悪毒王
このブログの記事を書く時に,専門用語の調査と理解に私はそこそこの時間をかけている.
別稿で「スーパースプレッダー」という言葉を用いた時,ウェブの検索結果の中に「悪毒王」というのが出てきた.「スーパースプレッダー」を中国語で「毒王」というから,その類語としてヒットしたのだと思われる.
悪毒王の話はおよそ次のようなこと.
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釈迦入滅前の時代,インドに悪毒王という王がいた.悪毒王は戒律を守らず.仏法僧を誹謗し,因果も信ぜずに悪を尽くした.
このままでは悪毒王が地獄に堕ちることを悲しんだ釈尊は,一計を案じた.
釈尊は弟子の迦葉,舎利弗,目連を召して,彼らに「悪毒王は何を好むか」と問うた.すると彼らは「悪毒王は牛を好みます」と答えた.
そこで釈尊は「迦葉が牛主に,目連が牛飼いに,舎利弗が牛になって悪毒王を訪ねなさい」と言った.
彼らは悪毒王の元へ行き,鶏賓国より牛を連れて献上に来たと奏上したところ,大層立派な牛だったので,王は大いに喜んだ.
王は三人に褒美を授けようとしたが,牛主の迦葉は辞退し,かつ「この牛は飼うのが難しいので,私達が面倒をみましょう.王廷内にとどまって王にお仕えいたします」と言った.
王はますます喜んで新しく牛舎を造り,その牛を飼うことにした.
次いで王は迦葉に「牛主の名はなんというか」と訊ねた.迦葉は「妙法と申します」と答えた.「では牛飼いは」「蓮華と申します」「牛の名はなんという」「経と申します」
王はその後,この牛を見たい時にはいつも「妙法と蓮華,経をここへ率いてまいれ」と言った.
ほどなくして悪毒王は死んで地獄に堕ちた.
地獄の獄卒が閻魔大王の前に悪毒王を引きずりだすと,閻魔は「この者は善人である」と言った.
獄卒が「この男はいささかの善根もなく,民を苦しめました.また食,財,色,名誉,睡眠の欲に耽りました.さらには貪り,怒り,無知の心が甚だしい悪人です.どうして罰を蒙らないことがあるでしょうか」と言うと,閻魔はこう言った.
「この者は,牛に執着したがために身口意の三つの業を正しくすることはできなかった.しかしいつも妙法蓮華経と唱えていたから,これが善根となり,よって悪道に堕ちることはない.妙法蓮華経を唱えた縁により再び娑婆に帰ってまことの法華経の修行者となり,仏果を成就するであろう」
悪毒王は死後七日目に蘇生し,ただちに釈尊の許に詣り,罪業を懺悔したという.
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妙法,蓮華,経.早口言葉で妙法蓮華経,妙法蓮華経.一休さんの頓智噺のようである.よかったよかった.
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