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2019年3月11日 (月)

グルテンフリー

 食物アレルギー現象は複雑 (厚労省サイトのコンテンツ《食物アレルギー 》) で,発症時の年齢によって小児型と成人型に分類されるなど,発症メカニズムの生化学的理解は簡単ではない.
 生化学的理解は難解だが,現象的には鶏卵,牛乳,小麦,大豆,米が五大食物アレルゲンとされている.
 このうち,小麦と米は主食的な食材であるため,そのアレルギーがある場合は食生活に大きな影響がある.
 日本人で小麦アレルギーを有する人がどれ位いるかという大雑把な数字はないように思われるが,種々の資料から推測すると,全人口の 1% 以下ではなかろうか.
 米アレルギーはそれより少ないと推定されるが,低アレルゲンの米が機能性食品の第一号 (1993年に東大農学部の荒井綜一先生らが開発した) であったことは,あまり知られていない.この研究成果は資生堂から市販されたが,やはり市場性が余りにも低かった (すなわち高価にならざるを得ない) ためだろう,現在は販売終了している.
 小麦アレルギーに話を戻す.小麦は私たち日本人でもそうだが,欧米人の食生活では特に小麦に対する依存度が高いので,小麦アレルギー対応食品の市場は日本よりずっと活性化している.(《小麦大国のグルテンフリー食品 》)
 グルテンフリーとは,グルテンフリー・ダイエットのことで,本来の意味は「グルテン除去食」であり,小麦アレルギー対応食品であったのだが,米国のいわゆるセレブ層が近年「グルテンフリーは健康にいい」として大きな流行になりつつある.日本では最近,メディアが流す情報の中に「痩せる」という意味で「グルテンフリー」という言葉が散見されるようになった.
 単に「グルテンフリーは健康にいい」というと,フード・ファディズムとかオカルト栄養学 (筆者の造語 w) のようであるが,Wikipedia【グルテンフリー・ダイエット】は次のように述べている.
 
結局グルテンが含まれる食品を除去することであり、米などの他の炭水化物に置き換えない限り、炭水化物の摂取量を減らすことになる。
 
 婉曲な記述だが,つまり,痩せるという目的でのグルテンフリー・ダイエットは,小麦の忌避に意味があるのではなく,結果的に糖質制限食なのだと言っていて,おそらくそれは正しい.
 上に挙げた《小麦大国のグルテンフリー食品 》には次のように書かれている.
 
小麦アレルギー・セリアック病・グルテンに敏感な人々はグルテンフリー商品を切実に必要とするが、マジョリティの消費者ではない。グルテンフリー商品を消費する真のマジョリティは、小麦を摂取しても何の問題もない人々であり、その理由は単なるダイエットである。数年前に、グルテンフリーダイエットを提唱する『Wheat Belly』という本がベストセラーになってから、多くのセレブがこのダイエット方法を真似するようになった。そのダイエット効果について疑問視する声も多いが、健康ブームとして、大勢の人々がグルテンフリーダイエットを行うようになったのは事実である。現在の市場規模は一〇億ドルであるが、二〇一九年には現在の倍以上に成長するとみられている。
 
 テレビの報道によれば,最近の米国におけるグルテンフリー食品展示会では米が注目されているそうだ.ただ,それは小麦アレルギー対応食品としての意味であって,小麦の代わりに米を摂っていたのでは,「痩せる」意味でのダイエットにはならない.従って米を原材料に用いる加工食品は,「痩せる」グルテンフリー食品のメインストリームにはならない.
 いずれ日本でも「痩せる」グルテンフリー・ダイエットがよく知られるようになるとは思うが,この点を誤解すると失望する人が出てくるだろうと予想される.

 話は別のことになるが,糖質制限向けの即席麺は種類が少ない上に,どういうわけか味が濃い.そして含有食塩量も多い.これでは高齢者の食事に常用するのは無理である.ところが米粉を使った麺料理にいいものを見つけた.かなり気に入ったので紹介する.エースコックの「鶏だしフォー」だ.古参の即席麺メーカーとしては,若い人たちは,NHKの朝ドラが安藤百福をモデルにしたこともあって,日清食品が一番有名だろうが,実はエースコックも昔から即席麺業界では大健闘している.特にベトナムでは,即席フォーのトップメーカーなのである.
 
 栄養成分と原材料を以下に示す.出典はエースコックの公式サイトである.
 
[標準栄養成分表1食(48g)当たり]
エネルギー 168kcal
たん白質  3.6g
脂質    1.6g
炭水化物  34.8g
食塩相当量 3.7g (米めん・かやく/スープ;0.9g/2.8g)
 
[原材料名]
米めん(ベトナム製造(米,でん粉,食塩)),スープ(食塩,香味油,植物油脂,香辛料,動物油脂,砂糖,でん粉,香味調味料,ねぎ,ネギエキス,酵母エキス,チキンパウダー)/加工でん粉,調味料(アミノ酸等),乳化剤,増粘剤(グァーガム),酸味料,甘味料(スクラロース,アセスルファムK),香料,酸化防止剤(ビタミンE),(一部に卵・大豆・鶏肉・豚肉を含む)
 
 以上の表示事項のうち,《調味料(アミノ酸等) 》は,商品の特性からして,日持ち向上剤であるグリシン製剤ではなく,グルタミン酸製剤だと思われる.ただし,全体的にもう少し食品添加物を減らせないものかという点が残念ではある.
 で,それはそれとして,何はともあれ食品は味である.アマゾンで十個入りを買い求めて食べてみた.このフォーだけでは一食の食事とするには侘しいので,トッピングを何か追加しなければいけない.ハム,鶏唐揚げ,肉団子などが候補だが,今回は冷蔵庫にあった残り物の,スーパー惣菜の小振りな海老天 (\150) を載せてみた.麺のおよその量はこれでわかるだろうと思うが,少な目である.
 
20190310a
 
 エースコックのフォー自体の熱量が低いので,天ぷらをトッピングしてもエネルギーは大したことは無い.これでもいいが,もう少しきちんとした一食にするなら,天ぷらは止めて,フォーにサラダチキンと山盛りの野菜サラダを付ければ,高齢者の「緩やかな糖質制限」の一食として,なかなかいいものになると思われる.
 肝心のスープのお味だが,ヒガシマルの「うどんスープ」をエスニックにした感じで,袋麺の中で出色の出来だと思う.いや,ヒガシマルのスープが関西風と言いながら「とんがった」味なのに比較すると,もっとおいしいと言っていいかも知れない.さすがはベトナム一の即席麺メーカーであるエースコックだ.よくフォーの雰囲気を醸している.ただし,スープを飲み干すと,高齢者には塩分摂りすぎなので,四分の三は残すようにしたい.
 食べてみて思ったのだが,エースコックには,カンボジアに工場を建てて,米麺「クイティウ」の即席袋麺も作って欲しい.目指すマーケットは米国のグルテンフリー食品市場だ.きっとカンボジアのためになるだろう.
 先日 (3/5) 放送されたテレビ東京『ガイアの夜明け』に,かつて村上ファンドで名を馳せた村上世彰氏が登場した.氏は現在,シンガポールを拠点として東南アジアの不動産開発をしているが,カンボジアにも不動産投資しているという.だが,氏の方法,つまり不動産事業では,結局のところ華僑を利するだけになるのではないか,カンボジア人が嫌う中国にカンボジアを占領させるだけではないかと私は思う.貧しい国に必要なのは,実業,モノづくりだ.

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