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2019年5月20日 (月)

薔薇ノ花

 私たちの国は,四季折々に咲く花に恵まれた.花が咲くのは日常普段のことだから,何が咲いて何が散ったか,気もつかぬうちに四季は過ぎていく.
 
 北原白秋の大正三年の詩集『白金之独楽』(金尾文淵堂) に「薔薇二曲」がある.
 青空文庫には入っていないようだが,国立国会図書館デジタルコレクションに収載され,原著は保護期間満了であるとして公開されている.同詩集の五十四ページと次ページにある「薔薇二曲」を下に引用する.原詩はもちろん縦書きである.

一 薔薇ノ木ニ
  薔薇ノ花サク。
  ナニゴトノ不思議ナケレド。
 
二 薔薇ノ花。
  ナニゴトノ不思議ナケレド。
  照リ極マレバ木ヨリコボルル。
  光リコボルル。
20190520b  
(国立国会図書館デジタルコレクションから引用) 

 字面だけなら,薔薇の木に薔薇の花が咲くのは当たり前なのだけれど,「ナニゴトノ不思議ナケレド」は,薔薇の花を見た白秋の感動を表現している.何の不思議はないけれど私の心は打ち震えた,と言っているのだ.
 それに,この部分は「薔薇ノ木ニ」がなくても成立する.「薔薇ノ花サク。」だけで白秋の感動は読み手に伝わる.それは,季節巡りて,咲くべき時に花が咲く自然の営みに心驚く詩人の感性である.
 そのことは,第二連に繋がる.時が来れば花は咲き,そして時過ぎれば花は散るのだと詩人は歌ったのである.
 
 さて徒然にネットを彷徨していたら,《国語の先生のブログ 》と題したブログがあった.ブログタイトルのキャプションに,

Lan-Lan教育研究所を開設いたしました。
教育の新しい形をめざして、情報、意見を発信してまいります。
また、プロ国語教師として、国語教育についても語りたいと思います
 
とある.
「プロ国語教師」とは何か.この文脈からすると「アマチュア国語教師」と対語を成すと思われるが,それでは両者の違いは何か.広く通用しているわけではない言葉を何の説明もなく用いる「国語教師」が仮にいるとして,それは本当に教師に値する人物なのだろうか.
 ま,それはさておいて,そのブログ記事から下に一部を引用する.
 
北原白秋の作品にこんな詩があります。
 
 一 薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク
   ナニゴトノ不思議ナケレド
 
 二 薔薇ノ花ナニゴトノ不思議ナケレド
   照リ極マレド木ヨリコボルル
   光リコボルル
 
         北原白秋 「薔薇二曲」『白金ノ独楽』
 
国語の先生のブログ 》の筆者は,間違いなく白秋の「薔薇二曲」を読んでいない.
 なぜなら,この人 (女性) は,原詩にはある句点を,引用文中では書き落としている.
 次に,原詩の改行位置を勝手に改竄している.常識として,元の詩の改行位置を変えてはいけない.
 果ては「照リ極マレ」を《照リ極マレ》にしてしまった.これでは意味が違ってしまう.
 余りの酷さに呆れて,記事の続きを読んだら,

私が理事を務める「社団法人日本Webライティング協会」授与の資格。お勧めです。
 
と書いてある.なーんだ.「教師」を自称するからには学校の先生かと思ったら,「国語」を金儲けのタネにしている人だった.
 その程度の人じゃあ,白秋の詩をズタズタにしても平気なのは当たり前で,なるほどね,と腑に落ちた.
 
 続いて白秋の「薔薇二曲」の改竄について調べてみたら,《きらびやかでもないけれど 》というブログも《照リ極マレ》としていることがわかった.きっと《国語の先生のブログ 》は,《きらびやかでもないけれど 》からコピペしたのだろう.そういう人物がやっている団体「社団法人日本Webライティング協会の授与する資格は,持っているのが恥ずかしい資格に違いない.

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コメント

江分利万作さん 今日は warblerです

 どうでも良いことですが いしかわじゅんが「薔薇の木に薔薇の花咲く」と題する漫画作品を描いています 仮名 句点は違いますが 内容は相撲ギャグ漫画です 題名の意図は分かりません

 こういう例はたまにあるようです 女流エロ漫画家の小野塚カホリにも寺山修司の著書と同一または酷似した題名の作品が幾つかあります

投稿: warbler | 2019年5月26日 (日) 16時02分

「薔薇の木に薔薇の花咲く」がどんな作品かネット検索してみたところ,絵柄は見たことがあるような気がします.そこで第一巻の古本を注文してみました.一円ですw.
 書籍のタイトルは著作権法で保護されないので,仮名遣いを変えようが何をしようが構わないのは御承知の通りです.「われに五月を」を「我に五月を」としても無問題.書籍の中身の文章は,散文の場合は規制が緩いですが,詩や歌詞はキツイですね.すぐ訴訟に持ち込む著作権管理団体があるから.w
 そもそも他人の作品の二次利用 (改竄を含めて) に対する立法や行政の取締りに同調しないところが漫画というものだという見解があるのは,つい最近の騒動が示したところですね.

投稿: 江分利万作 | 2019年5月27日 (月) 08時21分

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