近江の旅 (六)
[金勝寺]
私たちのバスは盛安寺を後にして,途中で観光客向けのレストランで昼食を摂り,金勝寺へ向かった.金勝寺は滋賀県栗東市にある天台宗の寺院.山号は金勝山で本尊は釈迦如来,開基は良弁と伝える古刹である.この寺は山中に在り,観光バスでは行けないので山麓で数人ずつタクシーに分乗して山道を上がった.運転手さんに訊ねたら,観光シーズン真っ盛りには,かなりの観光客がこのお寺に来るそうだ.
タクシー乗降場からすぐのところに参道入口があり,そこからゆるやかな道が山門まで続いている.境内に入ると,参詣順路をはずれたところは滑り落ちそうな急坂が多い.我がツアーメンバーの数人の婦人が,勝手に順路から逸れてコンダクタさんを困らせた.怪我でもされた日にはツアーの行動予定がぶち壊しになるので,コンダクタさんは必死に彼女らを制止するのだが,全然意に介する素振りも見せぬのがおそろしい.w
上の写真は虚空蔵堂 (虚空蔵菩薩像,毘沙門天像,地蔵菩薩像を安置;古い建築とは思われない) だが,この他に本堂 (本尊釈迦如来像を安置),二月堂 (軍荼利明王像を安置) などが建てられている.仏像はどれも平安時代の作と伝えられる.境内は樹林だが,自然林ではなく丁寧に間引きされ,その他の灌木や排水溝もよく整備されていて明るい印象を与える.これなら観光客には人気があるだろうと思われた.
[櫟野寺]
金勝寺から再びバスで移動.
櫟野寺は滋賀県甲賀市甲賀町櫟野にある天台宗の寺院.山号は福生山.
櫟は「いちい」と読み,元々は「一位」と書いた.樹木のなかで最高位にある,との意味で,正一位に同じ.今は榊が神棚に供えられるが,古くは一位が神事に用いられたのでその名がある.後代に到り,一位に櫟の字が充てられた来歴はわからない.
櫟野寺の縁起は,弘法大師がこの地を訪れ,生えていた櫟の生木に観音菩薩像を下彫りしたとの伝説に基づく.それが本尊十一面観音菩薩坐像であるが,例によって秘仏であり,かつては三十三年に一度しか開帳されなかった.その三十三年目の開帳が十月六日から十二月九日に行われるということで,今回の近江の仏像巡りツアーの目玉が,この観音菩薩像だったのである.
ではあるが,向源寺の十一面観音立像の圧倒的な存在感を眼前にした私には,櫟野寺の観音座像は,ただ大きいだけの木造彫刻としか思われなかった,というのが率直なところである.
檀家の皆さんが売店を出していた.売店の前でうつらうつらしている猫は寺の飼い猫だろうか.仏道に帰依したとみえて静かな佇まいであった.
さてこれでツアーは全行程を終え,秋の陽は既に傾いた.ツアーメンバーはバスに戻り,帰路に着いたのだが,夕食はツアーに含まれていないので,私は途中の観光施設で弁当を購入した.その弁当のことは《丹後の ぼろ寿 もとい ばら寿司 》に書いた.
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