« トグル入力 | トップページ | マスク難民 »

2020年2月26日 (水)

何度見ても泣く

 昔,雑誌『広告批評』の主催者だった天野祐吉さんは,朝日新聞紙上のコラムで,心温まる企業広告を取り上げては,温かい視線で批評を書いていた.
 
 その当時から,日本の伝統的食文化の大切な部分である食事エチケットの一つ,つまり「汚らしい音を立ててものをたべてはいけない」に公然と歯向かうテレビCMを連発していたのが永谷園だった.
 昨今はこれに味の素が同調するようになったのは残念だ.
 私は長年勤務した会社が味の素に吸収されてしまった関係で,味の素社に知り合いが多い.その中に,知り合いというよりも親会社風を吹かす若造がいて,こいつが無知蒙昧だった.自分の会社のCMの歴史を全く知らないのである.
 その男がある日,「美空ひばりなんてオヤジ世代の歌は聞く気が起きない」といった.
 食品会社のCMは数々あるが,美空ひばりの『愛燦燦』は,企業広告の最高傑作のひとつだと思う.しかしこれがCM曲だったことは,現在の味の素の軽薄下品なイメージとあまりにも異なるので,若い人は聞いたら驚くだろう.それどころか当の味の素の社員が,『愛燦燦』誕生のいきさつを知らないことが多い.知っていれば「聞く気が起きない」などと言わぬだろう.
『愛燦燦』は,あの美空ひばりが生涯にただ一度だけ歌ったCMソングであった.言い換えれば,かつて味の素は,そういう広告を打てるほどの会社であったのだ.
 
 この二社のCMに比較すると,この数年のマルコメの広告宣伝は,食品会社としての格が数段上じゃないかと思わされる出来である.
 特に先月から放映されている「料亭の味 液みそ いつまでも一緒に篇」は,もし天野祐吉さんが生きていたら絶賛しただろう.
 最初にこれを観たとき,不意打ちされたかのように私は涙ぐんだ.そのあとも何度か観て,その度に涙ぐんでいる.
 まことに食事というものは,「いただきます」と「ごちそうさま」だけでは足りない.そして料理するということは,私たちが一人ではないという証なのだろう.



|

« トグル入力 | トップページ | マスク難民 »

新・雑事雑感」カテゴリの記事