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2019年3月 7日 (木)

鶏の事情 (補遺)

 先月の記事《鶏の事情 》は人名を取り違えるミスがあって,修正の上で《鶏の事情 (3/6 に訂正) 》に改題した.
 NHK『チコちゃんに叱られる!』で「鶏はなぜ首を前後に振って歩くのか?」を解説したのは,東大名誉教授の樋口広芳先生であった.樋口先生は著書多数であるが,鶏やハトの首振り歩行について直接書かれた本はないようなので,藤田祐樹『ハトはなぜ首を振って歩くのか』(岩波科学ライブラリー) を読んでみた.
 結局のところ『ハトはなぜ首を振って歩くのか』には結論は示されておらず,諸説の紹介に止まっていた.定説はないということらしい.

 おさらいの意味で,もう一度書くと,鶏やハトは首を振りながら歩いているのではない.スローモーション撮影した動画を観ると,まず首を前方に伸ばし,それから頭の位置を変えずに胴体と足が前進して頭に追いつく.この時当然,首は屈する.この首の伸屈動作が連続して行われると,「頭を振っている」ように見えるのである.
 で,その諸説だが,イギリスのフリードマンという研究者が実験に基づいて示した「首振り=視覚刺激説」が主要な説として一般に知られている.
 これはハトの体を固定して,ハトに見える景色を後方へ移動する (フリードマンはそういう実験道具を作った) と,ハトが首を振ることが根拠となっている.
 しかし,誰が考えても変だと思うに違いないが,動画に撮影された事実は「ハトが首を振った (実は上述の動作をした) 結果,景色は後ろに移動した」のであり,それとフリードマンの実験結果「景色が後ろに動いた結果,ハトは首を振った (同前)」とでは,時系列的順序が逆だ.原因と結果が正反対に入れ替わっている.
 すなわちこの実験結果の真っ当な解釈は,「景色が後ろに動いた結果,ハトは首を振った」ではなく,「景色を後ろに動かすと,条件反射でハトは首を振ってしまった」だ.こんなことは高校生でも簡単にツッ込める.w
 
 藤田氏 (沖縄県立博物館・美術館 人類学担当学芸員) は,フリードマンの実験について《… 1975年のこと、イギリスのフリードマンは、この疑問に答える鮮やかな実験を行った。》と書いているが,フリードマンの杜撰な実験と考察に感心している藤田氏には,おいおい,そんなことで本業の人類学は大丈夫か,と言いたい.
 
『ハトはなぜ首を振って歩くのか』に書かれているその他の諸説も,仮説に過ぎない.例えば,鶏やハトは歩行する時に首を振ることでバランスを取っている,とする説があるが,それでは首を振らずに歩く鳥は,なぜバランスを取らなくても歩けるのか,ということに答えていない以上,仮説以前の,ただのお話である.

 結局「鶏やハトは歩行する時になぜ首を振るのか?」は全く解明されていないのである.

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