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2019年1月16日 (水)

明治の自転車

 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』を見ることにした.予告の番宣を見ていたら,テレビでも映画でも絶滅したかと思われた喫煙シーンがやたらと出ているのに興味を引かれたのである.私は非喫煙者だが (禁煙したと言うべきだが),かつての日本人 (の男) は成人したら喫煙するものだという暗黙の了解があり,会社の会議室なんぞは煙でもうもうとしていたものなのである.

 しかし今は,テレビドラマや映画で喫煙シーンを映そうものならたちまちクレームが来るらしい.
 それでリアリティのない映像がまかり通るようになったという話を聞いたことがある.しかし今度の大河ドラマは,敢えて後半の主人公を喫煙者という設定にしているようなので,もしかしたら時代考証をきちんとするのかも知れないと期待したからである.
 
20190116a
 
 上の画像は,後に金栗四三の妻となる春野スヤ (綾瀬はるか) が颯爽と登場する場面である.時代は明治四十二年.
 彼女の自転車はロッド式リムブレーキ (左側の↓) を装備し,前輪に泥除け (右側の↓) が付いている.ハンドルは,いわゆるママチャリが登場する前に,昭和三十年代以前の普及型自転車によくあったタイプである.
 テレビ画像を見る限り,このハンドルバーとハンドルステムはクロムメッキの光沢を示している.しかしクロムメッキ技術は1920年 (大正九年) に米国で発明され,我が国では大正十五年に初めて行われたのである.おそらくドラマの中で使われた自転車は昭和の製品だろう.明治の自転車を持ってこいというのは酷であるが,それならばハンドルバー周りの部品やフレームを塗装してしまうべきであった.
 
20190116b
(国立国会図書館デジタルコレクション『新版引札見本帖第一』;著作権保護期間満了の資料)
 
 上の資料画像は明治時代の女学生を描いたもの (明治三十六年の作) であるが,この自転車は,どういうわけかブレーキを装備していない.前輪泥除けがない自転車の写真はネット上にも掲載されているが…
 フレームなどのパーツがメッキでなく塗装であるのは無理がない.
 自転車が発明された初期は,こういうブレーキなしの自転車が実在したようだが,明治後半にも存在したのであろうか.あるいは絵師の手抜きなのだろうか.

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