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2019年7月 9日 (火)

フォー対決

 先日,藤沢駅北口「さいか屋」の地下にある成城石井で食料品を物色していたら,ケンミンのフォーが置いてあった.私はこれまでエースコックのフォーばかり食べてきたので,このケンミンの製品も食べてみようと思った.
 とりあえず比較のために,両社の公式サイトに記載されている表示事項を下に引用する.
 
ケンミン食品株式会社
ベトナム風フォー 鶏がらスープ味
内容量   68.9g (米めん50g+粉末スープ18.9g)
 標準栄養成分
  エネルギー   238kcal
  たんぱく質    5.0g
  脂質       0.5g
  炭水化物     53.3g
  ナトリウム    1.8g
 原材料名
  米めん (米、でん粉)、粉末スープ (デキストリン、食塩、魚醤 (魚介類)、チキンエキス、コリアンダー、たまねぎ、にんにく、こしょう、唐辛子、ごま油、調味料 (アミノ酸等)、酸味料、リン酸カルシウム、(原材料の一部に大豆を含む)
 
エースコック株式会社
ハノイのおもてなし 鶏だしフォー
内容量:48g(めん 40g)
 標準栄養成分
  エネルギー   168kcal
  たん白質     3.6g
  脂質       1.6g
  炭水化物     34.8g
  食塩相当量    3.7g
    (米めん・かやく/スープ 0.9g/2.8g)
 原材料名
  米めん (ベトナム製造 (米、でん粉、食塩))、スープ (食塩、香味油、植物油脂、香辛料、動物油脂、砂糖、でん粉、香味調味料、ねぎ、ネギエキス、酵母エキス、チキンパウダー)/加工でん粉、調味料 (アミノ酸等)、乳化剤、増粘剤 (グァーガム)、酸味料、甘味料 (スクラロース、アセスルファムK)、香料、酸化防止剤 (ビタミンE)、(一部に卵・大豆・鶏肉・豚肉を含む)
 
 上記二つの製品は,スープの原材料表示に微妙な違いがある.「ハノイのおもてなし」は主たる原材料と食品添加物を「/」で区切って,食品添加物を明示している.これに対してケンミンのフォーはずらずらと並べているだけである.いずれも工場あるいは本社の所在地を所管する保健所に目を通してもらっているはずだが,エースコックの書き方が好ましい.
 それはさておき,まずはおいしいかどうか,だ.両者のスープを比較してすぐわかることは,ケンミンのフォーのスープがシンプルなレシピで作られていることだ.これについて少し説明する.
 
[ケンミンのベトナム風フォー]
スープの原材料;デキストリン … これは,粉末乾燥したあとで取扱いやすい量にするための増量剤である.
        食塩,魚醤 (魚介類),チキンエキス,コリアンダー,たまねぎ,にんにく,こしょう,唐辛子,ごま油 … これらの材料で味を整えている.他に,調味料 (アミノ酸等) を使っているが,これはたぶんグルタミン酸ナトリウム (を主とする添加物製剤) で,旨味を増強するために使っていると見られる.酸味料も,保存性向上の意味もあるが,フォーのスープにわずかな酸味を加えるためだろう.リン酸カルシウムは色々な機能を持っているので,このスープに入れている目的は不明だ.こうしてみると,純然たる添加物的用途はリン酸カルシウムだけのように思われる.
 これらの材料のうちで,魚醤は東南アジア感を付与したくて入れているのだろう.コリアンダーも同じ.加工食品の設計におけるこのような姿勢に私は好感を持つ.
 
 これに対してエースコック「ハノイのおもてなし」は,いちいち解説するのが面倒くさいくらいに食品添加物に頼り切っている.おそらく業務用商品として販売されている香味油,香味調味料を使用し,さらに食品添加物の香料も使っているが,「ハノイのおもてなし」に魚醤は使われていない.魚醤は東南アジア風味のキモであると私は思うのであるが.
 またそのことに加えて,食品添加物の加工でん粉,乳化剤,増粘剤,甘味料を用いているが,本当にそれらは必要なのか.消費者は疑問に思うかも知れない.実は私も疑問に思うのである.
 
 以上のように書くと,ケンミンのフォーのスープがおいしいかのようであるが,実はさにあらず.原材料表示を読んだ限りは如何にも人工的なレシピである「ハノイのおもてなし」のスープのほうが東南アジア感を漂わせているのだ.ケンミンのフォーのスープは,食品開発の姿勢はエースコックのそれよりも良いのに,求められる味を実現する技術に足らぬものがあったと言わざるを得ない.まことに惜しい.
 
 それでは麺はどうか.これはもうケンミンのベトナム風フォーが圧勝である.「ハノイのおもてなし」の麺は,茹でると麺と麺がくっついてほぐれないのに対して,ケンミンの麺はそれがほとんどないから食べやすい.米粉麺の製造技術にかけては,ケンミンはさすがであると言うほかない.
 結論として,ケンミンのベトナム風フォーは,スープの味にもう一工夫あれば,「ハノイのおもてなし」よりもうまくなるはずだ.期待している.
 本記事の終わりに少し補足すると,エースコック「ハノイのおもてなし」もケンミンのベトナム風フォーも,カップ麺のうどんや豚骨ラーメンなどに比較すると塩分は少ないが,それでもスープを全部飲んでしまうと,成人男性の一日のナトリウム摂取目標量の半分近くになってしまう.スープは麺にからんで口に入るのを楽しむ程度にするのがよい.

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