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2019年12月31日 (火)

大晦日に世迷言を書く女

 All About に冠婚葬祭ガイドを自称する中山みゆきという人がおもしろいことを書いている.《正月三が日にやってはいけない6つのタブー》(掲載 2019/12/31 22:05) (2022年12月現在の駐記;既にリンク切れになっている) である.
 彼女は「正月の三ヶ日に縁起をかついでやってはいけないこと」として次の六つをタブーとして列挙している.
1:掃除をしてはいけない
2:刃物を使ってはいけない
3:火を使う煮焚きをしてはいけない
4:四足(よつあし)歩行の動物の肉を食べてはいけない
5:ケンカをしてはならない
6:お金を使ってはいけない
 
 この人は「いつ頃存在したタブー」であったかを書いていないが,群馬県で戦後に生まれた私が物心ついて以来,上記の六禁忌のうちで一度は耳にした正月三ヶ日の禁忌は,掃除をしないこと,獣肉を食べないこと,の二つである.刃物を使うな,火を使う煮炊きをするな,喧嘩をするな,お金をつかうな,は初耳だ.
 おそらく室町末期に,餅を入れた雑煮を正月三ヶ日に食べる食習慣が成立し,現在にいたる.家訓として餅を食べない一族がわずかに存在するので,そのようなレアケースを除けば,未だかつて一般的に「正月三ヶ日に煮炊きをするな」が禁忌だったことはないと思われる.加熱せずに餅を雑煮にすることはできないからである.
 また,全国ほとんどの地方で,雑煮に餅以外の食材を入れる.菜っ葉や芋,根菜などを雑煮に入れるには刃物を使わざるをえない.ただし小豆と餅だけで雑煮にする地方はあるから,包丁を使わずに雑煮を拵える例外はあるかも知れないが.
 
 喧嘩をするな,お金をつかうな,はどこの地方の習慣だったのだろう.上記の中山みゆき氏の説以外にも,正月の禁忌についてあれこれ蘊蓄を垂れ流しているたくさんの者がいる.しかしいずれも,その禁忌が,どの地方でいつ成立したものかについて,全く触れていない.これは頭が悪いとしか言いようがない.

[2022年12月31日の追記]
 このブログ記事の冒頭に紹介した「正月三ヶ日にやってはいけない六つのタブー」は,その後コピペされて広く拡散し,検索するとたくさんヒットする.これは世の中に「バカがついた嘘をそのままコピペするバカ」如何に多いかを示している.

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