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2019年3月 8日 (金)

復興五輪の欺瞞 (一)

 福島第一原発の汚染水に関する情報は,テレビはもちろんだが,日頃から注意していないと新聞 (テレビよりも記録性があって,過去に遡って検索できる) でも一般の目に触れない状態になっている.人々の関心が高い記事は有料記事にされてしまうからである.
 それなら東電と政府サイトを常に閲覧すればいいかというと,一般国民には内容的に難しいこともあって,いささか敷居が高い.それをわかりやすく新聞報道して欲しいと思うのだが,公共性が高いのに,新聞社にその気はないらしい.それでも時折掲載される無料記事を探して読めば,何とか現状を知ることはできる.
 例えば,朝日新聞デジタルに昨年末掲載された《福島第一の低濃度汚染水、近く100万トンに 処分難航 2018年12月22日07時37分 》を読むと,現状,原発汚染水の処理はほぼ絶望的な状況にあることがわかる.この記事から一部を引用する.

廃炉作業が続く東京電力福島第一原発で、トリチウムなどを含む低濃度汚染水が年明けにも100万トンに達する。東電は21日、朝日新聞記者に水処理施設を公開した。政府は処分法の検討を進めるが、処理済み汚染水の8割超が基準値を超す放射性物質を含んでいた問題が発覚し、作業は難航している。

 汚染水とは何かというと,福島第一原発はメルトダウンした燃料に常時注水して冷却をしている状態なのだが、その冷却水は核燃料と接触しているのでそこから放射性物質が溶け出して放射能汚染水となっている.
 この汚染水は,最初にセシウムとストロンチウムを「サリー (東芝などが開発)」および「キュリオン (米キュリオン社が開発)」で分離したのち,淡水化装置で塩分を分離する.その処理水の一部は再度原子炉冷却に使用し,残りは多核種除去設備 ALPS (東芝が開発) で処理し,トリチウム以外の核種を分離する.ALPS で処理された水はタンクに貯蔵される.
 ところが,現状では汚染水の発生量が ALPS の処理能力を上回っている.逆に言うと,必要な処理能力以下の設備を作ってしまったのだ.
 そこで,本来は「環境へ放出する際の基準 (原発敷地と外界との境界における放射線量)」を満たした低濃度汚染水にしてタンク貯蔵するのが目標であり,国民はそう理解していたのだが,政府と東電は,ALPS の能力以上の負荷 (処理量) をかけ,とりあえず目標基準を上回る線量の中間段階の処理水 (いわゆる仕掛かり品だ) にして,タンクに貯蔵することにした.このことは,隠蔽というほどの度胸はなかったが大っぴらには広報していなかったので,新聞に「低濃度汚染水の8割が基準値を越えていることが発覚した」と書かれてしまった.そこで政府は《福島の“汚染水”対策①「ALPS処理水」とは何?「基準を超えている」のは本当? 》と題して弁解に努めているわけだ.

 それはともかく,「とりあえずの処理」を続けても,そもそも現状の ALPS は能力不足だから,日々刻々,仕掛かり品が増え続けているのである.この状況を脱するには,汚染水処理設備の大増設しかないのであるが,それをしない理由を政府は国民には明らかにしていない.
 だが翻って基本的なことをおさらいしてみよう.汚染水処理設備は,高濃度汚染水を処理して,大量の低濃度汚染水と,濃縮された少量の超高濃度汚染水に分離する設備である.仮に処理設備 を増設した場合,この超高濃度汚染水はどうするかというと,実はどうしようもない.廃炉 (まだ現実的な廃炉計画はない) までタンクに貯留する仕組みである.
 ところが,現状の福島第一原発には地下水が流入しているから,超高濃度汚染水を分離濃縮するどころか,高濃度汚染水を仕掛かり品にする処理すらできていないのである.このままでは,いずれ仕掛かり品の置き場がなくなるだろう.

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