非常食にいいかも
先日の六月十八日,新潟と山形の県境沖を震源とする大きな地震があったばかりだが,続いて二十四日には千葉県沖と熱海沖でも地震が発生した.私の陋屋でも「おっ」と腰を浮かせるほどの震度であった.
寺田虎彦の言として伝えられる「天災は忘れた頃にやってくる」だが,関東地方では,みんなが地震災害を忘れてしまうほど地面がびくともしないわけではない.割と頻繁に地震があるのが実際だ.
そして関東南部で震度3とか4の地震があると,どこの家庭でもそうだろうが,災害対策用品の中で優先度第一位と二位の水と簡易トイレ,それから第三位の非常食料の用意は大丈夫かと確かめることになる.私の場合,飲料は備蓄飲用水の基本であるミネラルウォーターを箱買いしている他,麦茶,炭酸水,コーラもダンボール箱を積み上げてある.量のことだけでいえば三週間分以上ある.なぜミネラルウォーターだけではだめかというと,ローリング・ストック法を実行しているからだ.ローリング・ストック法の考え方は,災害対策として特別な飲食料品をストックするのではなく,日常的に飲食しているものを備蓄しましょうということである.そして備蓄したものが減ってきたら補充する.こうすると,賞味期限のことを気にする必要がなくなるのである.
私の場合のことに戻ると,実は炭酸水を一番たくさん消費する.焼酎やウイスキーをこれで割って飲むからである.水分補給目的では麦茶があればいいのだが,ミネラルウォーターは料理などの用途にも使えるので,麦茶だけというわけにはいかない.従ってこれも箱買い.あとは冷蔵庫に数本のトマトジュース,ペットボトル入り無糖コーヒーが常に入れてある.
これで多分,水関係は大丈夫と思う.次は簡易トイレだが,これは使用期限があるのだろうか.いざという時に劣化していたという心配はないのだろうか.かといって簡易トイレをローリング・ストック法で備蓄するのは,いささかためらわれる.どうしたらいいのか,まだ妙案がないのが実情だ.
次に食料だが,ローリング・ストック法が広く知られる前は,非常食といえば缶詰の乾パンだった.今でも缶詰の乾パンは実際上,賞味期限がない (一応,サンリツ製菓などの製品は形式的に五年間と表示はされているが,缶がサビたりしなければ中身はほとんど劣化しない) と考えてよく,便利ではある.しかしローリング消費するには,食べて飽きやすいのも事実.そこで他にローリング・ストックに適した非常用食品に何かいいものはないかと調べてみた.
まず最初に紹介するのは,イタリアで製造されている全粒粉クラッカー“MISURA” (輸入者はリードオフジャパン株式会社) だ.通販で買えるし,実店舗ならカルディコーヒーファームにあると思う.表示されている原材料を引用すると《小麦全粒粉,ひまわり油,麦芽エキス,食塩,イースト/膨張剤 》である.おそらく膨張剤は炭酸水素ナトリウムだろう.
次はスイス製の“DAR-VIDA”だ.蒸着フィルム包装なので,保存性はこちらのほうがいいだろう.
表示されている原材料は《全粒小麦粉,菜種油,食塩,イースト,大麦麦芽エキス,膨張剤 》である.食味は“MISURA”とほとんど同じだが,目的が災害に備えての食糧備蓄なら,この“DAR-VIDA”をお勧めしたい.
実は“MISURA”も“DAR-VIDA”も,これだけを食べるのは,ボソボソとしていて旨いものではない.定番の食べかたがあるのだが,それは後述する.
三つ目は,おなじみブルボンのクラッカー.原材料表示を引用すると《小麦粉 (国産小麦80%),植物油,マーガリン,モルトエキス (小麦を含む),食塩,イースト,酵母エキス粉末 /膨張剤,乳化剤 (大豆由来),イーストフード,酵素,酸化防止剤 (ビタミンE),ビタミンC 》
ごく普通のクラッカーだが,おいしい.
続いては“Pasquier Mini Toast”というもの.
原材料表示は《小麦粉,全粒小麦粉,植物油脂,小麦グルテン,酵母,砂糖,小麦麦芽粉,食塩 /酸化防止剤 (ビタミンC),酵素 》である.商品名の通り,外観は小さなパンのトーストである.製法は,普通に食パンをトーストするのとは異なって,乾燥工程が入っているだろう.
この商品は一包装単位の量が多い.主食的に食べることは想定外だとみえて,包装に印刷されている画像のようにして食べるらしい.一袋は朝食三回分位だろうか.
ブルボンのクラッカー以外は,食感がパサパサしていることもあり,水分のあるレバーペーストとかパテを載せて食べるとおいしい.いずれもデパート地下などで惣菜として売られているが,むしろ缶詰や瓶詰が入手しやすいので,常備しておくと,災害対策になる.
私のお気に入りは明治屋の「ビーフレバーペースト」だ.賞味期限は長いので,買いだめしても損はない.
下の画像の右側はパテの缶詰.輸入食品を扱う店舗や通販で色々なものが手に入る.
クラッカー類にはチーズも合うのだけれど,残念ながらナチュラルチーズには缶詰がない.単に包装容器が缶だというだけの,異常に高価なチーズが通販されているが,これは缶詰ではないし,こういう物を通販で買うと,配達された時にはもう期限ギリギリだったりするので,消費者は注意が必要である.
味付けしてある缶詰,例えば牛肉の大和煮とかさんまの蒲焼の缶詰も,全粒粉クラッカーと相性がいいと思う.
あとは奇をてらわずに瓶詰のジャムも,クラッカーがあれば立派な非常食になる.
以上の缶詰瓶詰類とクラッカーの組み合わせは,湯を沸かせない状況では優れた非常食で,避難生活の初期には大変役に立つ.
私は犬を飼っているので,自治体指定の避難場所に身を寄せることができない.ペット同行者は,避難所には動物アレルギーの人がいる可能性が高いことを理由に,排除され,孤立避難を余儀なくされる.
それどころか,自宅でペットと孤立避難生活をしている人は,食料をもらいに指定避難場所に行っても,避難場所に収容されている人たちが優先であるという理由で,食料の提供を拒否される.
こういう理不尽なことのために,断腸の思いでペットと別れざるを得なかった多くの人々のことが,東日本大震災のあとで報道された.環境省は『人とペットの災害対策ガイドライン』を作ったが,これはキレイゴトだ.ガイドラインを実行できるかどうかは地方自治体の考え一つだ.もっと言えば,ある避難所の担当職員の考え方次第なのである.それが東日本大震災のときの教訓だ.
だから,災害時にペットを捨てることをよしとしない人は,避難所に頼らない覚悟で災害対策をしておく必要がある.
上記の全粒粉クラッカーは犬の非常食でもある.だから今私は,クラッカーを箱買いして,瓶詰缶詰の備蓄におさおさ怠りないのである.
| 固定リンク
「新・雑事雑感」カテゴリの記事
- 昆虫食 (二) /工事中(2023.04.02)
- イチゴをめぐる嘘(2023.03.31)
- 昆虫食 (一)(2023.04.01)
- 春日俊彰が謝らないのはなぜだろう (2023.03.28)
- 種ありブドウ(2023.03.24)
コメント