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2019年10月22日 (火)

それは要出典だ

 AERA dot. の記事《産経新聞社がフジHD傘下入り秒読み 背景に首相の「一声」》が面白かった.
 これは,産経新聞社の飯塚浩彦社長が,フジテレビの持ち株会社であるフジ・メディア・ホールディングス (FMH) で院政を敷く日枝久取締役相談役の招きで,FMHの「社長会」に出席したことから,経営難の産経新聞社がフジテレビの傘下に入るのではないかとする憶測記事である.
 古い言葉に「社会の木鐸」がある.現在の新聞で一応「社会の木鐸」と国民に見なされているのは,いわゆる全国紙四紙つまり読売,朝日,毎日,日経である.戦後の一時期までは,これに産経を加えて全国紙五紙と言われていたが,記事の質の低さ (例えば日本語が酷いとか,誤報が多いとか) で読者の支持を失い,部数減少して経営難に陥り,今では東スポ以下の準地方紙になった.
 余談だが,私が食品企業で品質保証の仕事をしていたとき,品質事故を起こして商品回収をすることになった.それはもう十年以上前の話だが,当時は全国販売された商品の回収をする場合,消費者への告知はまず全国紙に社告を掲載することで行うのが原則 (保健所のアドバイスによる) だった.
 品質保証部門では社告の原稿を作成し,本社所在地の保健所に原稿を読んでもらい,OKを得た.この原稿を広告代理店を経て読・朝・毎・日経へ出稿したところ,広告代理店の筋から産経新聞に漏れたのだろうと思われるが,産経から「産経は全国紙である.なにゆえに産経を外すのか」と抗議を受けた.
 産経はローカル紙だと思っていた私は驚いたが,「産経に社告を出さないと,社会面で記事にされるおそれがある」という忠告を業界通から受けて,産経にも社告を載せた.たかが産経が,と思ったが.w
 それはさておき,AERA dot. の記事でおもしろいと思ったのは,記事末尾の以下のセンテンスだ.
 
フジテレビは韓流が重要コンテンツ。産経の熱心な読者から「韓国大好きフジテレビの傘下に入るのか」と批判を受け、離反を招くおそれもある。
 
 私は仕事をリタイアしてからというもの,一日に何時間もテレビを観るが,フジテレビは《韓流が重要コンテンツ 》だなんて全く知らなかった.Wikipedia【韓流α】を読んで驚いた次第だ.
 しかし朝日はそう嫌味を書くが,産経の社是は反共であって,嫌韓は単なる部数獲得のためのポーズだと思う.
 産経新聞の面目躍如は,《【一筆多論】共産党は憲法を守れ 榊原智》(掲載日時 2019年10月22日 07:46) のような記事だ.
 こういう記事を書き続けてくれれば,産経新聞読者は産経を見捨てないと思われる.
 その末尾から一行を引用する.
 
憲法の英訳は「constitution」だが、これは国柄、国体とも訳される。共産党は、憲法は国柄を踏まえて解釈すべきだという常識を身につけ、現憲法を守ってもらいたい。(論説副委員長)
 
 憲法が constitution であることは正しい.そして constitution は多義語だから,「国柄」「政体」という語義もある.だが「国体」には一定の意味が存在しないので,constitution を「国体」と訳していいかどうかは文脈による.あの古すぎてものの役に立たない斎藤和英辞典でも,「国体」の例文には national constitution を用いているくらいだ.そういうことを無視して大雑把に「constitution は国体と訳す」のは頭が悪い.
 このように産経の日本語はからきしダメなのだが,とにかく反共の旗を振るのであれば,朝日の期待に反して,産経の《熱心な読者 》は離反しないであろう.
 また,その上の行の《憲法に同居する国民主権 》(下の画像はモニター画面のハードコピー) も日本語がおかしい.同居とは「一緒に住むこと」であるが,「憲法に天皇と国民主権が一緒に住む」とはどういう意味だ.もしそのような用例があるなら,出典を示して欲しい.
 
20191023a
 
 精選版日本国語大辞典によれば,比喩的に「同居」は《異質のものが同じ所に存在すること 》という意味に用いられるが,そうすると天皇と国民主権は異質のものだということになってしまう.大丈夫か,論説副委員長.w

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