« 時の娘 (補遺) | トップページ | 名画の謎 陰謀の歴史篇 /工事中 »

2019年11月19日 (火)

マイナンバーカード普及に小手先の施策

 共同通信が昨日報道した《政府、新ポイントに2500億円 五輪後、番号カードで25%還元》(2019年11月19日 18:31) によれば,政府はマイナンバー(個人番号)カードを用いるポイント還元事業の全容を固めた.
 
2020年9月から21年3月までの7カ月間で、最大2万円までのキャッシュレス決済の利用や入金につき、25%に当たる5千円分のポイントを付与する。20年度当初予算案に関連費用約2500億円を計上する方向で調整している。
 
 これは現在実施中のポイント還元事業に続く施策であるが,その意図は,ほとんど普及していないマイナンバーカードをなんとかしたいということである.各種報道によれば,マイナンバーカードの普及率は僅か14%ほどであるらしい.このままでは多額の費用を注ぎ込んだ挙句に野垂れ死んだ住民基本台帳カードの二の舞となる可能性が高く,もしこの制度が実効性を獲得できなければ,農家や一部の商工業者など富裕層国民の収入を正確に把握したい (=課税所得を捕捉したい) という行政当局の悲願は遠のくことになる.(資料参照 Wikipedia【クロヨン】)
 だが,このポイント還元事業による五千円程度の「飴」に釣られてマイナンバーカードを取得するのは,富裕層ではなく低所得者層であると思われる.
 富裕層の課税所得を捕捉したいのなら,現在検討中としている「金融機関口座との紐付け義務化」をすれば済むことだ.それをしないのは,政府のアリバイ作りに過ぎない.
 
 私がマイナンバーカードを取得する際に,役所の窓口で「このカードは重要な個人情報だから,やたらに持ち歩かないほうがいいですよね?」と訊ねたら,そうですとの答えだった.それほど多額でもない買い物に,マイナンバーカードを提示させようというのは,紛失事故の原因になるだけだと思われる.
 
 さて実は,半年前にもマイナンバーカードについて記事を書いた.それをリンクではなく,下に全文引用しておく.
--------------------------------------------------  

2019年5月18日 (土)
昼めし旅
 
 今年の二月だったと思うが,ネット上のニュースで「これまで確定申告にはマイナンバー通知カードを提示すればよかったが,マイナンバーカードの普及を促進するために,来年の確定申告から,マイナンバー通知カードではなく,マイナンバーカードを提示することが必要との方向で政府は検討を進めている」との報道がなされた.
 今その情報ソースを探しているのだが,見つからない.記録しておけばよかったと反省している.
 というのは,私はこれまで確定申告の際に,通知カードの提示で済ませてきたのだが,「いよいよマイナンバーカードを作らねばいけないのか」と観念して,カード取得を申請したのである.
 ところがその後,一向にその続報がない.これは国民をミスリードするためのガセネタだった可能性が高い.つい先日 (5/10),「デジタルファースト法案」が衆院本会議で与党などの賛成多数で可決され参院に送付されたが,むしろ調べてみると,マイナンバーカードは今後も普及しないだろうとするレポートがぽつぽつ現れている.
 現在,マイナンバーカード普及率は今年の三月で,わずかに12.8%に過ぎない.普及が望めないとして既に廃止され,新規発行が停止された住基カードと同レベルの普及率である.これでは何のためにシステム開発に巨費を投じたかわからぬ事態になっている.そこで東京新聞は,マイナンバーカード制度が行き詰まる可能性もあると指摘している.
 
マイナンバーカード普及率12.8%止まり 来年から更新時期 》(2019年3月18日 東京新聞朝刊)
 
 この記事に次のことが書かれている.
 
昨年秋の内閣府の世論調査では、53・0%が「カードを取得する予定がない」と回答。うち26・9%が取得しない理由を「個人情報の漏えいが心配」と答えており、不信感は根強い。
 
 この引用文中の《個人情報の漏えいが心配 》とあるのは言葉のアヤで,ここで言う個人情報とは収入と金融資産のことである.マイナンバーカードを持ちたくないとする国民は,マイナンバーカードのそもそもその目的であるところの,全国民に広く課税することに拒否感を持っているのである.
 日本国民の過半を占める勤労者 (給与所得者) 層は,マイナンバーカードを持たなくても何の痛痒もない.政府はマイナンバーカードの利便性をテレビでしきりに宣伝しているが,普通の勤労者は,税務署に完全に収入を捕捉されているから,この国民階層には,マイナンバーカードを普及させる意味がないのである.行政サービスを受ける際の利便性がどうのこうのと政府は言うが,運転免許証と健康保険証があれば生活に全く困らない.だから,失うものを何も持たぬ大半の勤労者国民はマイナンバーカードに無関心だ.
 マイナンバーカードに《個人情報の漏えいが心配 》と不信感を持っているのは,収入や金融資産を税務署に捕捉されては困る富裕な国民階層である.それはどのような人々か.
 
 テレビ東京の人気番組『昼めし旅』は,タレントや局のADなどのレポーターが,一般人の食事を拝見するという番組である.
 大半の場合は,レポーターが農村あるいは漁村を歩きながら,畑や漁港で働いている人にインタビューをして「あなたの御飯を見せてください」とノー・アポで頼み込む.都市部で勤労者層の人にインタビューすることは,まずないが,自営業の人たちにはインタビューすることがある.
 それで「いいよ」と承諾してくれた農家や漁師の人の自宅をレポーターが訪問するのだが,これがほとんどの場合,大豪邸なのである.番組レポーターが「すごい豪華なおウチですねー」と驚くと,農家の人は「田舎はみんなこんなもんだー」と事も無げに答える.
 外観こそ普通の瓦葺き日本家屋の農家であっても,玄関を上がると,リフォーム済みの近代住宅だ.システムキッチンを備えた台所だけで六畳あったりして,これに広いダイニングルームが付く.都会なら会社役員のお宅みたいな様子である.
 というわけで,この番組を観ていると,日本の税制に関して,古くはクロヨン,その後はトーゴーサン呼ばれた言葉を思い出さざるを得ない.本来課税対象とされるべき所得の内,税務署がどの程度の割合を把握しているかを示す数値を捕捉率というが,クロヨンとトーゴーサンは次のように書かれている.
 
勤労者が手にする所得の内、課税の対象となるのは必要経費を除いた残額である。本来課税対象とされるべき所得の内、税務署がどの程度の割合を把握しているかを示す数値を捕捉率と呼ぶ。この捕捉率は業種によって異なり、給与所得者は約9割、自営業者は約6割、農業、林業、水産業従事者は約4割であると言われる。このことを指して「クロヨン」と称する。
捕捉率の業種間格差は「9対6対4」に留まらないとの考え方から「トーゴーサン」という語も生まれた。即ち、捕捉率を給与所得者約10割、自営業者約5割、農林水産業者約3割にそれぞれ修正した呼称である。
 
 大抵の都市部勤労者は,一生働いても,一億円以上の資産を蓄財できる人はホンの一握りだ.だが私の住む陋屋の周辺には,まるで『昼めし旅』に出てくるような農家の豪邸がたくさんある.彼らは地元の祭りにポンと信じがたいような寄付金をだす.以前,氏神様の例祭に使う子供神輿を作るからといって寄付の要請が町内会経由できたとき,農家の皆さんは一戸あたり,現金で若い会社員の年収ほどの寄付をした.
 その時に思ったのだが,現代日本での勝者は農業と漁業の従事者である.彼らの豪邸は,給与所得者たちの血税で贖われている.
 彼らは戸数が減った (言い換えれば,富裕になれなかった人々は離農したのであろう) とはいえ,今でも地方の保守政治家の有力な支持者である.従って,いくら国税当局がマイナンバーカードを普及させようとしても,立法サイドがそれを押しとどめる.国民すべてに公平な課税の理念は,夢のまた夢だ.私の推測だが,マイナンバーカードは,住基カードと同じ運命を辿るだろう.
(了)

 

|

« 時の娘 (補遺) | トップページ | 名画の謎 陰謀の歴史篇 /工事中 »

新・雑事雑感」カテゴリの記事