揚げ (大豆を含む),アミノ酸液 (大豆を含む),食塩,なたね油,鶏がらだし/調味料 (アミノ酸等),増粘剤 (キサンタンガ ム),酸味料
この釜飯の素は,さすがに大手食品企業のレトルト製品だけあって,可及的に食品添加物の使用は抑えられている.その点はほめたいが,いかんせん具材が貧相すぎて,食べていて侘しくなる.「鶏釜めし」という商品名は羊頭狗肉だと言わざるを得ない.なんでこんなものをしみじみと食わにゃならんのだ,と食いながら思った.
さればというわけで,具材をたっぷり追加で入れてみたら,こんどは元々具材として入っている鶏肉の破片や油揚げの切れっ端がゴミみたいに見えて,まるで異物が混入した料理みたいになってしまった.
パッケージに米二合用の釜飯の素レトルトが二袋入って店頭価格三百円弱で,これは「安けりゃ喜ぶ消費者っているんだよね」というミツカンのポリシーかも知れないが,馬鹿にするなと言いたい.
マイナーな販売者の製品で二倍くらいの価格帯 (五百円前後) のものもあるのだが,得てして具は大目に入っているが食品添加物過剰で不味かったりするのが多い.(これはメーカーの技術力を反映している.ミツカンの製品はまずくはない)
ま,そんなわけでちゃんとした鶏飯 (奄美の郷土料理「けいはん」ではなく日本各地の「とりめし」) が食いたくなったので,ミツカンの手を借りずにきちんと作ってみた.
その前に一つ.Wikipedia【釜飯】に次の記述がある.
《釜飯 (かまめし) は、米に醤油、みりん等の調味料を加え、その上に椎茸、鶏肉などの具を載せ、一人用の釜で炊いた米飯料理である。一種の炊き込みご飯であるが、釜から飯碗によそうのではなく、釜のまま食卓に供することに特徴がある。釜の種類としては、写真にあるような羽釜式の鉄釜の他に、土鍋型の陶器の益子焼、高田焼もよく用いられる。大正12年 (1923年)、関東大震災あとの東京上野で行なわれた炊き出しをヒントに、のちの浅草の『釜めし 春』の女将が開発させた一人用の釜で、客に供した料理がはじまりとされる。》
なるほどね.たぶん一人用の釜なんてものは《『釜めし 春』の女将》の考案したものだろう.世に釜飯はあるが鍋飯がないのは,そういう理由があるからだ.
するとミツカンが,米二合用の分量をレトルト包装した調味料 (貧相な具材が申し訳程度に入っている) を「鶏釜めし」とネーミングしているのは大間違いであるということになる.しかも釜炊きではなく炊飯器用に商品設計されている.なぜ素直に「鶏めし」としなかったのか.きっと『「鶏釜めし」とすることで他社製品との差別化を図る』とか何とか会議で主張した お調子者が マーケティング担当がいたのであろう.食品会社ではよくある話だ.
[材料]
米 (無洗米推奨) 二合
鶏モモ肉 200グラム
ゴボウ (笹がき) 100グラム
白醤油 大さじ二杯
濃口醤油 大さじ一杯
[作り方]
* 鶏モモ肉は炊くと,驚くくらいに収縮するので,大きめに切る.皮も入れると飯粒に艶がでる.
* ゴボウは,笹がきにして水煮にしたものがポリ袋入りで売られているので,これを使うと便利.
ポリ袋に入っている水にはゴボウの香りが移っているので,これは捨てずに炊飯に使う.これに溶けている添加物はビタミンC (アスコルビン酸) だけなので,添加物嫌いの人でも心配無用.
コボウは100グラム入れると,下の写真ではわかりにくいが,たっぷり入っているという感じになる.ほのかなゴボウの香りが食欲をそそる.
* 鶏飯は色も塩加減も濃いめが普通かと思い,他の炊き込み御飯よりも多めにし,濃口醤油を併用した.濃口醤油を使うと,炊飯釜の内底に醤油の色が着き,オコゲみたいな色になる.オコゲじゃないけど.
[感想]
昔から鶏飯にはゴボウを使うものと決まっている.なぜだかわからないが,鶏つくねにもゴボウを入れる.
ゴボウの他にニンジンだとか油揚げだとかを入れて炊くと,一食の飯として何だかおもしろくないのが不思議だ.
昔々,東北を旅した折,盛岡で泊まった宿の夕食に,牛肉とゴボウの鍋が出た.野菜はゴボウのみ.
このゴボウの香りが実に鮮烈で,東北のゴボウは他所とは違うのだと知った.あれは肉の鍋ではなくゴボウを食う鍋であったのだなあと今でも記憶している.
| 固定リンク
最近のコメント