グルテン不耐症になりたくて w
フード・ファディズムの一つに「グルテンフリー・ダイエット」がある.「グルテンフリー・ダイエット」は米国発祥であるが,日本でも流行が始まっている.これはWikipedia【グルテンフリー・ダイエット】で次のように説明されている.
《グルテンフリー・ダイエット(Gluten-free diet)は、小麦をはじめとした穀物のタンパク質の主成分であるグルテンを除去した食事のこと。もともとグルテン除去食は、セリアック病や小麦アレルギー(食物アレルギー)、小麦の消化や代謝不良等(グルテン関連障害)を改善するための食事療法の中で取り入れられてきた。》
《2010年代以降、原因不明の体調不良に苦しむプロスポーツ選手やアメリカ合衆国のセレブリティの間で効果があるものとして注目され流行した。このことから、アメリカのスーパーマーケットの棚にはグルテンフリー・ダイエット向けと表記する食品も見られるようになったほか、レストランでもメニュー構成に取り入れる店も現れた。》
メディアが「グルテンフリー・ダイエット」を紹介する際は,米国社会におけるセレブリティの間ではやっている食事療法として説明されるせいで,女性に人気がある.
この流行に敏感に反応した日本の一般女性たちは,医学や栄養学の知識があるわけではないので,ネット上で色々なトンデモ話を開陳している.
その中で,最近目にした《小麦パンは本当に悪なのか。日本人の約8割はグルテン過敏症と言われる陰にある小麦品種改良の重大な過失とは》が抜群におもしろかった.この アホ 記事の掲載媒体は「IN You journal」といい,営利企業の公式サイトだ.記事の筆者はyokosato (以下,敬称略) という女性で,プロフィルは
《フードスタイルコンサルタント ファスティング指導・料理教室主催。 自宅出産、完全母乳育児、子供の大病などの経験から「食べ物が体を作る」 ことを身を以て知る。 ファスティングによって10kgのウェイトダウンに成功したことで デトックスと食の知識を伝える活動をスタート。 福島県福島市在住》
である.
以下に記事内容を解説付きで紹介するが,この手の インチキ サイトは,都合が悪くなるとコンテンツをさっさと削除してしまうので,リンク切れになった場合の証拠保全のために,テキストと併せてブラウザ画面のハードコピーも引用に供する.
さてyokosatoは,《以前私が受講した、グルテン不耐性のセミナーでは日本人の7〜8割がグルテン不耐症の可能性が高いとの情報がありました 》と書いて自分の主張を展開する.学術論文を読んで確認する作業がめんどくさいと思う怠惰な人間にありがちなことだが,yokosatoは業者セミナーで聴いたことを右から左へ垂れ流す.
彼女によると,疲れが取れない,太りやすい,体が重い,頭がぼーっとする,集中できない,下痢あるいは便秘がある,頭痛や腹痛,鼻水鼻づまりなどは,グルテンが原因である可能性が高いのだそうだ.
Wikipedia【グルテン関連障害】によれば,グルテンが原因と考えられる疾患は,自己免疫系 (セリアック病, 疱疹状皮膚炎,グルテン失調症),非自己免疫・非アレルギー系 (原因不明の失調症,非セリアック・グルテン過敏症,その他),アレルギー系 (食物アレルギー,喘息,接触皮膚炎他) に分類される.
yokosatoが主張する「太りやすい」他の症状は,非自己免疫・非アレルギー系障害のうちの「原因不明の失調症」に相当するのだろう.そもそもそれらは医学的な意味の症状というよりも,曖昧で客観的所見に乏しい不定愁訴であるから,どんなものでも原因にすることが可能だ.
ところがyokosatoは,おそらく自分はグルテン不耐症であるという思い込みにより,支離滅裂な行為に走った.それが下の画像にある《ゆるいグルテン不耐性テストをやってみました 》である.なお彼女の文章中には「グルテン不耐症」と「グルテン不耐性」が何の脈絡なく混在しているが,この二つは学術的に意味のある用語ではないので,彼女の頭が《ゆるい 》のは大目にみるべきだろう.
この画面に続いて次のような記述がある.
《小麦を取らない生活をするに当たって、実は一番困ったのは息子の給食でした。
福島市の場合には、米飯が週に3回、残りの2回はパンかうどんというパターンです。
以前から給食の牛乳は飲ませていませんでしたが、育ち盛りの息子にパンやうどんなどの主食を抜けとは言えず、結局は夏休みなどの長期休暇の際に試すことにしました。それでも、できることから実行しようと思い、自宅での食事は3食米にし、パスタやパンなどは基本的に食卓に出さないことにしました。
小麦粉の代わりに米粉を常備し、パスタ、うどん、ラーメンなどの麺類は、グルテンフリーのパスタやフォー、そばで代用。
春巻きの皮はライスペーパーへ、揚げ物は米粉に・・
本来、グルテン不耐症テストをする場合には、一切の小麦を抜くのが正しいやり方です。
でも、我が家の場合には、給食の問題の他、小麦好きの夫が台所に立つ人でもあり、完全なグルテンフリーをするのは現実的ではなく、ある程度は妥協し、できる限り小麦をカット!という方向性でテストしてみました。
(具体的には、醤油は使っていましたし、息子は週末に1食だけはラーメンを食べていました。)
そんなゆるいテストでしたが、しばらく続けるうちに変化を感じるようになりました。
息子は「ラーメンを食べて走る(トレーニング)と腹が痛くなる(コメの時はならない)」と言い、私は、パスタやラーメンを食べると時々腹痛を感じたり睡魔に襲われるようになりました。》
上の引用箇所の末尾は,ブラウザ画面のハードコピーを下に掲載する.私はこの部分を読んで爆笑した.
yokosataは,
《本来、グルテン不耐症テストをする場合には、一切の小麦を抜くのが正しいやり方です。でも、我が家の場合には、給食の問題の他、小麦好きの夫が台所に立つ人でもあり、完全なグルテンフリーをするのは現実的ではなく、ある程度は妥協し、できる限り小麦をカット!という方向性でテストしてみました》
と書いている.とにかく自分がグルテン不耐症であると結論することがテストの動機であるから,方法が間違っているなんてことは問題ではないのだ.w
そして彼女はとうとう次のテスト結果を得た.
《そんなゆるいテストでしたが、しばらく続けるうちに変化を感じるようになりました。息子は「ラーメンを食べて走る(トレーニング)と腹が痛くなる(コメの時はならない)」と言い、私は、パスタやラーメンを食べると時々腹痛を感じたり睡魔に襲われるようになりました。》
そもそもyokosatoは,
《小麦に含まれるグルテンによって、様々な体調不良が起こることを「グルテン不耐性」と言います。》
と定義したはずである.ところが彼女とその息子は逆に,グルテン摂取を制限することで体調不良となった.つまり彼女は,自らの願望を裏切って,グルテンを必要とする体質だったのである.w
しかし彼女はへこたれない.とにかく自分がグルテン不耐症であると結論することがテストの動機であるから,グルテン不耐症ではないというテスト結果なんかは無視すればいいのだ.w
こうしてyokosatoは《グルテン不耐症かもしれない私の食生活は?》という方向に話を進めるのである.彼女は,どんなに間違った主張でも言い張ればいいのだというタイプの人間であるらしい.米国のセレブに憧れていると思われる彼女の我田引水支離滅裂なテストレポートは,下手な漫才よりもずっと面白いのだが,道理というものが通用しない女と暮らしている御亭主がお気の毒ではあるなあ.ww
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