明治のクチャラー
芸能情報記事《「いだてん」低迷は想定内 NHK大河脚本にクドカン起用の狙い 》(日刊ゲンダイDIGITAL,2019年01月17日 09時26分) に,自称コラムニストの桧山珠美の発言が取り上げられていた.
《ストーリーのテンポの速さや情報量の多さに、高齢者がついていけず嫌気を差し、視聴率はひと桁にまで下がる可能性もあります。もっとも、低視聴率の方がいろいろと新しい試みができるので好都合かもしれません。紅白の目玉のように、少しずつサプライズを発表し、若い人向けに話題を広げていくと思います 》
これは大河ドラマ「いだてん」の視聴率が第二回放送で既に,歴代ワーストに迫る状態であることを指しての発言である.
《ストーリーのテンポの速さや情報量の多さに、高齢者がついていけず嫌気を差し、視聴率はひと桁にまで下がる可能性もあります 》とは,また随分とふざけた書きぶりである.年寄りをバカにするなと言いたい.
そもそも《嫌気を差し 》は中学生レベルの誤用で,「嫌気がさす」が正しい.こんな日本語も知らぬ三流ライターが何を偉そうに言っておるか.この愚か者めが.
高齢者が「いだてん」に興味を失ったとすれば (桧山がそう言う根拠は知らないが),クドカンの脚本に異議があるからだろう.第二回放送まで観たところでは,ストーリーはモタモタしているし,画面から読み取れる情報量が少なすぎるからである.例えば,綾瀬はるかさんが女学生役で出演したのだが,その学校の制服のデザインがとてもかわっていた.この制服のことだけで五分や十分の時代考証的な説明が必要だと思われたが,何の説明もなかった.もっと情報密度を高くしてくれ.
さてクドカンの脚本の最大の問題点は,明治の中頃から東京オリンピックに到るドラマの狂言回しに古今亭志ん生 (ビートたけし) を持ってきたことだ.
ビートたけしは志ん生の噺を寄席で聴いたことがあるだろうが,今の高齢者のほとんどは志ん生の肉声の噺は知らない.なぜかというと,地方生まれ地方育ちの私たち高齢者が子供の頃には,志ん生の芸は既に衰えていて,ラジオの音量を上げても志ん生が何を言ってんのか,皆目聞き取れなかったからである.w
その点で八代目文楽や六代目圓生,三代目金馬,八代目可楽らはすごかった.私たちの世代が落語のおもしろさを知ったのは彼ら昭和の名人たちのおかげである.
それに志ん生は東京オリンピック開催の三年前に脳出血で倒れ,半身不随となっていた.だから「いだてん」の終わり頃には,たけしはドラマ中の語り部であるにもかかわらず半身不随で登場してナレーションをすることになる.どんなドラマだよ.
それはさておき,第二回の放送で,生理的な不快感を覚えた視聴者が多かったのではないか.
志ん生の若い頃を演じる森山未來という俳優が,寄席の中で食い物を頬張ってクチャクチャと咀嚼するシーンがあったのである.どう見てもあれは演出ではなく,森山未來自身がいわゆるクチャラーなのだろう.これを見て,親から飯の食い方を躾けられた高齢世代は「嫌気がさした」はずである.w
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