ナード映画
Amazonが『宇宙人ポール』のBDを観るように勧めてきたので,買ってみた.古い作品なので,お値段はすごく安くて千と十円.だけど端数十円の意味がわからない.どうして九百九十円にしないのか.今の若い人たちには,そういう小細工な値付けは通用しないのだろうか.まあいいや.
この作品,Amazonのレビューや映画評サイトでの評価が著しく高い.しかし少数ながら,作品中でマリファナが小道具として使われていることに嫌悪感を述べているレビューもある.また,登場人物がやたらと下品なスラングを口にすることに反感を表明している人もいる.
それは日本人の良識からするとまことにその通りなのだが,しかし例えば,米国における1960年代から1970年代にかけての反戦運動と大麻喫煙は切り離せないものであったが,だからといって当時のヒッピーたちの反戦思想を,なかったものとして無視したり否定するのはどうかと思うのだ.
この『宇宙人ポール』には“nerd”という単語が台詞に何度も登場する.というか,この映画の主人公二人はナードなのだ.ナードは日本語でいうとオタクに近い.それどころか出て来る宇宙人もナードなのだ.
ナードは,ジョン・ウェイン以来の雄々しく強い (筋肉脳の) アメリカ人の対極にある.銃乱射事件でどれほどの子供たちが撃ち殺されようが,それでも銃こそが建国の精神だと主張する典型的なアメリカ人に対するカウンター・カルチャーがナードだ.ナードは殴り合いのケンカをするくらいなら逃げる.そういう文化に親近感を持たない人は,『宇宙人ポール』を観ても全くおもしろくないだろう.
私はどうかというと,この映画を飽きずに最後まで鑑賞した.パロディとしてはあまり手が込んでいないが,コメディとしては,まあよくできていると思う.
聖書に書いてあることしか認めないキリスト教原理主義は米国共和党の強力な基盤であるが,メインキャラの一人である娘ルースは,がっちがちのキリスト教原理主義者である.彼女の堅く頑迷な信仰を,宇宙人のポールが「科学の神の手」で捨てさせてしまうというストーリーは,米国映画としては勇気のあるシナリオだと思う.そのおかげでルースは下品なスラングをしゃべるようになってしまうのだが.w
Wikipedia【宇宙人ポール】には,項目はあるがほとんど中身がないので,この作品の解説はコレがおすすめだ.
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