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2020年3月15日 (日)

愚かな老人たち

 朝日新聞は《女子大教授がエジプト旅行で感染 卒業式中止で学長憤り》(掲載日 2020年3月14日 23:04) を報じた.
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 このスクリーンショットに続くのは《業式を心待ちにしていたのに」と怒りをあらわにした 》である.
 この件の第一報のあとネット上には,問題の女性が教員ではなく職員だとする誤報が多数書かれたが,実は上の朝日の記事のように教員,しかも七十代の教授であることが大学側から発表された.(3/17現在,まだこの女性の氏名は特定されていない)
 この女性教授は2月21日~3月1日にかけてエジプトをツアーで訪れ,ナイル川でクルーズ船を利用した.(エジプトのツアーで感染した高齢者が他にも多いところをみるとエジプトは人気観光地であるらしい)
 教授は帰宅後に下痢や咳,発熱などの典型的症状を発症して13日に帰国者・接触者相談センターに相談したところ,14日に陽性が判明して入院した.
 学長が記者会見で怒りを顕わにしたのは,この教授が大学に無断でツアーに参加したからである.
 おそらく卒業式を控えた大事な時に,コロナウイルス感染リスクが高い海外旅行は慎むようにとの指示が,学長から内々にあったのであろう.だが女性教授は無視した.
 哀しいかな高齢者は前頭葉が小学生並みにまで衰え,強い自制力も脳の論理的思考力も若い頃に比較して急速に衰えるため,自分はウイルスに感染しないという根拠のない自信を持つにいたる.だから,行くなと言われると,黙って行っちゃえばわかんないわ,という方向に考える.まるで駄々っ子だが,一部の高齢者は小学生並みの前頭葉しか持っていないのである.前頭葉が小学生の大学教授というのが悲しい.
 根拠のない自信とは,よく知られているが,正常性バイアスと呼ばれるものだ.Wikipedia【正常性バイアス】から下に引用する.
 
正常性バイアスとは、認知バイアスの一種。社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。
自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる。「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う。
 
 高齢者の正常性バイアスは,高齢社会が孕む大きなリスクである.リスクが現実化した災厄の被害者は若い人たちだ.
 昨年四月に東京池袋で,旧通産省工業技術院長の飯塚幸三が乗用車を暴走させ,母子がはねられ死亡した事故は若い人たちの強い怒りを買った.
 現場検証に立ち会った飯塚幸三は両手に杖を持ち,虚ろな眼をしてよぼよぼと歩いていた.杖なしでは歩けぬ.それほどに衰えた脚でも「自分は事故は起こさない」と信じていたと思われる.
 飯塚の虚ろな眼差しは,まるで《自分にとって都合の悪い情報を無視 》しているようだった.自分が犯した罪を自覚することも,悔いることもなく飯塚は生きて行くだろうと私は思った.

 郡山女子大学のサイトに次の文章が掲載されている.
 
3月15日から学内の除菌・消毒作業と、濃厚接触者の健康観察等を進めています。そのため3月末まで大学を閉鎖することになりました。3月18日の卒業式を実施できないのは、本当に辛く悲しいことです。新型コロナウイルスという脅威によるとはいえ、たった一人の不注意な行動が、多くの方々に迷惑をかけてしまいました。特に卒業予定のみなさんには、誠に申し訳ありません。
卒業証書・学位記と免許・資格取得証明書等は、ひとりひとり丁寧に郵送致します。卒業するみなさんが、きちんと勉強し、充実した学生生活を送ったことがそれで証明されます。胸を張って、次のステージにお進みください。そして、新型コロナウイルスが落ち着いた頃、先生や後輩に会いにまた来校してください。
 
 これはおそらく学長がしたためたお詫びの言葉であろう.たった一人の歳甲斐のない不心得者のために,卒業生たちの大切な思い出は奪われた.胸を張って次のステージに進んでくださいという言葉に,学長の無念が窺われる.
 女性教授の症状は安定しているという.病室でこの愚か者は今何を思っているか.
 想像だが《自分にとって都合の悪い情報を無視 》しているのではなかろうか.過ちを悔いるほどの理性はもう持ち合わせていないと私は思う.
 
 郡山女子大教授の他に,エジプトのナイル川クルーズに参加し,帰国して発症した者たちは多い.NHKの報道によれば,本人たちと家族,濃厚接触者を合わせて二十六人に達する.(3/16現在)
 ちなみにナイル川クルーズを行程に含むエジプト・ツアーで,催行を中止したのはJTB.
 大手の旅行代理店ではクラブツーリズム (『エジプトエアー復路直行便利用(カイロ~成田間)ナイル川クルーズとエジプト満喫8日間』) も阪急交通社 (『2019年新造船「メイフラワー」で巡る!感動のゆったりエジプト・ナイル川クルーズ10日間』) も催行を強行する.
 中小旅行代理店も,コロナウイルス禍なんぞどこ吹く風で催行決行.(3/17現在)
「自分は大丈夫,感染しない」と根拠なく自信満々の愚かな高齢者たちが,何十人もナイル川クルーズを楽しみ,そして帰国して新たな感染者クラスターを形成する.この有様を見て,私は老人の一人として若者にまことに申し訳なく思う.それにしても総理は,こういう時に特措法を発動し,ツアーの解散を命令せずにどうする.そのための特措法だろうが.

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