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2020年4月17日 (金)

東京武漢

 FNNプライムオンライン《緊急事態宣言 全国に拡大 5月6日まで》[掲載日 2020年4月17 1:20] から安倍首相の発言の一部を抜粋して引用する.
 
まず、北海道・茨城県・石川県・岐阜県・愛知県、および京都府の6道府県については、現在の対象区域である7都府県と同程度にまん延が進んでおり、これら以外の県においても、都市部からの人の移動等によりクラスターが各地で発生し、感染拡大の傾向がみられることから、地域の流行を抑制し、特にゴールデンウイークにおける人の移動を最小化する観点から、全都道府県を緊急事態措置の対象とすることといたしました。
 今後、ゴールデンウイークに向けて、全ての都道府県において、不要不急の帰省や旅行など、都道府県をまたいで人が移動することを、まん延防止の観点から、絶対に避けるよう、住民の方々に促していただくようお願いいたします。また、域内の観光施設等に人が集中するおそれがあるときは、施設に対して入場者の制限を求めるなど、適切な対応を取るようお願いします。》(引用文中の文字の着色は当ブログの筆者が行った)
 
 毎度のことだが,我らが首領様は海外の政治指導者とは異なり,国民に語りかけることはしない.昨日発出された,緊急事態宣言を全国に拡大するという「宣言」も,新たに指定された六道府県知事に向けた発せられたものだ.つまりこの宣言は,上の引用文中に赤い字で示したように,国民ではなく知事に,あれこれやってくれと「お願い」するだけである.自分は何もしない.いやそうではない.お願いのポーズをとりつつ,知事が何かしようとしたら,ブレーキをかけることはするのだ.
 
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4/17 NHK《おはよう日本》の画面を撮影した画像
 
 上の画像は緊急事態宣言が発出されたあと,全国の感染者数がどうだったかを示したものである.
 テレビ各局の報道番組は,宣言後の最初の週末,渋谷や新宿などの盛り場への人出は半分ほどに減ったが,しかし戸越銀座に代表される都内各所の商店街は,緊急事態宣言なんぞどこ吹く風とばかりに,押しかけた人々で大賑わいとなったことを伝えた.もちろん商店の多くは営業を自粛して閉まっているのだが,商店街の雑踏を歩いている人々は,特に買い物があってやってきたわけではないから,それでいいのである.彼らは家族連れで,気晴らしに商店街にやってきたのであった.
 報道によれば,都内の公園も家族連れで賑わっているという.私が見たニュースでは,とある公園にいた親子連れの父親が「家にいたら子どもはゲームばっかりして健康に悪いですからね」と言った.健康のためなら命も惜しくないのである.
 それはさておき,緊急事態宣言の発出をじりじりと待ちかねていた小池都知事が,発出後ただちに行動に移ろうとした時,西村大臣が制止した.新聞報道によれば,「小池の暴走にタガをはめろ」というのが,宣言発出の前に官邸から西村大臣に下っていたミッションだったという.
 そこで西村大臣は,首都圏の知事たちを相手にしたテレビ会議で「宣言の効果を確認するために二週間,様子を見る必要がある」と言った.これに驚愕したテレビや新聞などは,「二週間の様子見」発言を一斉に報道した.メディアは,ようやく国を挙げて緊急事態に立ち向かうスタートが切られるとばかり思っていたからである.まさか,何もせずに様子見とは……
 ところが官邸と西村大臣の思惑通りにはならなかった.
 官邸の最大の関心事は,感染爆発対策なんかでは全くなく,前回総選挙の際の「小池の乱」で完膚無きまでに潰したはずの小池都知事人気を,ここで復活させてはならない,ということだった.そこで都知事の動きを封じるために打ったのが「二週間の様子見」だったわけだが,これが裏目に出た.あまりにも稚拙な「小池潰し」だと国民の眼に映ったために,逆に小池人気が高まってしまったのである.(NEWSポストセブン《コロナ対策で首相より高評価の小池知事、「第二の乱」あるか》[2020年4月15日 16:05] ほか)
 この事態に慌てた官邸は,宣言前から「営業自粛はさせない」としていた美理容業界 (自民党の票田だそうである) は断固として守るかわりに,他の業種は都の決定に譲って,なんとか事態を収拾した.
 政府与党が平常心だったのはそこまでで,あとは糸の切れた凧のようになった.自信満々に首相が打ち出した「収入激減世帯に30万円給付」はあまりにも不評だった.手続きが複雑なために実際には給付されない「絵に描いた餅」だと思われたからである.
 ついでに書くと,厚労省が所管する制度の一つに「雇用調整助成金」がある.これは,企業が事業を縮小したり休業したりした場合,休ませた従業員には正規非正規を問わず,その従業員に賃金の六割以上を「休業手当」として支払うことが企業に義務付けられているのだが,その際に休業手当の一部を企業に助成するのが「雇用調整助成金」である.
 この雇用調整助成金制度を,首相は対策会議で大いに宣伝した.営業を自粛したために経営が困難になった事業者に対して,休業補償はしないが雇用調整助成金制度があるから,これを活用してくれといった.
 しかし知る人ぞ知ることだが,雇用調整助成金制度は「絵に描いた餅」の典型なのである.日本テレビNNN24《“解雇防ぐ”雇用調整助成金 決定2件のみ》[掲載日 2020年4月15 4:00] から下に引用する.
 
新型コロナウイルスの影響で企業や店舗の休業が増える中、厚生労働省は、従業員の解雇を防ぐために企業に支給する雇用調整助成金について、今月3日までに支給が決まったのは2件のみだったと発表しました。
企業が事業を縮小したり休業したりした場合、休ませた従業員には、正規、非正規問わず、その人の平均賃金の6割以上を「休業手当」として支払うことが企業に義務付けられていますが、その一部を企業に助成するのが「雇用調整助成金」です。
厚労省によりますと、この制度には、新型コロナウイルスの影響が出始めた2月から4月3日までに214件の申請があり、そのうち支給決定は2件のみ、残りは審査中だということです。
支給決定が遅れている理由について、厚労省は、相談や審査の体制が不十分だったことを認め、「申請書類の記載事項を減らすなど簡素化した。今後、審査の迅速化をはかりたい」としています。
 
 元々この制度は「お飾り」みたいなものだった.実際には使われないように複雑に設計されていた.平時はそれでもよかったのだが,コロナウイルス禍で「お飾り」であることがバレてしまったのである.《今後、審査の迅速化をはかりたい》と言っているが,信じる人は少ないだろう.
 また例の「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」だが,これまた実際には使われない (使わせない) ように設計された制度だ.公表されていないが,やがて実績はどうであったか公表されたら,国民は驚くであろう.
 
 上に述べたような画餅の制度を一つ一つ挙げていくとキリがないので話を元に戻す.
「収入激減世帯に30万円給付」は安倍首相周辺が発案して強行したものだが,連立与党の公明党は乗り気でなかった.しかし報道によれば,公明党が自民党に妥協して賛成したら,創価学会が「一律現金給付にしろ」と怒ったという.慌てた山口代表は恥も外聞もなく掌を返して官邸に乗り込み,「収入激減世帯に30万円給付」を破棄して「一律10万円給付」にしろと首相に迫った.さもなくば連立を解消するとまで言ったらしい.(時事通信《公明、「連立離脱」論で押し切る=官邸主導の政治手法に影―現金給付1人10万円》[掲載日 2020年4月17日 7:15])
 公明党の剣幕に動揺した安倍首相は「一律10万円給付」を呑んだのだが,それには何らかの名分が必要だった.そこで突如思いついたのが「緊急事態宣言の全国拡大」である.(下のスクリーンショットは時事通信《低姿勢で協力呼び掛け=安倍首相会見、にじむ危機感》[掲載日 2020年4月18日 7:35])
 そして全国化の理由として持ち出したのが最近の流行語「フェーズが変わった」である.
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 首相は記者会見で「給付が遅れているのは私の責任であります」と言った (4/17) が,別に責任を取る気はなく,「お詫びします」と一言述べただけであった.日本の社会では,お詫びすると言うだけでは,責任を取ることにはならないのだが.
 
 さて,首相が恥を忍んでお詫びして,事が進むかと思ったらそうはいかなかった.麻生大臣がさっそく「(給付金が欲しいと) 手を上げた人にだけ現金を配る」と言い出した.全員が給付金を受け取れぬように何らかのハードルを設けると記者会見で述べたのである.さらには現金でなく電子マネーにするという案が復活している.結局この給付金は,どうなるか先が不透明になってきた.公明党が首相に売った喧嘩は,たんに給付の時期を先延ばしにしただけになるかも知れない.
 このようなおカネをめぐるドタバタ劇が緊急事態宣言後に演じられて時間が空費され,おかげで,ウイルスの拡散を防ぐという緊急事態宣言の最大の目的が,どこかにいってしまった.
 
 四月末から始まる連休に首都圏から観光客が北海道に押し寄せる可能性が高い.そうなったら北海道は感染拡大が再燃する.そこで北海道の鈴木知事は緊急事態宣言の前から,発熱している感染者が新千歳等へのフライトに搭乗するのを羽田空港で阻止して欲しいと政府に要請していた.観光客が北海道に来てから倒れて入院 (既に実例が出ている) されては大変だから当然の要請であり,これは国の仕事のはずだが,政府は全く動こうとしない.首相が「旅行を避けてくださるようお願いする」と言うだけだ.
 このままでは,東京は春節前の武漢と同じである.たくさんの無思慮な感染者が各地に観光に出かけるだろう.そして連休が終わって二週間も経てば,北海道や九州や北陸で感染が拡大するだろう.それがわかっているのに,何も手を打たない政府に対する鈴木知事の切歯扼腕はいかばかりか.まことに暗い気持ちになる.

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