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2019年5月26日 (日)

クラシック・レイディオ (二)

 構想を練っている途中のクラシック・レイディオの部品を調達に,昨日,秋葉原へ出かけてきた.
 まず秋葉原駅の電気街口を出て左に行く秋葉徘徊コースを取った.駅の改札口を出てすぐのところは以前のままだが,そこを左に折れたら,通りの左側にあったファストフーズ店がなくなっていた.その代わり通りの右側に『コメダ謹製「やわらかシロコッペ」秋葉原店』が出店していた.あとで調べたら去年の秋にできた店だった.
 それはいいのだが,この通りが三差路にぶつかる信号の向かい側に磯丸水産があったので驚いた.これも調べたら,できたのは最近の話ではないらしい.いかに私の足が秋葉原から遠ざかっていたということだ.買い物に来たのでなければ,そのまま磯丸に入って昼飲みするところだが,それはやめた.
 磯丸水産の隣がニュー秋葉原センターで,その地下続く階段を降りると「喫茶室ルノアール ニュー秋葉原店」がある.秋葉原にはルノアールが幾店もあって,昭和通りに近い店「Cafeルノアール秋葉原昭和通り口店」はヨドバシカメラで買い物した帰りに立ち寄る.「喫茶室ルノアール秋葉原店」では,ドスパラ本店の周辺で買い物した帰りに一休みする.少しずつ店名を変えているのがおもしろい.
 さて何年か前まで,ニュー秋葉原センターの主は「国際ラジオ」だった.知らない人が見れば廃棄物置き場のような店だったが,これは戦後の秋葉原に誕生した「ジャンク屋」の最後の一軒だった.私も何度かここで買い物をしたことがある.
 しかし五年前に《「国際ラジオ」がひっそりと廃業 》したとのニュースが流れた.
 戦後の電気工作ファンたちは,廃棄物の民生用ラジオや軍需の放出品の中から使えるパーツを集め,同好の士以外には全く意味不明な機械を拵える趣味世界に遊んだ.
『スター・ウォーズ』に惑星タトゥイーンのジャンク屋が出てくる.壊れたロボットや,山賊部族がかっぱらってきた宇宙船の残骸が店に積まれていて,客はそのガラクタの中から自分に必要な物を探して買っていく.あんな風にしてこの国の戦前・戦中生まれの世代は,自分のR2D2を作っていたのである.
 だがその後,みんなが豊かになって,新品の部品を買って見栄えの良い作品を製作する時代がやってきた.かく言う私はその時代に育った.こうして秋葉原の「戦後」が終わったのだったが,国際ラジオは頑として営業を続けた.平日の売上なんか,はほとんどなかったのではないかと思う.若かった私が,たまに休日に店を覗くと,かなり高齢の男性が,私には用途が想像できない金属製の箱,その箱からは線材が何本か飛び出していたが,それを手に取ってしみじみと眺めていたりした.それはもしかすると,通信兵だったその人が満州の戦場で死守した通信機の部品だったかも知れない.
 それからまた時代が過ぎていき,戦前戦中生まれの世代がすべて逝ったあと,とうとう国際ラジオは店を閉めた.私が最後に訪れたのは,その隣にある「春日無線」に,真空管オーディオアンプの電源トランスを特注しに行ったときだったから,国際ラジオ閉店の一年くらい前だった.客は一人もいなかったが,時代遅れのラジオ爺である私は,少年柴田翔もこの場所に立ったことがあるかも知れぬと,少しばかり感傷的になったことを覚えている.
 書き出しからして話が横に逸れた.春日無線には,ラジオの電源に使うチョークコイルを買うためであった.
 
 チョークコイルのことの前にまた話が横に逸れる.
 少し前にヤフオクに手を染めてから,ずっと骨董品のラジオやその部品の出品をウォッチしているのだが,非常に活発に取引が行われているので少々驚いている.これはきっと,仕事から引退した団塊爺さん婆さんたちが売ったり買ったりしているのに違いない.婆さん,と聞いて不審に思う向きがあるかも知れないが,私がラジオ部品を買った相手の一人は女性だった.このジャンルの趣味には女性もいるようなのだ.
 で,ヤフオクで取引されている骨董品のラジオは何に使うかというと,全くのジャンクは分解していわゆる「部品取り」をする.まだ使える部品を取り出して自分で使うのが普通だが,希少品の「お宝」であれば再びオークションに出す目利きの人もいる.この手の転売もヤフオクではよく見かける.
 骨董品ラジオのもう一つの用途は,修繕して再び放送が聴取できるようにすることだ.あまり知られていないが,老人の趣味として確立しているように思う.団塊世代を対象にした書籍も何冊か出版されている.(『定年前から始める 男の自由時間 真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!』,技術評論社;『真空管式スーパーラジオ徹底ガイド』,誠文堂新光社など)
 この趣味の世界で有名人が何人かいるが,『真空管式スーパーラジオ徹底ガイド』の著者である内尾悟氏はその一人だ.氏の個人サイト《ラジオ工房》も有名.
 内尾氏とは別のタイプの有名人に原恒夫氏がいる.この人はNPO法人「ラジオ少年」の代表で,一般社団法人日本アマチュア無線連盟 (JARL) の副会長でもある.「ラジオ少年」の公式サイトには同法人の事業理念が謳われ,真空管式ラジオの組み立てキットや測定器の頒布事業を行っているのだが,理念と事業実態との乖離を指摘する声がある.内田悟氏である.(三に続く)

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