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2020年3月27日 (金)

緊急事態宣言の要件

 時事通信社JIJI.COMは《緊急事態宣言の要件「半分充足」 政府》[掲載日 2020年3月26日 20:19] で次の通り報道した.
 
岩松潤内閣参事官は26日、新型コロナウイルス感染症に関する野党の会合で、安倍晋三首相が緊急事態宣言を出す際に求められる2要件のうち、「国民の生命・健康に著しく重大な被害を与える恐れ」との要件は既に満たされているとの認識を示した。
 もう一つの要件である「全国的かつ急速なまん延により国民生活・経済に甚大な影響を及ぼす恐れ」に関しては、「学識経験者の意見を聞きながら考えていきたい」と述べた。
 
 上の記事にある《緊急事態宣言を出す際に求められる2要件 》とは次の二つをいう.
* 国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件
* 全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるものとして政令で定める要件
 これは,先般改正された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」において示された二つの要件である.
 上記の「政令で定める要件」の「政令」とは,「新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令」を指す.
 この施行令で「定める要件」は次のとおりである.
 
第六条
 法第三十二条第一項の新型インフルエンザ等についての政令で定める要件は、当該新型インフルエンザ等にかかった場合における肺炎、多臓器不全又は脳症その他厚生労働大臣が定める重篤である症例の発生頻度が、感染症法第六条第六項第一号に掲げるインフルエンザにかかった場合に比して相当程度高いと認められることとする。
2 法第三十二条第一項の新型インフルエンザ等緊急事態についての政令で定める要件は、次に掲げる場合のいずれかに該当することとする。
一 感染症法第十五条第一項又は第二項の規定による質問又は調査の結果、新型インフルエンザ等感染症の患者(当該患者であった者を含む。)、感染症法第六条第十項に規定する疑似症患者若しくは同条第十一項に規定する無症状病原体保有者(当該無症状病原体保有者であった者を含む。)、同条第九項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)の所見がある者(当該所見があった者を含む。)、新型インフルエンザ等にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者(新型インフルエンザ等にかかっていたと疑うに足りる正当な理由のある者を含む。)又は新型インフルエンザ等により死亡した者(新型インフルエンザ等により死亡したと疑われる者を含む。)が新型インフルエンザ等に感染し、又は感染したおそれがある経路が特定できない場合
二 前号に掲げる場合のほか、感染症法第十五条第一項又は第二項の規定による質問又は調査の結果、同号に規定する者が新型インフルエンザ等を公衆にまん延させるおそれがある行動をとっていた場合その他の新型インフルエンザ等の感染が拡大していると疑うに足りる正当な理由のある場合
 
 上の条文は少しわかりにくいが,改正前の特措法が制定される際に当時の有識者会議が行われ,そこに提出された資料があるので下に一部を示す.
 
20200327a
 
 これを踏まえて,冒頭に掲げた時事通信の報道を見てみる.
 岩松潤内閣参事官が《「国民の生命・健康に著しく重大な被害を与える恐れ」との要件は既に満たされている 》と述べたのは,法施行令に示されているように「新型コロナウイルス感染症の重篤である症例の発生頻度が季節性インフルエンザの場合よりも相当程度高い」と内閣は認識しているという意味である.
 もちろん緊急事態宣言が行われるには手続きが必要であるが,おそらく専門家会議も同じ認識である可能性が高い.
 
 ところが昨夜,NHKニュースウォッチ9で,東京都の感染症対策アドバイザーである濱田篤郎・東京医科大学教授は,岩松内閣参事官と真っ向から対立する見解を述べた.
 すなわち第二要件「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある」という要件はほぼ満たしているが,第一要件「国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある」は満たしていないと濱田教授は述べた.
 その理由として濱田教授は,特措法が2012年に制定された時,第一要件の「国民の生命及び健康に著しく重大な被害」は,スペイン風邪,あるいはSARSほどの被害を想定していたのだと述べた.日本の現状では,新型コロナウイルス感染症の致死率は1%程度であり (実は3%を超えているのだが,理由不明ながら番組中で濱田教授はそう語った),それほど重大な感染症ではないと語った.しかし,もしイタリアのような医療崩壊が起これば,致死率が高くなって第一要件を満たすかも知れないが,とも述べた.
 
 明らかに濱田教授は,小池都知事の危機感を否定している.記者会見の報道を見れば明らかなように,小池知事は,東京で感染爆発が起きる前に,特措法に基づく緊急事態を首相に宣言してもらい,イベント自粛要請等に法的根拠を得て,効果的な対策を打ちたいのである.つまり知事の意図は,感染爆発の防止である.
 だが濱田教授は,施行令に書かれていない「致死率がSARS並み」という条件を持ち出して,感染爆発が発生して医療崩壊が起きてからでないと,都の対策に法的根拠を与えることはできないと明言したのである.
 濱田教授は,テレビ番組で屡々まるで危機感のない発言を行ってきた.欧米の惨状が毎日のように報道されている現状下,新型コロナウイルス感染症はそれほど危険な感染症ではないと語るこの人物が,都のアドバイザーでいいのだろうか.












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