塩がうま過ぎて
NEWSポストセブンの記事《朝の定番「ご飯、味噌汁、焼き魚」 夕食にした方がベターか 》(掲載日時 2019年12月6日 16:00) を読んで,そうなんだよなーと思った.塩分過剰摂取のことだ.
ただし,記事の内容には承服しがたいところがいくつもある.例えばこれ.
《「ご飯、味噌汁、焼き魚」は和食の定番だが、気になるのは塩分だ。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子氏は時間栄養学の観点から「朝食よりも夕食のほうがよい」と指摘する。
「朝は、塩分を排泄する腎臓の働きが活発ではなく、味噌汁や焼き魚などの高い塩分が体に蓄積されやすい。腎機能は午後6時過ぎから活発になるので、塩分の多いメニューは朝より夕方に向いている」》
たぶん,望月氏は,上のことを根拠もなく言っている.栄養に関する「健全な常識」から見て,塩分の多いメニューは夕方に食べましょう,なんてのは小手先の話に過ぎない.一日の塩分摂取量の絶対値を減らすのが,日本的食生活を改善するための,まっとうな方法である.
その観点からすると,やめたほうがいいお菜の代表格は塩鮭だ.悪魔的にうまいけどね.鮮魚店やスーパーで売られている塩鮭の切り身は,「甘口」でも塩気が強いと私は思う.買ってきた生鮭をそのまま焼いて,醤油を少し垂らして食べるのがいい.それで充分にうまい.
塩鮭の次に,納豆も塩の摂り過ぎになりやすい食べ物だ.
普通の納豆は,発泡スチロールの容器に入れて売られているが,ほとんどの商品には中に「納豆のタレ」が同梱されている.
昔々は,納豆にあんなものは入っていなかった.自分ちの醤油と,カラシや青海苔,あるいはネギを入れて調味したものだ.
納豆の大手メーカーの人に聞いた話だが,あのタレを入れるようになったのは,某スーパーの圧力によるものだ.
まず最初にスーパーから値下げ圧力がかかった.それに抵抗したら,じゃあ付加価値をつけろ,と強引に押し切られてタレを付けたのだという.その次にカラシを付録に付けさせられた.いわゆるバイイング・パワーというやつだ.
私の考えだが,納豆好きの人は,あのタレは不要だと思っているんじゃないか.あの小袋入りのタレは,すごく塩っぱいのだ.同梱のタレを使う場合は,私は半分の量で充分だし,小袋のフチをちょっと破り取るのがめんどくさい.卓上に備えてある普段使いの醤油を少し垂らせばそんな手間はいらないし,あまり感心しない原材料 (脚註) を使っている納豆のタレより,鮮度保持のために改良された容器に入っているまともな製法の醤油のほうが断然うまい.
塩鮭,納豆の次に塩分御三家といえば味噌汁だ.特に最近はやりのフリーズドライのインスタント味噌汁.同じインスタントでも粉末タイプは,一杯分を椀に入れる際の量の調節が容易だ.しかしフリーズドライ品は必要量を割って椀に入れるのが難しい.勢い,一杯分を丸ごと使うことになる.で,塩分摂りすぎになる.
歳を取ると,どうしても血圧が上昇する.私は今,収縮期血圧が130mmHgを少し上回り,拡張期血圧が80ちょっとだ.この年齢としては普通かと思うが,五年前に心臓バイパス出術をした身としては,これ以上の血圧にはなりたくない.それを考えると,味噌汁は即席製品でなく,減塩を心がけつつ,鍋に湯を沸かして具を煮るところから自分で拵えるのがよろしいと思い,実践している.
炊き立ての白飯に塩鮭と納豆と味噌汁くらい年寄りに毒な朝飯はない.しかしたとえ毒であっても,世にこれ以上うまいものはないと言いたい.ならば少しでも塩を減らそうと自戒している.
[脚註]
* 納豆のタレの原材料例;たん白加水分解物,異性化液糖,醤油,食塩,砂糖,醸造酢,かつお節エキス,昆布エキス,酒精,調味料 (アミノ酸等),ビタミンB1
* 納豆そのものの原材料は,大豆と納豆菌だけだ.これほどシンプルな加工食品はないのに栄養的な価値は高く,しかも冷蔵すれば納豆菌の力で保存性は非常に高い.それなのに何が悲しくて,加水分解物や異性化液糖や,日持ち性向上のために「調味料(アミノ酸等)」や「ビタミンB1」をぶちこんで食わにゃならんのか.
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