« 復興五輪の欺瞞 (一) | トップページ | 復興五輪の欺瞞 (三) »

2019年3月 9日 (土)

復興五輪の欺瞞 (二)

 メルトダウンした燃料を冷却するために注入した水の量よりも高濃度汚染水が増えてしまっている理由は地下水の流入であるとして,東電が華々しく打ち上げたのが,凍土壁である.陸側から海に向けて流れている地下水を食い止める地中凍土壁を,原発敷地の海側に作り,これで汚染水発生量を大きく減らせるという計画であった.
 この計画に対して原子力規制委員会の検討会は懐疑的だった.そして実際にやってみると,完全に土を凍結することができず,凍結しなかった箇所に水ガラスやコンクリートで補強する追加工事を施し,さらに陸側にも凍土壁が必要となった.
 その追加工事の結果だが,汚染水発生量は26%減少したという.それだけ減ったのに,まだ処理設備は,高濃度汚染水を,環境に放出できる程度の低濃度汚染水に浄化する作業に,取り掛かれていない.依然として状況の先行きは暗いのである.
 そこへもってきて,汚染土の処理が進まぬことが次第にはっきりしてきた.
 産経デジタルに掲載された《福島の除染土壌処理、難航 「約束が違う」住民反発 2019/03/07 22:25 》によれば,
 
東京電力福島第1原発事故に伴い福島県内の除染で出た土壌処理をめぐり、国の計画が難航している。環境省は中間貯蔵開始後「30年以内の県外最終処分の方針」を示しているが、見通しは立たず、前段階の除去土壌再生利用事業も一部が住民の反対にさらされている。南相馬市の常磐自動車道の盛り土に除去土壌を使う計画も7日夜の説明会も全員が反対、対応に苦慮している。
 平成23年の原発事故後、除染で発生する福島県内の除去土壌は約1400万立方メートルとされ、中間貯蔵開始から30年以内の県外最終処分に向け「国が必要な策を講じる」と法で定めたものの、処分方法や用地は決まっていない。
 環境省は28年、「使用できる土は最大限使い最終処分量を減らす」と県内での再生利用に向け実証事業に乗り出し、8千ベクレル以下の土壌は農地や道路整備に使うとの方針を示した。

 
 つまり政府は,当初の県民への約束「県外最終処分」を覆し,福島県内で処理することにしたのである.県民の怒りは尤もである.
 政府は,道路工事に汚染土を使用することは問題ないと実証されたとし,さらに今後は農地への使用を進める計画だ.今年の五月には実証実験の作付けに入るという.
 この実験は帰宅困難区域で行うが,それで「問題なし」と結論 (おそらくそうなるだろうと私は思う) したあとは,住民がいる区域 (候補地は二本松市と南相馬市) に展開するはずだ.
 この政府のやり方については,誰もが沖縄を想起するだろう.政府は,沖縄の米軍基地を本土には決して移転させない.軍事的な可能性は私にはわからないが,政治的には,受け入れを受諾する自治体がないからである.
 これと同じだ.すなわち福島の汚染土は県外に持ち出さない.政治的には,汚染度を受け入れる自治体がないからである.仮に見識と勇気ある自治体首長がいたとして,彼が汚染土の受け入れを表明したら,住民からリコールされるだろう.
 私たち日本国民は,自分の身に直接関係ない限りにおいて,他人の不幸に同情するにやぶさかでない.口では福島県の不幸に同情しても,実際に福島県産の農水産物を敢えて買い求める国民は少数派だった.それどころか,福島産の桃を購入した糸井重里氏は,誹謗中傷に晒された
 悲しいかなこれが大震災のあと,私たちが知った日本国民の民度である.汚染土を福島県外で処分すれば,南青山児童相談所騒動の時より,もっと激しく広範な反対運動が起きるに違いない.地価が下がるからである.
 ならば,新しい紛争を起こすよりは,福島県民に泣いてもらおうではないかというのが,政府の最初からの意図であったと考えられる.私はそう予想していたが,事態はその通りに進行している.
 福島県民を説得して,この問題を軟着陸させたいと考える良識ある政治家は与党にもいるだろうが,事は切羽詰まっている.納期が迫っている.
 納期とは何か.東京オリンピック2020 だ.

|

« 復興五輪の欺瞞 (一) | トップページ | 復興五輪の欺瞞 (三) »

新・雑事雑感」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 復興五輪の欺瞞 (二):

« 復興五輪の欺瞞 (一) | トップページ | 復興五輪の欺瞞 (三) »