« お箸の国の人なのに (九) | トップページ | ビブリア古書堂 »

2019年8月 5日 (月)

金では解決できないこともある

 テレビを見ていると,中国からの観光客の爆発的増大で,京都などの歴史的景観を有する観光地における「観光公害」が起きているとの報道が目立つ.
 そんな折,AERA dot. に《京都で古い町並み崩壊の危機…深刻化する「観光公害」を考える 》という記事が掲載された.(2019/08/05 11:30)
 記事の筆者でジャーナリストの清野由美氏は次のように書いている.
 
たとえば19年版の「観光白書」(観光庁)によると、18年のインバウンド客の日本での消費額は4兆5189億円。これは日本の製造業の代表選手、トヨタ自動車の過去最高純利益である2兆4939億円(18年3月期連結)をゆうに超える。
「日本の役人や企業の担当者は、いまだに『数』を成功の指標として、300円の入場料で10万人を呼ぶことを重視しがちですが、そこが問題です。それでは行く方も迎える方も疲弊するだけ。これからは3千円の入場料で1万人を迎えて、双方の気分がよくなる、といった『質』の向上を本気で図らねばなりません」
 そう語るのは、来日して55年の東洋文化研究者、アレックス・カーさん(66)だ。カーさんは四国の秘境、祖谷(いや)(徳島県三好市)で、築300年以上の茅葺(かやぶき)古民家9軒を一棟貸しの宿に転用するプロジェクトに長年携わる。
「始めた当初は、こんな僻地(へきち)には誰も来ないと言われましたが、だからこそ魅力的なのだ、と私は力説しました。1泊3万~4万円ですが、数人の滞在が可能です。この形なら地域にダメージは与えません。フタを開けたら、外国人、日本人を問わず、予約でいっぱい。需要があることを実感しました」(カーさん)
 
 これを読んで爆笑した.《来日して55年の東洋文化研究者、アレックス・カーさん(66)だ。カーさんは四国の秘境、祖谷(いや)(徳島県三好市)で、築300年以上の茅葺(かやぶき)古民家9軒を一棟貸しの宿に転用するプロジェクトに長年携わる》と書いてあるが,このアレックスさんという人,東洋文化研究者ではなくて東洋文化研究観光業者じゃないのか.w
 それはともかく,《300円の入場料で10万人を呼ぶ 》のをやめて《3千円の入場料で1万人を迎え 》ることにしたとする.
 そんなことをしても中国人観光客が減るとは思えない.なにしろ彼らは大変な経済力 (観光旅行資金) を持っているし,数がベラボーだ.この論理で行けば,「3万円の入場料で千人を迎え」なければならなくなること必至である.それでも観光公害は収束するかどうか.
 観光コストを百倍にして,なおかつ京都市民の日常生活に打撃を与えぬようにするには,京都市民に特別な身分証明書を発行し,街中の飲食店での食事代や交通費などの観光コストに関係する日常の市民生活費用を99%割引く必要がある.
 しかし日本人観光客に同様の優遇措置をすることは法的に不可能だ.なぜならそれは人種差別,民族差別,国籍による差別に繋がるからである.
 アレックス・カー氏の方法では,日本人は国内観光ができなくなる.現在なら五万円もあれば「そうだ,京都いこう」と思い立って数日間の京都を楽しむことができるが,アレックス式では五十万円も必要になるのである.こうなるともはや日本人には付いていけない.
 いずれ《四国の秘境、祖谷 》にも中国人観光客が押し寄せて,日本と欧米からの観光客は排除され,観光公害が発生することになるだろう.
 ことは民度の問題だ.観光コストを上げることで解決するようなことではないと考える.
 清野由美氏は,
 
21世紀以降の日本は人口減少、経済停滞と行き詰まりが著しい。そんな日本にとって「観光」が20世紀の製造業に代わる、産業としての可能性を持つことは確かである。経済が成熟した国にとって、第2次産業から第3次産業への転換は、雇用の面でも、外貨獲得の面でも、必然的な流れだ。
 
と言うが,海外からの観光を外貨獲得手段とする思想では,京都が観光公害に晒されるのは《必然的な流れだ》ろう.論理として「必然的な流れ」というものは,止められない.だから「必然」なのだ.しかし「必然」でなければ食い止められる.それには,観光を外貨獲得の手段とする思想を捨てることだ.外貨獲得を目的とする限り,観光公害の解消には中国人の民度の上昇を待つしかない.中国人観光客から経済的恩恵を受けることのない私たちはそう思う.
 日本の観光コストを高騰させて中国人観光客を超富裕層に制限する方法は,日本人の一般生活者から隔離された離島など特別に開発されたリゾート地でしか実行できないと考える.観光事業者にはぜひそうして欲しい.ま,このようなリゾート開発は,そのうちに中国人資本自身が行うだろうが.
 
[追記]
 テレビ東京の『Youは何しに日本へ?』や『世界!ニッポン行きたい人応援団』には,お金はあまり持ってないけれど日本と日本人,日本文化が好きだという人々がたくさん登場する.彼らは,安宿に泊まり,コンビニでパンやおにぎりを買って食べ,日本のあちこちを旅している.彼らは,観光というものをを文化的な観点ではなく産業として位置付ける日本の観光事業者のターゲットではない.しかし,こういう人たちが世界中に増えると,外貨には換算できない無形の利益が日本にもたらされるに違いない.清野由美氏やアレックス氏が説くように日本観光のコストを上げて海外からの富裕者を事業対象とすることは,《300円の入場料 》を《3千円の入場料 》にするということは,彼ら親日派の人々を排除するということだ.私は,そうなって欲しくない.

|

« お箸の国の人なのに (九) | トップページ | ビブリア古書堂 »

新・雑事雑感」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« お箸の国の人なのに (九) | トップページ | ビブリア古書堂 »