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2019年3月15日 (金)

昭和天皇実録

 今月,公刊本「昭和天皇実録」(東京書籍;平成二十七年から一般書店で販売が開始された) の最終刊 (第十九巻) が出版される.宮内庁はこれに先立ち,公刊本の基になった「奉呈本」(天皇と皇后に献上されたもの) に,約五千ヶ所の誤りがあったと発表した.誤りは,人名や時刻の間違いの他に,誤字脱字もあった.そのほとんどは公刊本では訂正されているというが,まだ残っているらしい.宮内庁は,正誤表で対応するとしている.

 史料に存在する誤りを後世の史家が校訂するということに別段の問題はない.史料に書かれていることがすべて事実だとは限らないから,校訂は必要なことである.しかし今回の件は,出版物の誤りの訂正であって校訂ではない.宮内庁の歴代「昭和天皇実録」担当編集者の仕事が杜撰だったということである.すなわち杜撰も杜撰,五千ヶ所はいくらなんでも多過ぎはしないか.一巻あたり二百から三百ヶ所の間違いがあったということで,こんなデタラメなものを天皇と皇后に,よくぞまあ献上したものだと呆れる.

 誤字脱字は読者にすぐわかるから大した問題ではないが,人名や記載された時刻が事実と異なるというのは重大である.歴史の捏造に近い.
 この間違いだらけの奉呈本に基づいて書かれた雑誌記事や研究論文があるわけだ.雑誌記事はともかく,学術論文は無価値になったのであるから,宮内庁の杜撰な出版作業で被害を被った論文名についても,謝罪して正誤表に掲載すべきである.
 実はこの公刊本,十九巻あるにしてはさして高価ではなく,出版完結したら私も買って読みたいと思っていたのだが,出版されるたびに逐次購入せずにいてよかった.
 
 ちなみに,奉呈本が編集完了したときに,宮内庁はデジタルデータを半藤一利,保坂正康,磯田道史の三氏に渡し,試読を依頼した.三人のうち半藤一利はこの特別待遇に舞い上がり,それまでのリベラルの仮面をかなぐり捨てて,以後,昭和天皇の臣下を自称して「臣一利」と名乗るようになった.「歴史探偵・半藤一利」は,五千ヶ所も間違いがある歴史書に感激したのである.
 しかし識者によると「昭和天皇実録」には,これまでに知られていた事実以上のものは (おそらく「敢えて」) 記されておらず,史料的価値はあまりないのだという.だとすると,買わなくてもいいかなあと今は迷っている.

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