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2020年2月27日 (木)

白糸の滝

 Wikipedia【コンニャク】には次の記述がある.
 
しらたき・糸こんにゃく
関東では材料を細い穴から押し出してから凝固させて作る細い糸状のこんにゃくを「しらたき(白滝)」と呼んでいた。これに対して、関西では板こんにゃくを細く切って糸状にした物を糸こんにゃくと呼んでおり、製法の違いもあって両者は別物と言われていたが、現在は糸こんにゃくも細い穴を通す製法になったために両者を区別する方法はなくなったとされる。このように細い糸状のこんにゃくを、主に関東地方ではしらたき、関西地方では糸こんにゃくと呼んでいる。なお、近年は東西問わず、白い「しらたき」や、おでん用に機械で巻かれた(結ばれた)ものが普及しているため、白いものを「しらたき」、こんにゃく色のものを「糸こんにゃく」と呼ぶことが一般的である。》(引用文中の文字の着色は当ブログの筆者が行った)
 
「こんにゃく色」ってなんだよ.w
 昔は,コンニャクは生のコンニャク芋を摺り下ろして作ったのであるが,この方法では,大雑把に作ると芋の皮が混入するので,出来上がりの色が暗灰色になる.農家が自家用に作るコンニャクがこれである.しかし売り物にするために丁寧に皮を剥いて作ると,摺り下ろした芋は白くなる.これを細い穴から押し出して凝固させたものが「しらたき」であった.従って「しらたき」は元から白い色をしていたのである.Wikipediaは《白い「しらたき」が普及している 》と書いているが,これを書いたやつは物事を知らぬとみえる.そもそも「しらたき」は,色が白いから全国各地の白糸の滝に見立てて「白滝」と呼んだのである.
 近代になってコンニャク製造が家内工業からもう少し食品工業として発達すると,原料にコンニャク粉 (精粉;精製マンナン) を用いるようになった.コンニャク粉は白いので,「しらたき」はこの製法で作っても問題ないのだが,板コンニャクは困る.コンニャク粉で作った白い板コンニャクは,昔ながらの暗灰色のコンニャクと全くイメージが異なるため,消費者に著しく不評だった.
 そこでコンニャク製造業者は,コンニャクを凝固させる際にヒジキの粉を加えて,板コンニャクを暗灰色にした.これが現在も作られている板コンニャクである.余談だが,白いコンニャクや,凝固させるときにアオノリやアオサの粉末などを加えて着色してスライスしたものは「刺身コンニャク」呼ばれている.
 ヒジキで着色してから普通の「しらたき」と同じように細い糸状 (冷麦くらいの太さ) にしたものもあるが,これは「しらたき」と呼ぶわけにはいかないので「糸コンニャク」という.しかしこれはあまり普及しなかった.糸コンニャクには,トコロテンくらいの太さのものもあり,これも「糸コンニャク」と呼ばれていて,こちらは店頭にあることが多い.
 
 さて色々と無駄知識を披露したが,話は白くて細い糸状の「しらたき」のことだ.
「しらたき」は主菜の材料にはなりにくい.料理本でもテレビの料理番組でも.必ず副菜の材料として扱われる.そんな副菜のレシピを,いくつかのレシピサイトから拾って,「しらたき」の下拵えのところを抜き書きしてみる.以下の引用文中の文字の着色は,当ブログの筆者が行った.
 
〈オレンジページnet〉
* しらたきとにんじんのいり煮
鍋にしらたきをほぐして入れ、かぶるくらいの水を加え、中火で6~7分ゆで、水にとって臭みを抜く。水けを絞り、食べやすいざく切りにする。にんじんは皮をむいて長さ4cmの細切りにする。
* しらたきチャンプルー
しらたきは食べやすい長さに切る。鍋に湯を沸かし、しらたきを入れて3~4分ゆでる。ざるに上げて水で洗い、水けをきる。玉ねぎは縦に幅7~8mmに切る。にらは長さ5cmに切る。
* しらたきの明太子煮
しらたきは袋の水をきり、水からゆでる。沸騰後2~3分したら水にとり、ざっと洗ってざく切りにする。しし唐辛子は細切りにする。
 
〈クックパッド〉
* ヘルシーしらたきと小松菜としめじの炒め物
ザルにしらたきを入れ、臭いがなくなるまで洗って、水分をきり、カットし、フライパンに移し、火にかける
* 手軽な和のおかず 白滝とネギの金平風
シラタキは5cm程度の長さになるように切る。熱湯で2〜3分茹で、ザルにあげて水気をきっておく。
 
〈クラシル〉
* 簡単ヘルシー!しらたきのピリ辛炒め
しらたきを食べやすい長さにカットします。
 
〈レタスクラブニュース〉
* しらたきフォー
三つ葉は3~4cm長さに切る。しらたきはざく切りにし、熱湯でさっとゆでてざるにあける。スープの材料のにんにくは包丁の腹で潰す。
 
〈キッコーマン「ホームクッキング」〉
* さやいんげんとしらたき、豚肉の煮物
しらたきは熱湯で1~2分ゆでて水気をきり、食べやすく切る
 
〈味の素「レシピ大百科」〉
* 糸こんにゃくのきんぴら
しらたきは塩もみしてくさみを取ってから洗い流し、食べやすい長さに切る
(余談だが,このレシピはたぶん社員が書いたものだ.タイトルには「糸こんにゃく」としておきながら本文には「しらたき」としている.こういういい加減なところがいかにも味の素という会社らしい)
 
 以上に御覧の通り,「しらたき」は料理するときに必ず「食べやすい長さに」切ってから使う.言い換えれば,「しらたき」は,わざわざ「食べにくい長さ」に製造されている.
 私が生まれるはるか前のことだから「いつ」とは明記できないが,たぶんコンニャク製造が食品中小企業として成立して以来ずっと「しらたき」は「食べにくい長さ」に製造されてきたのである.
 私見では,「しらたき」の適切な長さは5~10cmくらいであるが,「しらたき」を袋から取り出して決まった長さに切り揃えるのは至難のわざである.
 必ず,短いものと長いものが混在してしまう.
 ざく切りにしようものなら,5mmとか1cmとか,クズみたいなものができてしまう.
 このことは,料理する者であればみんな知っているのであるが,それでもなぜかコンニャク製造会社は「しらたき」をわざと無駄に長くしているのである.
 私はこのことを,我が国の食品産業における最大の謎というか,食品会社の怠慢として指摘しておきたい.
「十センチしらたき」とか「ざく切りしらたき」をなぜ作ろうと思わないのか.なぜ消費者の声に耳を傾けてユーザー・フレンドリーの商品を開発しようとしないのか.
 まことにもって不思議でならぬのであります.おわり.

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