ソドムの人々
テレビのニュースとか情報番組を見ていると,渋谷のスクランブル交差点,銀座の交差点,有名な商店街の通路,新宿の歌舞伎町の入り口辺りなどの映像が流れる.そしてテレビ局のレポーターが「以前に比べると人通りがかなり少ないです」と言うのがお約束だ.
だが私の眼には,「うわ,かなりみんな出歩いてるなあ」としか見えない.
東京大学のチームが調査したところによると,現下の新型コロナウイルス感染に関心を持ち例の「三密」を避ける行動を取っている人は,全体の八割に過ぎない.あとの二割は,そもそも新型コロナウイルス禍に興味がないので,テレビやネットなどの情報にアクセスしないのである.
巣鴨や戸越の商店街で老女の二人連れにインタビューすると「コロナがこわいから,もうずっと閉じこもってるよ」と言う.閉じこもってねえじゃん,と私はテレビのこちら側でつっこむ.
夜更けの銀座で中年男二人連れにインタビューすると「(人が少なくて) まるで正月みたいだなあ,はは」と呑気に笑う.お正月はおまえの頭ん中だよと,私は一人つぶやく.
カメラは高級クラブ (私は一度も入ったことがないが) の中で,ママにインタビューする.「お客様はほんとに減ってしまって……半分に減ってしまいました」と言う.そのクラブ,たぶん学校の教室くらいの広さはある.それが半分もうまるくらい客がきているのだという.心底おどろいた.
下はNHKニュースウォッチ9 (4/2) のワンシーン.
この学生風の男は,ウイルスが遠くから自分の近くにやって来るというイメージで捉えているようだ.今からライブに行くのかも知れないが,そこにウイルスはいる.
下も同じ放送から.
最近,数人のヨーロッパの感染者がSNSで「あなたもかかるのよ」というメッセージを発している.上の画像の女性は,そういうコワイ情報はシャットアウトしてるのだろう.若者たちは,自分は当事者じゃないと本気で思っている.
ある日,アブラハムの許を訪れた主は言われた.「ソドムとゴモラの叫喚は大きく,またその罪は非常に重い.私はいまソドムに下って,私に届いた叫喚のとおりのことを彼らがおこなっているかどうかを見て知ろう」
主に従ってきた二人の御使いはそこから身を巡らしてソドムの方に行ったが,アブラハムはなお主の前に立ち,近寄って言った.
「まことにあなたは正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか.もしあの町に五十人の正しい者があっても,あなたはなおあの町を滅ぼし,その中にいる五十人の正しい者のためにこれを赦されないのですか.正しい者と悪い者とを一緒に殺すようなことを,あなたは決してなさらないでしょう.正しい者と悪い者とを同じようにすることも,あなたは決してなさらないでしょう。全地を裁く者は公義を行うべきではありませんか」
主は言われた.「もしソドムで町の中に五十人の正しい者があったら,その人々のためにソドムをすべて赦そう」
アブラハムは答えて言った.「私は塵あくたに過ぎませんが,敢て我が主に申します.もし五十人の正しい者のうち五人欠けたなら,その五人欠けたために町を全く滅ぼされますか」
主は言われた.「もしそこに四十五人いたら、滅ぼさぬであろう」
アブラハムは重ねて主に言った.「もしそこに四十人いたら」
主は言われた.「その四十人のために、滅ぼさぬだろう」
アブラハムは言った.「我が主よ,どうかお怒りにならぬよう.私は申します.もしそこに三十人いたら」
主は言われた.「そこに三十人いたら,滅ぼさぬだろう」
アブラハムは言った.「いま私は,敢て我が主に申します.もしそこに二十人いたら」
主は言われた.「私はその二十人のために滅ぼさないだろう」
アブラハムは言った.「我が主よ,どうかお怒りにならぬよう.私はいま一度申します.もしそこに十人いたら」
主は言われた.「私はその十人のために滅ぼさぬであろう」
主はアブラハムと語り終り,去って行かれた.アブラハムは自分の所に帰った.
二人の御使いは,その日の夕刻にソドムに着いた.しかし歓楽と悪徳の街に,密閉した空間に入らず,密集した人々に近寄らず,密接な間隔で会話をせず,そして手をよく洗う正しい人は,ロトの一家四人だけであった.
主は翌日,硫黄と火とを天から降らせ,これらの町と,すべての住民と,地に生えている物をことごとく滅ぼされた.
〈『聖書』(日本聖書協会,1955年) から「旧約聖書 〜創世記〜 」を脚色した〉
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