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2020年2月 5日 (水)

忙中閑

 私はもうすぐ齢七十の年寄なので朝が早い.多くの早起き老人がそうであるように,私もラジオのリスナーだ.そうして,朝は清々しいお話がよろしいと思うので,昔から『心のともしび』を聴いている.そうそう,この番組は,昔は河内桃子さんの朗読だったが,今の坪井木の実さんに交代してから,もう二十年以上経ったのだなあ.
 ところで今朝,坪井さんが原稿の「忙中閑あり」を「忙中閑 あり」と読んだので驚いた.私はこれを「忙中 閑あり」だと承知していたからである.(字間のスペースは,わずかに間をあけて発音したことの表現)
 もしかしたら中国の古典に「忙中閑」という熟語があるのかも知れない.そう思って調べたが,遂に見つけることはできなかった.
 そこで調べの方向を変えて,出典を探した.漢籍に「忙中に閑あり」と読み下す成句があるのかも知れないと考えたからである.
 ところが,これも外れた.
 実は「忙中閑」は,昭和の黒幕と呼ばれた安岡正篤の造語だったのである.安岡は成句と造語を合わせて六つの座右の銘を「六中観」と名付けた.その一つが「忙中閑」なのであった.従って「忙中閑あり」も「忙中に閑あり」も,いずれも「忙中閑」から派生したものであるから,読みはどっちでもよいということになる.また「忙中の閑」と文中に用いても構わぬだろう.さらには「忙中閑」だけでもよいかも知れない.
 
 さて,坪井木の実さんのおかげで一つ知識を得た.早起きは三文の得である.
 

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