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2019年11月17日 (日)

時の娘 (補遺)

 昨日の記事《時の娘》に,リチャード三世の肖像画を掲載した.この肖像画にはちょっと説明が要るので,下に再掲する.
 
King_richard_iii
(リチャード三世の肖像;パブリックドメイン,King Richard III.jpg from Wikimedia Commons )
 
 この画像はWikimedia Commonsから引用したものだが,肖像画そのものはロンドンのNational Portrait Galleryに所蔵されている.
 実はリチャード三世の肖像画は複数あって,《白い猪亭 真実のリチャードを探して リチャード三世の肖像 1 》 が大変参考になる.

 このウェブページに掲載されている四作品の所蔵機関を列記すると,以下の通り.上に掲げた画像は(3)である.
(1) ロンドン考古協会 (ロンドン古物学協会);The Society of Antiquaries of London
(2) イギリス王室コレクション;The Royal Collection
(3) ナショナル・ポートレート・ギャラリー
National Portrait Gallery
(4) 同上
 
 しかし上記の(1)~(4)がリチャード三世肖像画の全部ではない.中野京子『名画の謎 陰謀の歴史篇』のp.22にも,作者不詳で個人蔵の作品が掲載されている.これを(5)とする.
 上記の(2),(3)と(5)は大変よく似ている.(5)が描かれたのは十五世紀で,(2),(3)は十六世紀だから(5)の模写かも知れない.
 この三枚の肖像画は絵の上部に描かれている装飾が異なっているので,ウェブや印刷物の小さな画像で観ても識別が容易である.(3)の装飾はツル草模様だが,(2),(5)はフレーム状の模様であり,そのフレーム模様が少し異なっている.
 さて,冒頭に《この肖像画にはちょっと説明が要る 》と書いたのは,Amazonの『名画の謎 陰謀の歴史篇』のレビューに,次の文章が掲載されているからである.
 
20191117a
 
 この「殿堂入りNO1レビュアー ベスト500レビュアー」という立派な肩書をお持ちの yukkie_cerveza 氏は,National Portrait Gallery の肖像画(3)と,『名画の謎 陰謀の歴史篇』に掲載されている肖像画(5)を混同している.リチャード三世の肖像画は複数あることを知らないのだ.しかし仮にそのことを知らなかったとしても,肖像画の画像をちゃんと観れば(3)と(5)が異なるのは一目瞭然なのだから,リチャード三世の肖像画は複数あるんだと気が付かなければいけない.しかるに氏は《この本では「個人蔵」と表記されているリチャード三世の肖像画を、私は『時の娘』を読んでからロンドンのNational Portrait Galleryで確かに見ました。なぜ「個人蔵」となっているのでしょうか? 》と書いているが,これじゃまるで中野先生が間違ったことを書いたような言いがかりである.こんないい加減なレビューを書く前に,ちょっと調べれば恥をかかずに済むし,ネット上に誤情報を拡散せずに済むのに,情けない.Amazonの称号持ちレビュアーの書評なんて,この程度のものだとよくわかる例だ.

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