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2019年10月 3日 (木)

美しいバラは君の庭に

 私は外国文学に疎い.ミステリーやSF小説をいくらか読んだことはあるが,ジャンルは偏っているし,読書量も知識も出来の悪い高校生以下だと自覚している.
 そのような私であるから,「ハムレット」を通しで読んでいない.粗筋は知っているが.
 
 中野京子先生の『欲望の名画』(文春新書,Kindle版) を開いたら,ミレイ『オフィーリア』(1852年,油彩) の説明の中に《バラ (愛。オフィーリアの兄は彼女を「五月の薔薇」と呼んでいた) 》と書かれていた.
 
20191001a
(パブリック・ドメイン;Wikimedia Commons,"File:Sir John Everett Millais 003.jpg"から引用)
 
 ああそうだったなあ,と思い出して,それから暫く「五月の薔薇」を検索してみた.
 すると,五月の薔薇と呼ばれた乙女の名を冠したバラの画像がたくさんでてきた.これって,バラ園では必ずといっていいほど咲いている花じゃなかろうか.よく知らぬが.
 それから横道に逸れて,Wikipedia【五月のバラ】を読んでみた.この曲を歌った歌手の一人にブレンダ・リーが挙げられている.私がこの歌を最初に聴いたのは中学三年,高校の受験勉強をしている頃だったが,当時はブレンダ・リーの人気がすごくて,深夜放送を聴いていると,毎日必ずといっていいくらい彼女の歌が放送された.
 ブレンダは日本に何度も来て公演をしている.NHKテレビのショーに出演したのは1977年の来日の時で,この動画がたぶんその時のもの.日本では「五月のバラ」が曲名だが,ブレンダのカバーは「五月のバラ」ではなく「Omoide no Bara」(または邦題「思い出のバラ」) と呼ぶ.
「思い出のバラ」はネットにいくつか録音がアップされているが,これは比較的音がよい.ただしこのYouTubeは『この世の果てまで ブレンダ・リー』のCDジャケットが静止画になっているが,実はこのCDには「Omoide no Bara」は収録されていない.これが何かの勘違いなのか,あるいは音源を秘匿する必要があったのか,理由がわからない.
 現在のところ,日本国内で販売されているCDで,「Omoide no Bara」を収録したものはないと思われる.その意味でYouTubeにアップされている1977年のテレビ録画は貴重な音源である.しかしあちこち探したところ,海外で録音された7inchEPレコードの中古品 (骨董 w) が輸入されていて,日本のショップでも入手できるようだ.レコードプレイヤーを持っている人はそれを買うといいだろう.
 想像するに,日本国内でシングル・カットされたEP盤 (入手は極めて困難) とアメリカでリリースされたシングルEP盤はあるが,LPのアルバムには収録されなかっんじゃないかという気がする.
 ということで,私にとって「五月のバラ」はブレンダ・リーの歌なのであるが,いつの間にかラジオ番組でかけられる「五月のバラ」は塚田三喜夫のカバーがデフォになった.この歌をカバーした歌手は多いが,塚田バージョンが一番評価が高いからだろう.私もそう思う.
 ところでWikipedia【五月のバラ】には,次のように書いてある.
 
五月のバラ(ごがつのばら)は、津川晃の楽曲である。作詞:なかにし礼、作曲・編曲:川口真。1970年4月、再デビュー2枚目のシングルとしてエキスプレスより発売。規格品番はEP-1213。
1960年代、日本で活躍したカヴァーポップス歌手フランツ・フリーデルが、1969年に津川晃と改名し再デビュー。歌謡曲のジャンルでレコードリリースするようになり、そのシングル第2弾として1970年4月にリリースされた。
 
「五月のバラ」のオリジナルは津川晃 (フランツ・フリーデル) というドイツ人/日本人のハーフ歌手なのである.この人が1970年にEP盤にシングル・カットした録音が,この曲の最初のリリースだ.
 私はそれを聴いたことがなかったので,ネット上を探した.すると《五月のバラ Cover 津川 晃(フランツ・フリーデル) / 私撰・和シャンソン by Sima 》というYouTubeがトップにヒットした.
 この動画のタイトルを読むと,いかにも津川晃の歌唱のようにみえる.ところがこれは,Simaという人物が歌っているのだ."Cover津川晃"という和製英語が紛らわしくて誤解を招く.というより,アクセスを増やすためにわざと誤解を招くようなタイトルにしているのだろう.
 それはたまにあることなので,別に構わないが,驚いたのはSimaという男の歌唱である.音程外しまくり,リズム無視しまくりなのだ.明らかに音痴なのである.
 では,その奇跡のジャイアン・リサイタル《五月のバラ Cover 津川 晃(フランツ・フリーデル) / 私撰・和シャンソン by Sima 》を,どうぞお聴きください!

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