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2019年1月27日 (日)

記念艦三笠でカレーを (補遺)

 昭和三年の五月,戦艦長門の昼食にカレーが出されたという嘘がまかり通っている.

 私は《記念艦三笠でカレーを (海軍カレー編 24) 》の中で,藤田昌雄『写真で見る 海軍糧食史』のp.113に掲載されている表《戦艦長門週間兵食献立 昭和3年5月の例 》は,捏造された資料に基づくものであると断定した.理由は,その表では同年五月二十七日の海軍記念日の戦艦長門における祝宴で,祝賀献立ではなく通常の食事が供されたことになっているからである.そのようなことは断じてあり得ない.
 そしてこの表では,五月二十四日の昼食として次のように記されている.

カレー 生牛肉・馬鈴薯・大根・甘藷・玉葱・カレー粉

 この引用箇所において,「カレー」は料理名で,生牛肉以下は食材名である.
 表《戦艦長門週間兵食献立 昭和3年5月の例 》自体が嘘であるから,その表中に書かれている「五月二十四日の昼食がカレーであった」というのも嘘である.しかし,このわずか一行の記述から,真っ赤な嘘の大風呂敷を広げた男がいる.青山智樹という男である.アマゾンに載っているプロフィル (抜粋) は以下の通り.
 
東京都武蔵野市生まれ。学生の頃より同人誌「宇宙塵」に参加。東海大学理学部物理学科卒業後、高等学校に理科教師として勤務。一九九二年長編SF「赤き戦火の惑星」で商業デビュー。
 
 青山は,『自分で作る うまい! 海軍めし』(株式会社経済界,2010年) という著書の中で,表《戦艦長門週間兵食献立 昭和3年5月の例 》中の《カレー 生牛肉・馬鈴薯・大根・甘藷・玉葱・カレー粉 》を基にしてビーフカレーライスのレシピを創作し,その創作料理を「戦艦長門の昭和3年5月24日のめしを再現した」としている.
 そして,この「再現メニュー」をブロガーたちが出典を隠して無断転用し,その結果,長門でカレーが食べられていたことになってしまっている.
 この『自分で作る うまい! 海軍めし』が流通している限り,「戦艦長門のカレー」という嘘は拡散し続けるだろう.青山智樹が作家であるなら,フィクションは小説だけにして欲しいものだ.
 
 高森直史という元自衛官のデマゴーグがいる.この男は,東郷平八郎が舞鶴鎮守府で肉ジャガを考案したという嘘話をデッチ上げ,舞鶴の町おこしを立ち上げた者たちの一人である.
 その高森が昨年,『海軍カレー伝説』(潮書房光人新社,2018年) を出した.「肉ジャガは海軍が発祥」の嘘はよく知られているところであるが,自分のついた嘘がばれていることを知らないらしく,図々しくもまたその虚説を本書中で繰り返し,逆に「カレーは海軍が発祥」は根拠がないと否定している.嘘吐きである上に裏切者だという呆れた男である.この男の『海軍カレー伝説』は,またまた「肉ジャガは海軍が発祥」というデマを拡散するだろう.困ったことである.
 
(連載終了)

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